左から)原野守弘氏(クリエイティブディレクター|株式会社 もり)|関和亮氏(ディレクター|OOO)|西田淳氏(コンテンツプランナー|株式会社 ドリル)
OK Go「I Won’t Let You Down」
cd: Morihiro Harano|ad: Jun Nishida|dir: Kazuaki Seki and Damian Kulash, Jr.|cho: furitsukekagyou air:man|c: Makoto Okuguchi|l: Akiyoshi Irio|grip: Takashi Taniguchi|dit: Taito Oyama|multi-copter pilot: Kenji Yasuda|sty: Kazuki Yunoki|hm: Asuka Fujio|sound operator: Isao Yoshida|location coordinator: Kyohei Kitamura|online ed: Shunsuke Kakuuchi, Takashi Tanaka|colorist: Shigeyuki Toriumi|translator: Aiko Ishikawa, Ryuzo Tsutsui, Sumire Matsumura
cd: Morihiro Harano|ad: Jun Nishida|dir: Kazuaki Seki and Damian Kulash, Jr.|cho: furitsukekagyou air:man|c: Makoto Okuguchi|l: Akiyoshi Irio|grip: Takashi Taniguchi|dit: Taito Oyama|multi-copter pilot: Kenji Yasuda|sty: Kazuki Yunoki|hm: Asuka Fujio|sound operator: Isao Yoshida|location coordinator: Kyohei Kitamura|online ed: Shunsuke Kakuuchi, Takashi Tanaka|colorist: Shigeyuki Toriumi|translator: Aiko Ishikawa, Ryuzo Tsutsui, Sumire Matsumura
――OK Goは協賛企業をコラボレーターと呼び、MVを制作するスタイルですが、そのコラボレーターをコミットするところも含めての取り組みだったのでしょうか?
原野:そうです。3社に提案しました。「最後の最後でダメでした」ってよくある話だし、OK GoのMVを作れるという、このチャンスを逃したくなかったですからね。
――ということは、OK Goからは制作費が出ないということなのですか?
原野:そういうことです。今回は普通にやるとものすごい予算規模になるので、スタッフの方には限りなく無償に近い額でやっていただいています。OK Goを印籠のように振りかざして(笑)。
■UNI-CUB βにPerfumeのカメオ出演! アイデアがカタチになるまで。
UNI-CUB: Kazuyuki Iwata, Hirokazu Hara, Shinichiro Kobashi, Makoto Hasegawa|mass games de/previsualization: Daisuke Sasaki, David Robert, Munechika Inudo, Yoshifumi Sadahara, Gilles Brossard|assistant-dir: Hideaki Jinbo|prod manager: Satoshi Miyata|a pr: Shiro Miyamoto, Naoyuki Masuda, Misato Tachibana|pr: Mitsuru Yamamori|cast: OK Go|cameo: Perfume|sp thx: the school girl dancers and Honda|ca: Mori Inc.
原野:Hondaは仕事でこれまでも携わっていて、UNI-CUB βもずっと前から知っていました。だから、OK Goからオファーをもらった時すぐに、「HondaのUNI-CUBっていうのが面白いよ」と、ダミアンに提案しました。彼らってレスポンスがすごく速くて、10分後には、50年代にイタリアで作られた、白バイを使ったマスゲームの映像が送られてきて、「こういう感じでどう? 」と。ですから、UNI-CUB βでマスゲームという基本形は割とすぐに決まったんですね。まあ、そこから先は、大変そうだなって(笑)、関さんに相談しました。
関和亮(以下、関):実際、大変でしたね(笑)。OK Go、UNI-CUB β、マスゲームっていう企画を聞いた時点で、これは面白そうだなあって。UNI-CUB βに乗っている姿も可愛いですし。さあ、それを、一曲分飽きずに楽しんでもらうためにどうしようかと考えていきました。
西田淳(以下、西田):しかもワンカットでね。
関:そう、OK Goからのお題が、“ワンカット”でしたね。
原野:彼らがMVで設定しているバーってすごい高いでしょ。いつもダミアンが監督をしているのですが、今回は日本で制作ということもあり、僕らにある程度任せなくちゃならないじゃないですか。だから余計そうなのかもしれませんが、高い設定値を、ずっと言い続けていました。 一方、HondaにとってUNI-CUB βという乗り物は、歩道でも人と共存できるというコンセプトがあるんですね。だから、UNI-CUB βに乗っていないダンサーとの共存する姿は伝えたいとは言われていました。
――ハイクオリティなMVを作ってきたOK Goの新作ということで、どういう心境でしたか?
原野:嬉しい反面、これまでのMVがものすごく好きだから、一番ビリだったら嫌だな~って気持ちは正直あったよね(笑)。
関:みんな、口には出さないですけどね。言ったらもう変な汗かきそうだし(笑)。
原野:直前の「The Writing’s On the Wall」もすっごく良かったしね。
西田:「The Writing's On the Wall」をリリースした頃、「I Won’t Let You Down」の制作が走り出していたから、「これを超えないとマズいな」とは思っていました。口には出さなかったけど(笑)。
OK Goは1999年、シカゴ出身の4人組みバンド。
左から)Andy Ross(アンディー・ロス)(G/Key/Vo)、Damian Kulash(ダミアン・クーラッシュ)(Vo/G)、Tim Nordwind(ティム・ノードウィンド)(B/Vo)、Dan Konopka(ダン・コノップカ)(Dr)
左から)Andy Ross(アンディー・ロス)(G/Key/Vo)、Damian Kulash(ダミアン・クーラッシュ)(Vo/G)、Tim Nordwind(ティム・ノードウィンド)(B/Vo)、Dan Konopka(ダン・コノップカ)(Dr)
関:原野さんとダミアンのディスカッションで早い段階から、日本を象徴する女子高生をアイコン的に使うことが決まっていました。
――Perfumeのカメオ出演も話題になりました。
原野:MVの話が来たときに、日本でも話題にするため、日本人のタレントを出演させられないだろうかって考えて、何人かの候補を検討していました。Perfumeは最初から最も有力な候補でした。OK Goの共演者であるためには、Makerというか、クリエイティブな匂いのする人じゃないとダメ。単に有名な人が出て来ても、大人の事情なのかなって思われてしまうでしょ。本当は、Perfumeにもっと、ダンスでも絡んでもらいたかったけど、練習時間も限られているし、現場スタッフという役どころに落ち着きました。関さんもずっとPerfumeのMVを作っているっていう安心感もありましたしね。
関:彼女達がOK Goがすごく好きだって言うのは知っていたし、出演の打診をしたらすごく喜んで二つ返事で引き受けてくれました。
■プリプロダクションとシミュレーション
OK Go「I Won’t Let You Down」
interactive: Ryo Tsukiji, Kousei Motoyoshi, Nobuaki Arikata, Kenshiro Nakashima, Junichi Arakawa, Masanobu Ishii, Yusuke Kitani|making-of: Makoto Kubota
「I Won’t Let You Down」の公式サイトでは自分で作れるインタラクティブMVも!
interactive: Ryo Tsukiji, Kousei Motoyoshi, Nobuaki Arikata, Kenshiro Nakashima, Junichi Arakawa, Masanobu Ishii, Yusuke Kitani|making-of: Makoto Kubota
「I Won’t Let You Down」の公式サイトでは自分で作れるインタラクティブMVも!
西田:ダミアンは撮影前に3回ぐらい来ているんです。打ち合わせやUNI-CUB βの練習をしたり、ロケ地に行って撮影コースをどうするか打ち合わせたり。毎回1週間程滞在して撮影の準備を進めていきました。
――プリプロダクションについて教えてください。カメラワーク、コレオグラフ、エキストラの人数など、どういったシミュレーションを経て準備されたのですか? インタラクティブ版MVとしてWebに上がっている、自分で振り付けたビデオが作れる仕組みがありますが、あのような感じでプレビズやシミュレーションをしていったのでしょうか?
原野:そうです。Webに公開しているものは、エンターテイメント性を上げたもので、僕たちが使っていたのはもっとプリミティブなものなんですけど。とにかく2,400人っていうすごい人数が登場するし、タイミングを合わせるのも難しいし、撮影してから「あれ? 」ってなるのは絶対避けなくてはならない。プリプロで言うと、シミュレーションしてテスト撮影をして、アイデアを補正していくという流れでした。
関:その元として、僕が、絵コンテでこうしたいっていうイメージを描いて、「これ実際に動けんの? グラフィックとしては綺麗だけど、実際こんなこと出来るの? 」というのをプレビズ、テスト撮影、リハーサルで検証していきました。どんどんシンプルにしていき、その分メッセージ性も強くなりました。
西田:全てをシンクロさせなきゃいけないのですが、その検証には相当時間をかけましたね。
原野:机上では横からこう入ってきて交差するとかっこいいね、ってなるんだけど、そのためには、この音楽のタイミングでダミアンたちはここに到着していないといけない。で、ワンカットだから、そうするとその手前、8拍前はどこにいるの? って。
関:そして、ドローンは何メートルの高さにいて、どこまで映るから・・・そういうことを全部やらないといけない。ワンカットだから逃げられないんですよね。
■振付稼業air:manによる振り付け
「I Won't Let You Down」ダミアンとティムのインタビュー映像
関:マスゲームっていう言い方はちょっと違うのかもしれない。俯瞰のダンスの見せ方という意味では、ミュージカルの手法に近い感覚なんです。そういうミュージカルの名作の資料の一つがOK Goも公式サイトのインタビューで触れているBusby Berkeley
――振り付けはair:manが担当されていますね。
関:前半のダンサーのパートはもちろん、最後カメラが上空に昇ってドット絵のようになる手前まで、振り付けと人の配置をやってもらっています。OK Goの振り付けは、本人達がベースを作ってair:manのアドバイスも取り入れながら作っています。いつもはダミアンのお姉さんが振り付けを担当しているのですが、今回急遽来られなくなってしまって。
西田:OK Goとair:manはすごく気があったようで、OK Goがちょっと振り付けを迷うと「air:man! ここどうしたらいい? 」って頼りにしていて、そんな中から傘の振り付けのアイデアが生まれたりしているんです。
関:練習中に、余興的にダンス空手を披露していたら、「じゃあ、これ入れようって」って決まったり。女の子がクルクルって回ってぺたっと座る振り(1:55辺り)のところですね。彼女達もすごくて、一度も失敗しなかったんです! air:manが、オーディションをして50名程のダンサーチームを作っています。
■ロケ地とエンディングの謎
雨の中練習中のOK Go。ロケーションは千葉のロングウッドステーション。
原野:ロケーション撮影というのは、完全にギャンブルでしたね。
西田:ギャンブル完全に負けましたけどね(笑)。
関:完全にね(笑)。半分以上雨だったっていうね。
西田:ほんとに泣きそうだった。撮影予備日にやっと晴れて撮影できた。
原野:でも、雨でUNI-CUB βの練習と撮影が出来なかった3日間で、歩いて練習するしかない状況が功を奏したのかもしれません。最初から乗ってやっていると、機械もおかしくなっちゃってたかもしれないし、頭で理解して、足で歩いて、色々と分かった上で乗ったから良かったと思います。
――ラストの俯瞰ロングショットにおけるこだわりについてもお聞かせください。
原野:ロケ地をGoogle Mapsで見ていた時に、周りがダム湖になっていることに気が付きました。映像の中でそれを見せなければ、と思ったんです。水が映るところまで見せるために、カメラは、700メートル上空まで昇っているんです。
――水を見せなくては、というのはどういう狙いからなんでしょうか?
原野:大俯瞰で水が見えて、ひょっとしたら雲がかかっちゃうといいな、なんて思っていたんですが、すごい偶然で撮影できたんです。カメラアングルがグルって回るのは、当日現地でその撮影方法が出来ると知って急遽取り入れました。あの時、ダミアン達は、音楽も終わっているのに、ずーっと何をやってんだろう? って疑問に思ってたそうです。打ち上げの時に聞かれて説明したら「てことは、本編が終わった後に二分間無音が続くっていうこと? それめちゃくちゃかっこいいじゃん! 」ってなって(笑)。リスクって言えばリスクなんですけどね。というのも、YouTubeの再生回数って尺の一定程度以上が視聴されないとカウントされない仕組みだから、長尺になるほどカウント上げるのって難しくなってくるんです。
■ワンカット、ドローン撮影の現場
原野:半分のスピードで撮影して、編集でその倍、つまり通常の速度に戻しているんですよ。
関:バズビー・バークレーらの昔の映像って、コマ数が少ないからシャキシャキ動いているように見えたりしていますよね。
原野:チャップリンとかね。そういう動きを現代のやり方で実現しようとしたのと、UNI-CUB βの速度が限られているから、映像にした時にダイナミックに見せるための工夫です。もう一つ重要なのが、スローにすることで、振り付けの一つ一つの動きが簡単になるんですね。傘を開いたり閉じたりするパートも、普通のスピードで撮影していたら、間違える人が続出したと思います。
西田:ただ、5分のビデオなので、10分のワンカット映像を作るということになるんですね。撮影的にはそういうリスクが発生します。
原野:そうすると、ドローンのバッテリーの時間に影響が出る。カメラをドローンに搭載して撮影しているんですが、ラストにあの高度まで昇ると、戻って来られるかどうかギリギリ(笑)。
――ドローンに搭載しているカメラは?
関:キャノンのEOS-1D Cで4K撮影をしています。今回、4K撮影がとても有効でした。ドローンはGPSで操作して、指定の地点に行く仕組みですが、どうしても1メートル程度のズレが発生するので、センタリングが出来ない。だから、大きな絵でちょっとルーズめに撮っておくと、納品はHDなので、トリミングして合わせることが出来ます。他にも、ブレをスタビライズ補正する必要があるので4Kというのは不可欠だったんです。
関:縦横比が違うから、同じタイミングで出てきちゃうと遅れが生じてしまうんです。
原野:しかもUNI-CUB βは乗っている人によってスピードが微妙に違うんですよ。ダミアンはすごく速く動かせるんですけど、ダンとティムはあんまり速度が出せない。でも、彼らはミュージシャンだから、最後の地点から逆算して、その場で歩いてカウントして「じゃあ、ティムは2小節と3拍半前から、アンディーは3小節前からスタートすると合うはずだから」って決めて、せーのでやったら、一発でぴったり合った(笑)。音楽に合わせて自分がどこにいないといけないって考えながらパフォーマンスするのは普通の人にはなかなか出来ないことだと思うんですよね。
西田:しかもUNI-CUB βをあそこまで操縦するのも難しい。ただ前進する訳じゃないのでね。
原野:UNI-CUB βのA地点からB地点まで自分でコントロールして走行するという基本機能を、140パーセントぐらい引き出してるよね。
関:逆に良かったのが、UNI-CUB βの速度は個人差があるけど、同じ人なら同じことが何回も出来ること。自転車のように変速しないので、一回出来たことは次も出来る訳ですね。そういう意味では、失敗はなかったんです。
関:楽曲です。でも、ドローンの撮影部はキューが欲しいって話でひと悶着ありました。
西田:ドローンチームは音楽系の人たちじゃないからね。エンジニアの人たちだから。
原野:でも、MVの撮影は音楽に合わせてやらないとダメだと思うんです。
関:そう、キューを出してたらタイミングが遅れちゃうし、ズレたら終わりの企画ですし。
――プレビスの時にカメラの動きをプログラムしてある程度自動操縦をしているのかと思いました。
原野:プログラムは出来るんだけど、精密には動かないんです。GPSも誤差が発生するし、ドローンだけでなくカメラアングルも全てが一緒に動いていかなければいけないから。
西田:そこは手動なんですよね。
――風の影響もありそうですね。
西田:この企画で、一番の挑戦だったと思います、ドローンの動きが。企画が固まっていくうちに、昇ったり降りたりがすごいことになったので、これをワンカットでやるのか・・・と。これまでの仕事でドローンを使った時も風にすごく影響されるっていうのが分かっていたから、10分間のワンカットが果たして本当に出来るのかっていうのは現場勝負で、その緊張感たるや、すごかったですね。だから成功して、最後の雲抜けて700メートル昇った時はみんなビジコン見てシーンとして、ちょっと崇高な感じでした。
原野:今風が吹いてなくても、10分以上の安定が見込めないと、飛ばしてくれないんですよ。でも、確かにそうですよね。途中まで上手くいっても仕方がないんだから。実際、難しいと思う。ドローンはコンピュータで動くんだけどそのドローン自体も微妙に人間が補完操縦していて、その横でカメラマンが別にいるわけですから。相当難易度高いですよね。ドローン撮影ですごくいいのを作るぞ、って世界中のみんなが狙っている時に、全員置き去りにするほどのハイレベルなことが出来たと思います。どうやって撮っているのってアメリカの2chみたいなサイトで議論されていたのを見ましたけど、「これは巨大な梯子だよ! 」って言う人もいて。めっちゃウケましたけど。アメリカだと高いところに飛ばしちゃいけないみたいですからね。
関:電波法とか航空法とか日本はまだグレーなタイミングですからね、今は。
原野:僕らは成田空港の許可をもらって撮影しています。
関:でも、ドローン1台で行くというのに行き着くまでは色々と考えました。クレーンに乗り換えるとか、最後はヘリだろとか、巨大なスパイダーカムを使うとか(笑)。
――そのドローンチームは機材を含め特殊なんでしょうか?
関:日本のスタッフなのですが、色んなプロフェッショナルが集まって作ったチームなんです。撮影現場で映像関連の電波飛ばしたり、VEも出来るし、ドローンも改造を加えたものを使っているとのことでした。
演出的に僕が挑戦したくて追加したところ(1:45辺り)、一回上空に昇って、また降りてくる動きの箇所があるんですが、最初はみんなそんなこと出来るの!? って感じだったんですが、毎回ピタッと降りて来てくれたことにはすごく感動しました。ああやって空間を自由に行ったり来たりするっていうのは、ドローンの映像として新しいものが作れたと思います。
――合計何テイクしたんですか?
原野:44テイクで、最後まで行けたのが11回。僕ら的にOKテイクが4テイク。その中の1個が公開されたものとなります。
関:最後のテイクでは、結構精度上っていました。光の感じや、本人たちの表情とか、そういうのを含めて一番いいのをチョイスしています。
西田:いや、上手くいったから笑って話せますけど、ほんとに綱渡りでしたよね(笑)
■OK Goのダミアンってどんな人? OK Goというジャンル。
関:とてもクレバーですよね。画面の見え方、自分たちの見え方を分かった上でやっているのがすごいなと思いました。どのレンズを使うとどう見えるかっていうのも理解しているんですよね。「ミュージシャンですよね? 」って言いたくなる(笑)。映像クリエイターとしての一面をまざまざと見せつけられましたね。
西田:攻めることに全くためらいがない。映像を作っている人だから、もちろん不可能なことは言わないですけど、頑張れば出来るギリギリのところを攻め続けるんですよね。そして、「やるのはあなたたちですけど大丈夫ですか? 」って言うところまで詰めてくる。
原野:僕は、制作現場だけでなくてプロジェクト全体をダミアンと共有してやっているんですけれど、なんて言うかハスラーだなって感じましたね。彼はアーティストであり、監督であり、OK Goというプロジェクトのプロデューサーでもあるんです。だから、クリエイティブディレクターの仕事の意味も分かっていて、Hondaを満足させることも重要だってことも分かっている。そう意味で言うと、すごくやり易かったですね。他にも、制作中に楽曲を4小節伸ばして映像に合わせてくれっていうお願いをした時も、その場で判断してOKしたし、イチ・ニ・サン・ヨンってかけ声を入れるアイデアまでダミアンが出してくれました。
――ちょうど、間奏のあたりですよね。映像にあわせて4小節分楽曲を追加したパートですね。Hondaとのやり取りについても教えて下さい。
原野:Hondaに対しては作っているものを完成するまで見せないという条件でお金を出してもらいました。企画コンテは見せるけど後は全部任せて下さいっていうことですね。普通のクライアントではなかなか受け入れてもらえない条件だけど、Hondaとはずっと仕事をしてきたというのもあるし、担当者の社内での信頼度が高かったというのもあります。そして、ダミアンは、その関係性が実現出来ているということの意味をきちんと分かっているから、僕がこれは難しいっていうことは、本当に難しいんだなっていう風にちゃんと理解してくれた。そこが分かっていないと、「原野さんは難しいって言っているけど、もう一回提案してみてよ」ってことになりがちですよね。そういうのが一切なかったのが良かったです。
西田:ダミアン自体が映像作家ですよね。彼はミュージシャンでもあるんだけど、映像作家の感覚ですよね。絵も見えているし、それをどうすればもっと面白く見せられるかっていう視点で常にアイデアを出していますから。
原野:彼らは最初、ミシェル・ゴンドリーにMVを撮ってもらいたいから、プレゼンするためのビデオを家の裏庭で撮って、まだYouTubeがなかったから、ファイルシェアシステムでネットに上げたところ人気が出たってところから始まっているんですよね。要するに、インターネットを初めて上手く使いこなしたアーティストなんです。「Here It Goes Again」(ランニングマシーンのMV)をYouTubeで公開して、インターネットビデオで世界を席巻出来ることを証明して、そのハードルをどんどん上げてきた。そこがユニークだなって思っています。インターネットでほぼ無名のバンドが、世界中の人に知られることになった。ミュージシャンだけど、映像が好きで撮りましたっていうレベルじゃあそこまでいけない。ワンカットとかインターネットでユーザーがびっくりしやすい要素も彼らの中に実感として知っている。リアルにやったことをそのまま映像にするというのはインターネット的ですよね。OK Goのやり方はMVを超えた一つのジャンルというか。それに参加出来たっていうのは良かったって思いますね。
――楽曲のタイトルどおり「I Won’t Let You Down(がっかりさせないの意)」なMVでしたが、みなさんの感想をお聞かせください。
関:今回の成功はやっぱりスタッフの一体感の賜物というか。こんな長い間一つの作品を作るってなかなかないんですが、そこで生まれた謎の友情、結束感にしても他では得られないものがあった作品制作でした。
西田:今回学ぶことが多かったですね。一つ一つのアイデアを丁寧にこつこつ積み上げて、検証を繰り返してやることで、ここまで飛距離が出せるんだってすごく勉強になりました。自分自身が込める熱量をもっと上げていけば、まだその先に行けるんだって。ダミアンのいる場所っていうのが、こんなにも高いところなんだって体験できたことは、このプロジェクトに関われて良かったことです。
原野:これは“史上最大のワンカット”。MVの歴史に残る作品が作れたと思います。そこまで行こうという気持ちで挑みましたが、本当に行けるかどうかは半信半疑。試写の時、出来た! と実感した時は嬉しかったですね。 楽曲が展開するにつれて、想像の斜め上に、映像が次々と広がっていくような作品を作りたかった。オープニングのシーンからラストのシーンが全く想像出来ないでしょ? だけど断絶はないんです。その展開のカーブはかなり理想的なものが出来たのかなって実感しています。
また、アーティストと企業のコラボレーション、という新しい枠組みの提示になっているとしたらいいですよね。MVには、まだまだすごいチャンスがあるなって思います。通常のMV制作では、基本的に企画も監督が作るわけで、クリエイティブディレクターって存在しない。今回は、クリエイティブディレクターと映像監督が両方いることによって、企画性の種類がちょっと違うものが出来た。海外ではボブ・ディランのMVのような作品もありますね。
MVは予算がないって言いますが、OK Goも同じで、予算がないんだけど、僕を見つけて、僕に頼んで、僕にHondaを連れて来させるっていうのを企画したわけじゃないですか。アーティストがそういう発想を持っているから出来たし、彼らの場合はレコード会社も自分たちが作って、ビジネスとアートが一体になっている。クライアントも今回クリエイティブコントロールなしでもやることを判断したから、この新しいステージに行くのに乗っかれた。そういう、枠組みを超えていく企画性の時代に突入したとしたら、出来ることってまだまだあるような気がします。そういう意味では、MV制作は今回初めてでしたが、またいつかやってみたいです。
■5つの質問 一問一答
写真:森口鉄郎
1: 一番影響を受けたものを教えて下さい
原野:The Beatles
関:音楽
西田:人
2: この職に就いたきっかけは?
原野:広告批評で権八(成裕)君のインタビューを見て
関:先輩の紹介
西田:流れ
3: 一番好きな映画は何ですか?
原野:寅さんシリーズ
関:taxi driver
西田:コヤニスカッツィ
4: オススメのレストラン or バーを教えて下さい
原野:寺(西麻布)
関:どん底(新宿)
西田:なし
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
原野:俺の屍を越えてゆけ2
関:子供の言動
西田:キングダム
原野:The Beatles
関:音楽
西田:人
2: この職に就いたきっかけは?
原野:広告批評で権八(成裕)君のインタビューを見て
関:先輩の紹介
西田:流れ
3: 一番好きな映画は何ですか?
原野:寅さんシリーズ
関:taxi driver
西田:コヤニスカッツィ
4: オススメのレストラン or バーを教えて下さい
原野:寺(西麻布)
関:どん底(新宿)
西田:なし
5: 今おもしろいもの/事って何ですか?
原野:俺の屍を越えてゆけ2
関:子供の言動
西田:キングダム
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