日本独立作家連盟がNPO法人に
「日本独立作家同盟」が任意団体からNPO法人になられたようです。
記者会見の様子は、以下のハッシュタグから窺えます。
今後は月刊群雛の発行だけでなく、ウェブメディア、セミナー・勉強会などでセルフパブリッシングの助力を行っていかれるようです。また、一般会員は無料、正会員は年一万円、賛助会員は一口五万円とのこと。
詳しい話は、きっと記者会見に参加された方がまとめてくださるでしょう。
「自己出版の本質とは?」
質問: 「紙の出版はやるのか?ブログに書くだけではダメという人に向けての仕組みなのか?自己出版の本質とは?」あ、これ大事な質問だぞ #日本独立作家同盟記者発表会
— M. E. Hori (@mehori) 2015, 2月 20
「自己出版の本質とは?」
現在の自己出版(=セルフパブリッシング)には、三つほどの視点があります。
一つめは、専業の作家が作品の幅を広げるために行うもの。
二つめは、作家を目指す人が他者に自分の作品を知ってもらうために行うもの。
三つめは、自分自身、あるいはごく限られたコミュニティーに向けて行われるもの。
他にもありそうですが、この3つで大部分はフォローできるはずです。
一つめは、商業出版に乗りにくい企画を世に問うもの。ちょっと話がややこしくなるので、ここは割愛します。
二つめは、二通りのパターンがあります。まずは、自己出版で有名になり、そこからステップアップして商業出版デビューを目指すパターン。次が、自己出版の世界だけで作家業を行うパターン。こちらは兼業の形が多くなるでしょう。
三つめは、「売れるとか売れないとか気にしない」というもの。とりあえず「本を書きたい」という意欲を満たせばOKで、それを(趣味・興味が)近しい人が読んでくれればそれで満足なタイプです。
三つもタイプもあるので、自己出版の本質とは?という問いには答えにくいのですが、対比の形で考えれば「商業出版に乗らなかった本がパブリッシングされること」と言えるでしょう。
これらは自己出版が、非常に低コストで行えることに担保されています。
パッケージング
雑誌というパッケージという売り方がどこまで通用するのか?電子はどんどん細分化される傾向では?
→個人は見つけてもらうこと自体が難しいので集まることによる宣伝効果を期待している。
#日本独立作家同盟記者発表会
— 晴海まどか@君には傘がよく似合う 発売中 (@harumima) 2015, 2月 20
まず、ほんとうに電子は細分化される傾向にあるのか考える必要があるでしょう。村上龍さんは「すべての男は消耗品である」のフルセットを発売されていますし、ライトノベルの全巻セットも何種類があります。
細分化すれば、必然的にそのコンテンツの単価が下がり、買いやすくなる、という傾向はあるように思います。また、制作するための時間も減ります。だから、買い手も作り手もそれを好む傾向はたしかにあるでしょう。しかし、必ずしも細分化が最適解とは限りません。
いつだってパッケージングには価値があります。逆に言えば、何をどうパッケージングしているのかという点に価値がなければ、売れることはないでしょう。そこが一つのポイントになると思います。
そもそも、月刊群雛が毎号5000部売れる、みたいな世界は想像しにくいので(もちろんどうなるかはわかりませんが)、単純な販売数だけで考えて良いものでもないでしょう。
群雛参加者はセルフパブリッシングやったことがある人中心なのか?それとも個人出版初心者?
→セルフパブリッシング経験者限定にしている。見つけられにくいという問題点を支援。
#日本独立作家同盟記者発表会
— 晴海まどか@君には傘がよく似合う 発売中 (@harumima) 2015, 2月 20
群雛は、セルフパブリッシング経験者に限定されています。で、少しでも多くの人に読んでもらいたいと考えている人が利用するでしょう。ということは、先ほどの自己出版のタイプで言うと二つ目がメインオーサーとなってきそうです。つまり、初心者〜中級者で、できれば作家としての技量や知名度を向上させいたいと望む人、ということです。
で、技量に関してですが、物書きの技量は推敲の中で向上します(と、少なくとも私は思います)。たとえば、編集さんが入った文章とそうでない文章とではやっぱり文章のクオリティが違うわけですが、作家はその編集さんとのやりとりの中で、文章力を鍛えていくものです。もちろん、対話の相手は編集さんに限りません。ようは、他の人に読んでもらって指摘をもらい、それを踏まえた上でリライトするという過程が、文章修行の一部になっているという話です。
その意味で、群雛の位置づけは大変ありがたいものです。
ただ、知名度に関しては参加するだけでは足りません。「集まることによる宣伝効果」は、単に集まるだけでは発揮しないのです。簡単に言えば、群雛に参加した各々の作家が宣伝することで、単独で宣伝するよりも大きな効果を期待できるということです。
Aという作家の宣伝で群雛に触れた人が、Bという作家の存在を知る。そういう効果を期待するならば、まず自分がアピールしなければいけません。ごく単純な話です。
そして、それが次の話につながります。
パブリッシングということ
考えたいのは、「群雛のその次は?」です。
仮に群雛が超有名なプラットフォームになったとして、そこに連載していたらすごく儲かる、という構図が出来上がってしまったとしたら、結局それは既存の商業出版を電子的に置き換えたことにしかなりません。それはそれで一つの達成と言えそうですが、面白みがない点も否めません。
では、すごく有名なプラットフォームにならなかったとしたら、どうなるでしょうか。
当然、最終的には、自分でプロモーションを行わなければいけません。群雛は最初のステップの助力として機能し、その後は自分自身でさまざまな活動を行っていく。それができるようになることが、おそらくは「群雛のその次」になります。結局の所、自分ですることからは逃れられないわけです。そして、それがセルフパブリッシングという行為の意味でもあります。
パブリッシングは、ライティングとイコールではないのです。エディティングがあり、プロモーションも含まれるのがパブリッシングです。
逆に言えば、どこかのプラットフォームにおんぶにだっこという楽な体制が取れない代わりに、どういう状況でも自分でやっていける力を持つというのが、セルフパブリッシングの着地点になるでしょう。
さいごに
仲俣:これはロングテールの問題でもある。電子書籍はこの中堅を支えることができるかもしれない #日本独立作家同盟記者発表会
— M. E. Hori (@mehori) 2015, 2月 20
こうしたことを考えていく上で、「ロングテール」は非常に重要です。そして、ロングテールは「信頼」と大きく関わっています。
その辺の話は、また大きい風呂敷を広げる必要があるので今回は割愛しておきましょう。
とりあえず、日本独立作家連盟のこれからの活躍に期待しております。