米シンクタンクのランド研究所から、人民解放軍(PLA)のウィークポイントに関する報告書が出ました。本報告書は、中国国内のメディアや専門書、党・軍の機関紙といったオープンソースをもとに、中国の軍人や専門家、そしてメディアがPLAの弱点をどう認識しているか、ということをまとめたものです。
組織的な弱点として、貧弱な指揮機構、低い人員の質、高官の腐敗・汚職などが挙げられています。さらには、訓練や教育課程、ロジスティクスのシステムの確立が不十分であること、とりわけ統合作戦能力の構築が遅れていることが取り上げてられています。たとえば、台湾有事において第二砲兵は陸軍の揚陸部隊、海軍の海上封鎖部隊、空軍の爆撃部隊との統合作戦に大きな不安を抱えており、作戦に必要な組織、システム、マネージメントがない状態である、と第二砲兵部隊で認識されているようです。
また、ミサイル、航空機、潜水艦といった兵器のアップデートも進んでいるものの、J-20やJ-31といったものも米国のF-22やF-35の能力には劣り、総じてサイバーアタックには脆弱であるとされています。海軍のイージスっぽいシステムも、それを機能的に運用するISRが不足しているため沿岸から遠く離れたところでの運用は限定的、と分析されています。
中国の軍事力は質・量ともに著しい進歩を遂げていますが、その一方でさまざまな弱点があります。彼ら自身が弱点と認識している場所を知ることは、PLAがこれからどういった方向へ進むのかを知るガイドラインにもなります。抑止の仕方を考えるヒントにもなりますし、抑止が不幸にも破たんした場合には、こちらにとって利用すべきものともなります。
中国国内でこうしたPLAの弱点を指摘する出版物が多いことは望ましいことです。中国の党・軍の意思決定者が誤った自信にもとづいて行動してしまうことは危険ですから、意思決定者に彼らの弱点を認識させることは、誤解・誤算によって引き起こされる戦争の危険を取り除くかもしれません。一方で、こうした「中国の弱点」なるものの中には欺瞞情報が含まれていることに注意する必要もあります。米国や日本といった他国の意思決定者が欺瞞情報によって誤解・誤算を引き起こすことも危険です。
ランドの報告書は、「中国にはこんな弱点があるということを中国国内でも指摘されているよ」ということをまとめたものであり、この報告が決定版 (definitive study)ではなく準備運動的なもの (preliminary step)だとしています。インフォメーションの段階にあるモノをインテリジェンスと位置づけないようにしないといけませんね。
まだ細部には目を通してないのでメモ代わりの更新でした。ナナメ読みした感じだと、中国の陸・海・空・第二砲兵・宇宙・サイバーなどのドメインに関するこれまでの歩みと現状戦力、そして2025年までの展望も描かれているので、興味のある方は是非。
[PDF] China’s Incomplete Military Transformation - Assessing the Weaknesses of the People’s Liberation Army (PLA)(February, 2015)
組織的な弱点として、貧弱な指揮機構、低い人員の質、高官の腐敗・汚職などが挙げられています。さらには、訓練や教育課程、ロジスティクスのシステムの確立が不十分であること、とりわけ統合作戦能力の構築が遅れていることが取り上げてられています。たとえば、台湾有事において第二砲兵は陸軍の揚陸部隊、海軍の海上封鎖部隊、空軍の爆撃部隊との統合作戦に大きな不安を抱えており、作戦に必要な組織、システム、マネージメントがない状態である、と第二砲兵部隊で認識されているようです。
また、ミサイル、航空機、潜水艦といった兵器のアップデートも進んでいるものの、J-20やJ-31といったものも米国のF-22やF-35の能力には劣り、総じてサイバーアタックには脆弱であるとされています。海軍のイージスっぽいシステムも、それを機能的に運用するISRが不足しているため沿岸から遠く離れたところでの運用は限定的、と分析されています。
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中国の軍事力は質・量ともに著しい進歩を遂げていますが、その一方でさまざまな弱点があります。彼ら自身が弱点と認識している場所を知ることは、PLAがこれからどういった方向へ進むのかを知るガイドラインにもなります。抑止の仕方を考えるヒントにもなりますし、抑止が不幸にも破たんした場合には、こちらにとって利用すべきものともなります。
中国国内でこうしたPLAの弱点を指摘する出版物が多いことは望ましいことです。中国の党・軍の意思決定者が誤った自信にもとづいて行動してしまうことは危険ですから、意思決定者に彼らの弱点を認識させることは、誤解・誤算によって引き起こされる戦争の危険を取り除くかもしれません。一方で、こうした「中国の弱点」なるものの中には欺瞞情報が含まれていることに注意する必要もあります。米国や日本といった他国の意思決定者が欺瞞情報によって誤解・誤算を引き起こすことも危険です。
ランドの報告書は、「中国にはこんな弱点があるということを中国国内でも指摘されているよ」ということをまとめたものであり、この報告が決定版 (definitive study)ではなく準備運動的なもの (preliminary step)だとしています。インフォメーションの段階にあるモノをインテリジェンスと位置づけないようにしないといけませんね。
まだ細部には目を通してないのでメモ代わりの更新でした。ナナメ読みした感じだと、中国の陸・海・空・第二砲兵・宇宙・サイバーなどのドメインに関するこれまでの歩みと現状戦力、そして2025年までの展望も描かれているので、興味のある方は是非。