金と地位で自尊心傷つけた…「ナッツ姫」を叱責

写真拡大

 【ソウル=吉田敏行、宮崎健雄】ソウル西部地裁が12日、大韓航空前副社長、趙顕娥チョヒョナ被告(40)に言い渡した懲役1年の実刑判決は、「金と地位で、人の自尊心を傷つけた事件」と指摘し、「特権階級」化する韓国の財閥一族の体質を改めて浮き彫りにした。

 韓国では「財閥一族による前近代的な経営行動を根絶するきっかけにしなければならない」(聯合ニュース)との声も高まるが、財閥頼りの経済構造を変えるには時間がかかりそうだ。

 ■最小限の礼儀

 「人に対する最小限の礼儀と配慮の心があれば、決して発生しなかった事件だ」

 裁判長は12日、法廷で起立した趙被告がうなだれたまま聞き入る中、淡々とした口調でこう指摘した。趙被告は今回、反省文を提出。これを裁判長が読み上げると涙を流す場面もあった。

 だが、趙被告から叱責された乗務員らはこれまで「謝罪も受けていない」などと証言しており、裁判長は「本当に反省しているか疑問だ」と断じた。その上で、趙被告がメディアの報道に伴う世論の悪化で苦痛を受けたことや生後20か月の双子の母親であることを考慮しても、実刑が相当と述べた。

 判決前、法曹界やメディアには執行猶予の見方が強かったが、ある弁護士は今回の実刑判決について「裁判所はかなり厳しい処罰をした。世論の悪化が影響したのだろう」と述べた。

 一方、韓国紙・ソウル新聞(電子版)は「経営者の横暴に警鐘を鳴らした」と分析。有識者の話を引用し、「大衆は、人格や能力が不足する人物が責任者として過度な権力を持っていることに怒っている」と指摘した。また、別の専門家の話として、「財閥が大衆の交通手段である飛行機まで、(社内の)『上下関係』の用途に使ったのだから、国民の怒りは当然だ」との見方も示した。

 ■財閥依存

 今回の事件は、韓国社会における財閥の影響力の大きさと、官民癒着の実態を改めて浮き彫りにした。航空業界を監督する国土交通省では、趙被告の事件について調査した担当者6人のうち2人が大韓航空出身で、このうち1人は調査内容を漏えいし、この日の判決で有罪判決を受けた。

 同社を巡っては、海外出張した同省職員の座席を無料でアップグレードしていた疑惑も浮上。スピード判決とは対照的に、同省の調査は続いており、結果次第では、改めて癒着に批判が高まる可能性もある。

 事件後、韓国では財閥改革論が盛り上がる可能性も指摘されたが、政府・与党からは経済活性化のためとして服役中の財閥トップの仮釈放論が浮上した。朴槿恵パククネ大統領はこれを認めなかったものの、新興産業の育成では財閥企業と連携して取り組む動きを加速させており、「財閥頼み」の経済をなかなか変えられない現実もある。