最近、Valveによって試験的に導入された、「Steam」のレビュー機能。
具体的には、商品のストアページに行くと、価格や動作環境といった情報と共に、ユーザーによるレビューが公開される機能である。
さっそく、数多くのレビューがユーザーによって投稿されており、その質は予想通りの玉石混交といった具合で、スパムに近いレビューから真面目なものまで様々だ。
ところが、『Neverending Nightmares』というゲームで、一つ私の目に止まったものがあった。そのレビューは300人以上の指示を得ていて、ぶっちぎりに注目されている。
一体どんなレビュアーなんだ? ブログを書いてる身分としても、彼の正体が気になった。
レビュアーの名前は「Matt Gilgenbach」。ほうほう、マットさんね。あれ?どっかで聞き覚えがあるな。
ほうほう、ゲームを「おすすめ」しているのか。それで本文は?
「*Disclaimer: I am the developer of the game, so take my review worth a grain of salt*」
えーっと、「免責事項、私はこのゲームのディベロッパーです。なので私のレビューを真に受けないでください」。
…っておい!これゲームの作り手の自作自演じゃねえか!通るかっ・・・・!こんなもん・・!
さて、作者によるレビューの自作自演といえば、3年前ぐらいにTelltale Gamesの社員が、自社の『Jurrasic Park: The Game』の10点満点のレビューをMetasticでこっそり書いてたことが有名だが、
Telltale Games社員がMetacriticで『Jurassic Park: The Game』に10/10レビューを書いていたことが発覚 « GAME LIFE ニュース
こともあろうに、天下のsteamが用意したレビュー機能で自演するとは…。灯台下暗しとはこのことか。
レビュー機能を使って開発者がゲーマーに語りかけるなんて異常だ。面白い試みかもしれないが、普通に考えてレビュー機能の公平性や定義を疑うことになる。
少なくとも、Valve側もゲーマー側も自演を意図してレビュー機能を活用していないだろう。彼の「自演」は正しいものなのか?また、彼は何を「自演」したかったのか?
とは言え、彼はちゃんと「ディベロッパーですよ」と言ってるわけだから、自演の是非はどうあれ話を聞いてみるべきだろう。以下が翻訳文だ。
(Matt Gilgenbach氏)
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※免責事項、私はこのゲームのディベロッパーです。なので私のレビューを真に受けないでください
実を言うと、私は「レビュー機能」とはゲームを率直に語るためのものだと考えていて、私の(自演の)レビューもまたゲームの理解に役立つことを信じて書いています。
まず、本作は典型的なホラーゲームではなく、従ってドカンと驚かせるシーンも少ないです。
むしろ、私自身が精神疾患の中で経験した、張り詰めていて重苦しい雰囲気を味わってもらうために、この作品を作ったのです。
当然、大らかな気持ちで遊ぶことは出来ないでしょう。一部の方は本作を「ウォーキングシミュレーター」と呼んでおり、
これはキャラクターが実際にノロノロと歩く点では正しく、また意図的な調整であることも事実です。
このゲームでは無力さと虚弱さにこそ、真の「ホラー」があります。
虚弱性を表すため、主人公には喘息に煩わせ、これによって主人公は息継ぎもなく長距離に渡って走ることが出来ません。強敵が現れても、逃げ切ることは難しいでしょう。このスタミナ管理こそが、本作に緊張感をもたらしているのです。
また、我々は没入感を与えたかったため、本作からUIやHUDといった古典的なメカニクスを取り除きました。つまり、ゲームを遊んでいると考えるのでなく、悪夢を見ているのだと感じて欲しかったのです。
ゲーム自体は長くありません。2時間もアレば一つのエンディングを迎えられます。しかし、3種類のエンディングが本作の経験をユニークなものにたらしめています。ですので、もう数時間ほど辛抱して全てのエンディングに辿り着いてください。
このゲームを気に入っていただけましたか? それなら、あなたが本当に探していた対象はこの悪夢でしょう。
もしあなたが、ユニークで濃厚なホラー体験を求めているのなら、我々の作品を気に入って頂けるはずです。
あるいは、多くの挑戦を求めるゲーマーか、短いゲームが受付ないゲーマーなら、本作はあなたのためのものではありません。
(If you are turned off by short games or ones without a lot of challenge, then this may not be the game for you.)
そもそも、全員に受け入れられるゲームを作ることは大変で、我々は多くの人間に真に愛される特別なゲームを作ったのだと思っています。
( It's tough to make a game that appeals to everyone, but I think we've created a special game that a lot of people will really love.)
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。ゲームを楽しんでください!
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………え?
いや、ちょっとまってくれ。色々と指摘したい点はあるけど、それより
「全員に受け入れられるゲームを作るのでなく、我々は多くの人間に真に愛される特別なゲームを作った」
ってなんなんですか。それ他の開発者にも失礼だし、ゲームがつまらなかったら、自分たちの過失や実力不足じゃなくて、お客さんの感性と合わないせいってことですか??
あのね、世界中のコンテンツに携わる人間の誰一人として、「全員に受け入れられるゲーム(a game that appeals to everyone)」を「作れる」なんて驕った考え、最初から持ってるわけないでしょう。
でも言い訳せず、「一人でも多くの人に喜んで欲しい(that appeals to people as many as possible)」と考えるのは、社会人として当然じゃないのか。
少なくとも、このマット氏は、「ユーザーレビュー」の分水嶺を侵犯してまで、こんな当たり前の卑劣なエクスキューズを考えてきたのか。
私自身、クリエイターがユーザーレビュー機能を活用することは、騙さない限りは仕方ないと思っていた。むしろ、面白い試みだとも思う。
ところが、このレビューのために自演まで踏み切るマット氏を見て、「クリエイターによるユーザー機能の活用」という行為に疑問を呈さずを得なくなった。
今後共、steamのレビューを利用した自演は珍しいことでもなくなるかもしれない。ただ、それが「解説」でなく「痛々しい言い訳」のために来るのなら、いよいよ考えなおすべきじゃないだろうか。
勿論、クリエイターとして、いや人として「何故理解されないんだ」と頭を抱える感覚は大いに理解できる。
だが、そこでわざわざ出てきて、クリエイター権限を振りかざして他者に理解を強要したところで、何の意味があるのだろう。どうしてゲームで、それを伝えられなかったんだろう。
挙句「嫌なら読まなくていい、遊ばなくていい」というけども、それなら最初からsteamでゲームを売らなければいい。
結局、自分は理解して欲しかったのに、自分の力量が足りないがために理解されなかった。素直にそう考えられないのか。
むしろ、大衆の理解力がないというなら、その大衆によって支えられてきた数々の名作まで、否定するということになるのではないか。
少なくとも、一定の人に受け入れられるゲームと言う前置きをするなら、ママだけに作品を見せればよかったじゃないか。
本当に理解して欲しいなら、こんなセコい自己弁護じゃなくて、新しいゲームを作ってくればいい。
ワンピースじゃないけど、クリエイターが作品に真摯に向き合えないなら、誰が作品を評価すればいいんだよ。
まぁ、『Retro/Grade』は良作なんだけどね☆(ゝω・)v