原爆施設やNASA格納庫。2014年に救われた5つの歴史的施設
米国の歴史を伝える遺跡。
2014年、米国の歴史的施設保護団体ナショナル・トラストが対象とする施設のうち、5ヵ所の救済が決まりました。以下のリストには、原子爆弾が開発されたマンハッタン計画の研究施設から、米国初のアフリカ系米国人向け新聞が創刊された小さなビルまでいろいろです。これらの施設は、負の面も含めた米国の歴史を今後も伝え続ける遺跡であり、きちんとした形で残されることには大きな意味があります。
マンハッタン計画とヒンチリフスタジアム
先に残念なニュースを言うと、最近「国防権限法」なるものが成立し、国有林でありネイティヴアメリカンの聖地でもあったアリゾナ州オークフラットが大規模な銅鉱脈の掘削に向けて法整備されてしまいました。でもその同じ法律のおかげで、良いニュースも生まれました。新たにふたつの施設(うちひとつは複数州にまたがる施設群)が、ナショナル・トラストの国宝(National Treasure)に認定されたんです。
そのひとつめは、原子爆弾が開発されたマンハッタン計画の施設3ヵ所です。ニューメキシコ州ロスアラモス、テネシー州オークリッジ、ワシントン州ハンフォードに、研究所や司令部、プルトニウム工場が置かれていました。
ふたつめは1930年代初頭に作られたニュージャージー州のヒンチリフスタジアムで、アフリカ系米国人の野球リーグ「ニグロリーグ」が開かれた場所の中で唯一現存する球場です。
Image: Denise Ryan/National Trust; Daniel Lugo/CC
ハンガー・ワン
現在NASAが運営するモフェットフィールド飛行場にあるハンガー・ワンは、NASAが運営する中でも最大の建造物のひとつで、シリコンバレーにあって大きな存在感を放ってきました。トップ画像もこちらで、1930年代、米海軍の巨大飛行船メイコンの格納庫として作られました。でももう長い間使われないままになっていて、取り壊すべきという議論も起きていました。米Gizmodoのヘスス・ディアス記者も、2011年にこう書いています。「米国でもっとも象徴的な建造物のひとつにもかかわらず、悲しい状態に置かれている。」
でも幸いグーグルが11月にNASAと契約を結び、ハンガー・ワンをレンタルして、「科学・教育施設」として作り変えることが決まりました。グーグルは前からモフェットフィールドにプライベートジェットを駐機させていて、ついでに給油もちゃっかり政府価格で安価にしていたことがわかったりしてちょっとした騒動だったりしました。ともあれ、これからはただグーグルが都合よく使うだけじゃなく、触れ込み通り公共にも貢献するような形で活かしてくれるといいですね。
Image: Christopher Chan/CC
シンシナティ・ユニオン・ターミナル
こちらは1933年に建てられたオハイオ州のシンシナティ駅で、今年ナショナル・トラストが「絶滅危惧」する施設のリストに入っていました。アールデコ調の建物の中には博物館、図書館などがいくつか入っていますが、建物はボロボロになりつつありました。修復には巨額の費用をまかなうために増税が必要とされましたが、11月に住民投票が行われ、地域の人たちはこの駅を修復し、保存することを選択しました。
Image: Kathy/CC
アトランタ・デイリー・ワールド本社
1928年、26歳のウィリアム・アレクサンダー・スコット二世氏が、米国初のアフリカ系米国人向け新聞を創刊しました。それがアトランタ・デイリー・ワールドです。この赤レンガのビルは、約1世紀近くもこの新聞の本社であり続けました。
でも2008年に大竜巻があり、このビルも被害を受けたことで、取り壊し寸前になっていました。でもあるデベロッパーがこの建物を買い取って、住宅兼店舗として改修し、この建物の歴史を示す看板を掲げることが決まりました。救済策として理想的じゃないかもしれませんが、とにかく建物としては生き残ることになりました。
Image: Wally Gobetz/CC
グリーンマウンテン見張り所
このワシントン州カスケード山脈にある小さな小屋は、いろんな時代を見てきました。ナショナル・トラストによれば、大恐慌時代にフランクリン・D・ルーズベルト大統領のニューディール政策の一環である市民保全部隊によって建てられ、ワシントン州の火災監視所のひとつとして使われたのち、第二次大戦中には敵軍機の見張り用に作り替えられました。
でも2011年に環境保護団体が、この見張り所の修復工事は「原生自然法」を侵害していたとして撤去を求める訴訟を起こし、その主張を認める判決が出されてしまいました。原生自然法では、公式に「原生自然」と決められた地域での建造物を禁止しています。でも2014年4月、オバマ大統領が「グリーンマウンテン見張り所文化遺産保護法」に署名したことで、無事救済されることになったんです。
時代が変わっていく中で、価値観も変化していって、何もかもをそのままとっておくのは難しいことです。それでもこうして残されていくものや、その背景にある歴史とか人の気持ちには、やっぱり重みがありますね。
Image: USDA Forest Service, Lead Image: Chris Figge/CC
Kelsey Campbell-Dollaghan - Gizmodo US[原文]
(miho)
- ベスト・オブ「世界遺産」10周年スペシャル [Blu-ray]
- アニプレックス