電子書籍ポータルサイトが失敗したけど、大切なことに気付いたという話
個人的に2011年は、忘れられない年です。2010年(電子書籍元年)に、電子書籍の可能性に気付いてから試行錯誤をし、たどり着いたのが「ポータルサイトの開発」でした。このサイトは、「EPUB入稿オンリー」のインディーズ作家向けプラットフォームでした。
オープン初日はCNET Japanさんにも取り上げて頂き、まずまずのスタートを切ることができました。あれから4年。残念ながら、サイトの閉鎖を決断しました。この結果を見て、「無謀」「体力勝負で勝てるわけがない」「どうせKindleが来るのに何やってんの」と笑う人もいるかもしれません。
しかし、チャレンジすることに意味があったと思うし、失敗したからこそ見えてきたことがあります。この記事では、その結論を書きます。
失敗の理由を初公開
これまで明かすことのなかった、プラットフォーム事業失敗の理由について書いてみたいと思います。一般的に起業家と言えば「成功」のイメージを前面に出したいものです。
でも、業界で長年活動されている方は皆同じだと思いますが、電子書籍業界で活動するのは泥臭いことの連続です。もし「電子書籍で成功するなんて簡単」なんて言う人がいるなら、その人は確実にウソをついていると断言できます。
私には、自分を大きく見せたい欲求がありません。むしろ、失敗を共有することで、これからチャレンジする人の役に立てた方が嬉しいです。
販売力のあるサイトを作りたい
今から思い出しても、2011年はエキサイティングな一年でした。朝から晩まで電子書籍のことを考え、理想の未来を妄想してはワクワクしていました。当時、インディーズ作家向けのプラットフォームとして、PubooさんとforkNさんがオープンしていました。
特にPubooさんは使い勝手も良く、著名な作家をたくさん集めていました。正直、Pubooさんに比べれば、私の開発しているポータルは弱点だらけでした。でも、開発を決断したのは、「販売力(マーケティング)」の要素を、プラットフォームの機能に取り入れたいと思ったからです。
プラットフォームの販売力
「販売力」を具体的に言えば、「読者に対するメール送信機能」「アフィリエイト機能」「継続課金機能」です。今でもあまり変わりませんが、当時も「電子書籍は収益化が難しい」と言われていました。私はその原因を「プラットフォームの販売力」にあると考えていました。
もし販売力の強いプラットフォームがあれば、電子書籍で稼ぐことは可能であると証明したい気持ちもありました。同時にEPUBという新しいメディアの魅力を、啓蒙したかった。
今から振り返っても、上記3つの機能は電子書籍と相性が良く、コンセプトとしては大きく外れていなかったと思っています。しかし、オープン後、私の期待は残酷なまでに打ち砕かれました。
失敗の理由
始めに断っておきますが、ここに書く失敗の理由は、すべて私の責任です。力を貸してくださった方々には、素晴らしいご尽力を頂きました。では、何が悪かったのか? 理由としては2つあります。
1つは、初めから大きく展開しようとしてしまったこと。
もう1つは、開発を完全外部委託してしまったこと、です。
2011年当時の業界内の空気は独特なものがあり、「もしかしたら、電子書籍は化けるかもしれない」という期待感がありました。そんな中、私は「電子書籍は絶対にブレイクする!」と思い込んでいました。
思い込みで見切り発車
私はとにかくやってみたいという気持ちを抑えきれず、見切り発車でスタートしました。起業のイロハから考えれば、思い込みで事業を開始するなど言語道断です。そして、狙うなら最大値と考え、(自分としては)出来る限り大きな戦略を企て実行していきました。
この考えが失敗の元でした。そもそも新規のプラットフォームに対し、需要があるのかも分からないのに、高額なサーバをレンタルし、フル機能を実装していってしまったのです。
そして2つ目の理由につながりますが、開発はすべて外部委託にしました。私がプログラムを書けないため、外部に頼まざるを得ませんでした。それでも、開発は順調に進んでいき、2011年の秋には無事オープンしました。
資金力とシステム改修
オープンの時までにプロモーション、メディア展開、SEO対策等を行い、資金はほとんど底をついてしまいました。同時に、大変なことに気付いたのです。
スタートアップのITサービスは、オープンしてからが本当のスタート。そこから、ユーザーの意見、要望を聞き、システムを改修していきます。しかし前述の通り、サイトは完全外部委託&資金が無い状態でしたので、システム改修に使えるお金が全くありませんでした。
改修したければ、その都度、4万円、8万円、16万円と、どんどん請求が積みあがります。当然、そんな余裕はありません。ですので、オープンしたままの状態で、何ヵ月も運営を続けなければならない。その時になって初めて、選択を間違えたことに気付きました。
可能性は捨てない
もう一つの誤算がありました。思った以上に、ユーザー登録数が増えなかったのです。メディアでは騒がれていましたが、本当に関心があるのは数百名。このギャップに愕然としました(いち早くご登録頂いた皆様には、今でも心から感謝しています)。
走り出してしまったので、もう後戻りは出来ません。私は何が原因なのか考えました。出した結論は「電子書籍の魅力に気付いている人がまだまだ少ない。と言うことは、魅力さえ伝わればユーザーは増えるはず」という希望論でした。
そこからは「電子書籍ビジネス」に関する月刊誌を発刊したり、出版社さん、著者さんとコラボレーションをしたり、様々な試行錯誤をしました。その活動自体は本当に楽しいものでしたが、肝心のユーザー数は増えませんでした。
ランニングコストの限界
オープンから一年経っても、サイト自体からの収益は良くて数十万円程度でした。一方で、日々のランニングコストは増えていきます。サイト保守費用、サーバレンタル費用、人件費、給与。冷静に電卓を叩けばヤバいことは確実であり、もう誤魔化せない状況でした。
それでもどうにか活動を続けていきました。しばらくすると、遂にAmazon Kindle(KDP)が上陸しました。周囲の人は「Amazonが来たら、その他のプラットフォームは終わりじゃね?」と笑いました。
私は「このプラットフォームを開発したのは、Amazonが来てから高額な書籍を売れる場所にする構想だった」と言いかけましたが、そんな気力もありませんでした。
その後の展開
会社としても、プラットフォーム事業を行っている余裕はありませんでした。それからは、右往左往しながらも、電子書籍に関する様々な活動を続けました。そして、2014年7月にサイト上で閉鎖のお知らせをし、同年11月に残念ながら閉鎖となりました。
続けるという選択肢もありましたが、時代にあわせてシステム改修するとなると、膨大なコストが掛ることが分かり、決断しました。
失敗から私が気付いたもの
この経験で得たものはたくさんあります。
まず当たり前のことですが、新規事業は小さくスタートして、最小限のランニングコストで運営しないと続きません。
次に、万が一、大手インディーズ電子出版プラットフォームが撤退しても、EPUBを土台とすれば問題なくクオリティの高い電子出版を継続できることが分かりました。これは自分でプラットフォームを運営し、日々EPUB販売に接していたから断言できます。
また、EPUBはスマートフォンと相性が抜群に良く、アプリともブログともウェブサイトとも違う、新しいメディアであると確信しました。現時点でEPUBは、Amazon Kindleや楽天Koboの入稿ファイルとして扱われていますが、将来的にはEPUB直販も販売方法の一つになると思います。
電子書籍で最も収益化しやすい方法
最後に、電子書籍による収益化方法で、最も利益につながりやすいと思われる方法を書いて終わりたいと思います。
私は電子書籍作家こそ、多くの印税を得るべきと考えています。儲け度外視の作品も素晴らしいですが、やはり対価があってこそ、モチベーションも上がるし執筆環境も向上します。
電子書籍を収益化させやすい方法は「電子書籍×継続課金」です。
電子書籍は、Amazon Kindle等で出版します。100円で販売して印税は1冊あたり35円ですので、印税だけの売上ではそこまで大きな収入になりません。そこで、電子書籍と連動した、継続課金の仕組みを取り入れます。
あくまで一例ですが、
PayPalの継続課金システムを使い、独自課金による月刊誌(EPUB直販)を発刊する。
Synapseさんが提唱、サービス提供している「オンラインサロン」で、ファンクラブを運営する。
といった方法が考えられます。電子書籍によってファンをつくることで、通常の何倍も「継続課金サービス」の提供が容易になることが特徴です。
継続課金のサービスを購読するのは熱心な読者(ファン)ですので、比較的高額な値付けも可能です。電子書籍で100名の熱心な読者が付き、月額3,000円のオンラインサロンに入会してくれれば、月間30万円の売上になります。
電子出版をこういった複合的な視点から捉えることで、出版戦略を点ではなく線で考えられるのではないでしょうか。そして、すでに成果は出始めています。
最後になりますが、私は何度失敗しても、どんな出会い別れがあっても、EPUBを好きなことは絶対に変わりません。これからも、日本のインディーズ電子出版業界の健全な発展を願い、微力ながら活動を続けていきたいと思います。お読み頂きありがとうございました。I LOVE EPUB!!