雇用契約書が必要な3つの理由
2015/01/04
労働基準法では入社時に雇用契約書を作成することを義務付けられてはいません。
しかし入社時に雇用契約書を交わすことにより様々なメリットがあるため、労務管理の専門家である社会保険労務士は雇用契約書を取り交わすことを推奨しています。
それではなぜ専門家は雇用契約書を交わすことを勧めるのでしょうか。
ここではそのメリットについて説明していきます。
雇用契約書の締結により従業員とのトラブル防止につながる
会社と従業員のトラブルの原因の一つに「言った、言わない」の問題があります。
- ハローワークの求人には試用期間中は時間給であることを書いていたが、採用後に従業員から時間給の話は知らないと言われた。
- 1年ごとに更新する契約社員のつもりで採用したが、従業員から契約期間があることは聞いていないと言われた。
このように会社と従業員の間の労働条件の食い違いは挙げればきりがないほどたくさんあります。
そしてこのような食い違いが労務トラブルにつながるのです。
もしもこの会社に雇用契約書があればどうでしょうか?
雇用契約書は会社と従業員がお互い内容を確認したうえで押印して、双方で保管します。
ですから従業員も労働条件を確認して押印するのですから知らなかったとか聞いていないということにはならないので、雇用契約書には労務トラブルを未然に防ぐ効果があるのです。
労働条件の中には法律で明示しなければならない項目がある
労働基準法では労働条件の一部について、明示しなければならない項目が決められています。
- 書面で明示しなければならない項目
- 労働契約の期間に関する事項
→(契約期間の定めがある場合にはその期間、ない場合にはその旨) - 労働契約期間の定めがある場合→更新の有無および更新の基準
- 就業の場所及び従事する業務に関する事項
- 始業及び終業の時刻、所定労働時間を越える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに交代制の就業転換に関する事項
- 賃金(退職手当及び8に掲げるものを除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締め切り及び支払の時期、昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
これらについては雇用契約書で明示する必要はありませんが、採用時には雇用条件通知書などの書面により通知しなければなりません。
しかし雇用契約書に明示して契約を交わすことにより、従業員側が労働条件を確認していると主張する有力な証拠になります。
- ルールがあれば明示しなければならない項目
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
- 臨時に支払われる賃金、賞与及び一箇月を超える期間の出勤成績によつて支給される精勤手当、一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当 、一箇月を超える期間にわたる事由によつて算定される奨励加給又は能率手当並びに最低賃金額に関する事項
労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 - 安全及び衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰及び制裁に関する事項
- 休職に関する事項
これらについてはルールがある場合には明示しなければならない項目です。
労働基準法では書面での明示は義務付けられてはいません。
繰り返しにはなりますが、後日に「言った、言わない」のトラブルを防止するために雇用契約書に載せておいたほうが良いでしょう。
従業員に会社のルールを示すことができる
雇用契約書を作成して読み合せを行うことで会社のルールを入社した従業員に示すことができます。
上に挙げた書面で明示しなければならない項目については労務トラブルを防止する観点で見ても非常に重要なものなので、単に手渡しをするだけではなく読み合せを行ったうえで雇用契約書に押印するほうが良いでしょう。
また明示しなければならない項目には含まれていませんが、会社に就業規則があるのであれば服務規律を抜粋し雇用契約時に読み合せることも効果的です。
会社のルールを示すことができますし、新しく入社する従業員に「ルールのしっかりした会社だ」という意識を持たせることもできます。
そうした意識を従業員が持つことで、従業員の仕事に対する意識が高まります。
まとめ
今まで雇用契約書を作成していなかった会社であれば、作成をするだけでも面倒に思われるかもしれません。
しかし雇用契約書を取り交わさずに従業員との間で労務トラブルになると費用も時間もかかってしまい、より面倒で、より費用も時間もかかることになります。
そうならないためにも雇用契約書を取り交わすことを徹底すべきでしょう。
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