ダンディに、ハードボイルドに、小説のワンシーンのような一日を
「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」
そう言ったのは、レイモンド・チャンドラーの探偵小説に登場する主人公フィリップ・マーロウ。男の美意識を体現した歴史に残るダンディなキャラクターとして世界的に知られています。
日本でも 80~90年代の華やかなバブル期のなか、マーロウの台詞に追随するかのように、若者たちのあいだでダンディズムが憧れの対象として根付きました。
そして、そんな風潮を象徴するもののひとつが、ギラギラに輝く純喫茶文化。最近では、スタイリッシュでオシャレなカフェが増えましたが、今回は敢えて昭和なバブリー感漂うゴージャス系喫茶をご紹介します。
革張りのソファに身をゆだね、珈琲片手に煙草をくゆらせれば、草食系もダンディな大人の男性へと様変わり。さあ、 “強い男”のエッセンスを啜りに、東京の街へ繰り出しましょう。
エスカレーターを昇れば、広がるは豪奢な異空間~池袋~
カフェ・ド・巴里
まず最初にご紹介するのが、JR池袋駅西口を出てすぐの「カフェ・ド・巴里」。
ビルの2階にある店舗には階段を使って正面から入店することも出来ますが、ここは敢えて後ろへ回り込んでみましょう。観音開きの自動ドアの先に延びるのは、なんとエスカレーター。
そして、入り口を飛び越えていきなりのソファエリアという、1980年代を代表する刑事ドラマ「あぶない刑事」のタカ&ユージ顔負けのハードボイルドな演出で入場すると、花のデコレーションに水槽に……。ギンギンギラギラド派手な空間が待ち構えます。
「カフェ・ド・巴里」でまず食べてほしいのがサンドイッチ。モーニングセット(6:00~14:00)は、珈琲or紅茶、アイスも付いて680円(税込)とお得。
パソコンやスマホではなく、経済新聞を広げながらモーニングを食す男性。まさしくダンディ。
隣には池袋演芸場があり、有名な落語家さんも常連客としてよく来られるそうです。
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営業時間
7:00~23:30
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利用金額
モーニングセット630円(税込)~
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TEL・予約
03-3982-3533
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URL
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伯爵気分に浸れる24時間営業の喫茶店~池袋~
珈琲専門館 伯爵 池袋北口店
「カフェ・ド・巴里」から50mのところに位置するのが、姉妹店「伯爵」。店内には「巴里」に負けず劣らずの豪華な装飾がなされ、その名の通り “伯爵気分” に浸ることができます。
インベーダーゲームやテトリスなどが入った懐かしのゲーム卓もあり、レトロ感満載。
ちなみに、喫茶には珍しく24時間営業。池袋で終電を逃した際は、漫画喫茶ではなく伯爵で朝まで過ごしてみてはいかがでしょうか。
「伯爵」は池袋北口のほかにも池袋東口店、巣鴨店と3店舗あり、それぞれ内装も違います。この界隈を訪れた際は、お気に入りの「伯爵」を見つけてみましょう。
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営業時間
24時間営業
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利用金額
伯爵ブレンド 550円(税込)
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TEL・予約
03-3988-4997
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URL
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圧巻のステンドグラスのもといただく名物パフェ~新宿~
珈琲西武
人間交差点・新宿からは「珈琲西武」。ここの名物は2つあり、まず目を奪われるのが、天井を縦に貫く美しいステンドグラス。
そして、もはや「西武」の代名詞ともいえるのがこのパフェ。
もりもりの生クリームに、職人技の飾り切りが施されたフルーツが山ほど。さらにコーンアイスが丸々一個突き刺さった圧巻のボリュームは、顔の大きさとほぼ同じ。これで1,100円(税込)とは驚きです。男性客のなかにも、パフェ目当てで通うファンの方は多いとか。
力強さだけではない、一言であらわせない絶妙のニュアンスにダンディズムは宿るもの。優しさも兼ね備えた本物の男には、甘いパフェもよく似合うのです。
店内には無線LANが飛んでおり、個室喫茶室・会議室の貸し出しも有。
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営業時間
【2F】全日7:30~23:30(日・祝~23:00)/【3F】月~金12:00~23:30 土日祝 11:00~23:30(日・祝~23:00)
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利用金額
フルーツパフェ1,100円(税込)
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TEL・予約
03-3354-1441
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URL
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階段をくだった先に待つは、中世ヨーロッパの荘厳な地下宮殿~上野~
高級喫茶 古城
下町情緒の残る上野は、喫茶店発祥の地としても知られます。そんな上野からは、3店舗をご紹介。
まずは、昭和38年創業の「古城」。
皇帝と貴婦人のステンドグラスが見守る階段をくだった地下に広がるのは、モダンボーイだったという先代の趣向が随所に施されたヨーロピアンな空間。壁や間仕切りには本物の大理石が用いられ、ステンドグラスや調度品も、1ドル=360円の時代に輸入されたという貴重なものばかり。
映画やドラマなどの撮影に使われることも多く、最近では『まぼろしの邪馬台国』や『特命係長 只野仁』などのロケ地としても話題になりました。
地下にも関わらず電波良好。店内には、訪れた有名人のサイン色紙がたくさん飾られています。
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営業時間
8:30~21:00 定休日:日曜・祝
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利用金額
ブレンドコーヒー490円(税込)
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TEL・予約
03-3832-5675
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URL
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ギラギラの電飾が目を誘う 元気いっぱいのキャバレー風喫茶~上野~
コーヒーショップ ギャラン
オーナーの愛車から拝命したという「ギャラン」は、至るところに散りばめられた白熱色の電飾が目を誘う明度の高い喫茶。
窓からは上野駅前商店街通りが一望でき、昭和歌謡をBGMに珈琲を啜れば、行き交う人々の人生模様が垣間見られます。
そして注目してほしいのが、ウェイター&ウェイトレスさんのユニフォーム。
黄色いシャツに、赤と黒のタータンチェックのベストというスタイルは、創業当時のまま。
喫茶以上にキャバレーという言葉が似合うような、今にも店中の人が踊りだしそうな、下町元気ムードたっぷりの社交場です。
昼は大きな窓からの光も明るく、店内は比較的賑やか。
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営業時間
8:00~23:00 年中無休
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利用金額
ブレンドコーヒー600円(税込)
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TEL・予約
03-3836-2756
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URL
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時間の止まったザ・昭和の純喫茶~上野~
丘
ギャランから御徒町のほうに歩くと、角に見えてくるのが懐かしい書体で書かれた「丘」の看板。地下にありながらも店名が「丘」なのは、かつて御茶の水にあった別の「丘」という喫茶店からきているのだとか。
そして、ここの名物といえば、地下1階から地下2階の吹き抜けにかけて鎮座まします巨大シャンデリア。まるで高級ホテルのようなため息もののゴージャスさに、つい時間を忘れて見とれてしまいます。
薄暗い照明に所々ほつれたソファも味わい深く、マスターが愛するジョージ・ベンソンの心地よいジャズが響く店内では、酸いも甘いも噛み分けた大人たちがゆっくりと煙草をくゆらせます。
喫茶店の定番・ナポリタンも、丘では2.2㎜の太麺を使ったもちもちの仕上がり。
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営業時間
火~土 9:00~18:00/土日祝 10:00~18:00/月曜定休
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利用金額
ナポリタンセット(珈琲 or 紅茶付)830円(税込)
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TEL・予約
03-3835-4401
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URL
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周辺住民憩いの超大箱喫茶~北千住~
サンローゼ
北千住駅東口目の前にあるのが、250席もの座席数を抱える超大箱喫茶「サンローゼ」。
中央には、5~6年前まで噴水だったという立派な柱を囲んだ円卓もあり、とにかく広いので、入って座れないことはまずありません。食事メニューも豊富に取り揃えられており、喫茶店とファミレスのいいとこどりといった雰囲気。
Wi-Fiも完備なため、近所の電機大学の学生らが長時間作業したり、カルチャー教室帰りの団体さんが皆でお茶をしていくなど、北千住住民の憩いの場となっています。
近所には「金八先生」のオーニングでおなじみの荒川の土手も。
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営業時間
月~木・日 8:00~21:30/金土 8:00~22:30/元日のみ休業
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利用金額
手作りハンバーグ550円(ライス別)
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TEL・予約
03-3882-0434
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URL
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細い小径を抜け、隠れ喫茶に迷い込む~西新井~
喫茶&レストラン シルビア
こちらも148席という大箱のカフェ・レストラン「シルビア」。
駅から徒歩2分なのに、初心者にはなかなかたどり着けない迷路立地に、猫のような好奇心を掻き立てられます。
小径を抜けると、パチンコ店横の控えめな入り口からは想像できないくらい、なかはゴージャス。レジ周りに置かれた特注のステンドグラスや年代物のインテリアをはじめ、ふかふかのソファは肌触りのよい布張り。全体的に海老茶と白で統一されたシックな空間が広がります。
新聞やコミックも充実しているので、思わず隅っこに居着いてしまいそうな隠れ家然とした喫茶です。
▲秋のシルビア弁当1.100円(税込)※季節に応じて内容が替わります。
「SPEC」や「リーガル・ハイ」など数多くのドラマ撮影にも使われました。
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営業時間
9:00~21:00
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利用金額
シルビア弁当1,100円(税込)
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TEL・予約
03-3840-6111
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待ち合わせは古書街のジャングルで~神保町~
味の珈琲屋 さぼうる
メトロ神保町駅のすぐ裏にたたずむのは、懐かしい赤電話と古書街には少しミスマッチなトーテムポール。
そこかしこに組まれた小さな階段に、常連客が持ち寄ったという各地の民芸品がところ狭しと並べられた店内は、さながら熱帯雨林のジャングル。半地下のレンガ壁に描かれた60年分の恋人達の落書きが、歴史の長さを物語っています。
スペイン語で「sabor(味)」を意味する「さぼうる」のメニューはどれも秀逸ですが、なかでもオススメは「いちごの生ジュース」。注文を受けてからクラッシュするため、生のイチゴの甘酸っぱい風味がそのまま口いっぱいに広がります。お通しで付いてくるピーナッツは、昭和な雰囲気を盛り上げる名脇役。
土地柄か、打ち合わせ中の編集者と作家さんや読書をして過ごす学生の姿がちらほら。夜はバーとしても営業中です。
隣には、軽食がメインの喫茶「さぼうる2」が並んでいます。こちらのナポリタンもオススメ。
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営業時間
9:00~23:00 日曜定休
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利用金額
いちごの生ジュース500円(税込)
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TEL・予約
03-3291-8404
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坂の上にそびえるはこだわり溢れるクラシックの館~渋谷~
名曲喫茶ライオン
オシャレなカフェの集まる渋谷にも、知る人ぞ知る老舗喫茶があります。
道玄坂を上った裏手にある「ライオン」は、終日クラシックが響く名曲喫茶。まるで大聖堂のパイプオルガンを彷彿とさせる音響装置に、7,000枚を超えるレコードの数々。荘厳という言葉が似合う館内は、もちろん私語厳禁。
外観・内観共に、趣味人であった初代オーナーがデザインを担当。どこをとっても画になるこだわりの館では、珈琲片手に何時間でも美しい旋律に身を委ねることができます。
パソコンで作業したい人のためにと、無線ならぬ有線LANも用意されています。
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営業時間
11:00~22:30 正月・盆休み有
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利用金額
ホットコーヒー550円(税込)
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TEL・予約
03-3461-6858
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SEE YOU NEXT PLAN
最近では規制も厳しく、喫煙できる場所も限られてきました。健康面でも確かに影響があるのかもしれませんが、やはりダンディズムに煙草は不可欠。
カフェでひたすら珈琲と煙草を飲み続けるだけのオムニバス映画「Coffee and Cigarettes」(2003/米)で、登場人物が何気なく言い放った「珈琲と煙草はよく合う」という台詞。シンプルながらも奥行きを感じるのは、それがひとつの文化だから。
今回登場した10の喫茶を訪れた際は、ぜひ珈琲と煙草、そして店内を満たす独特の空気を味わってみてください。かっこよく、粋で見栄っ張りな、ダンディズムの香りがきっとあなたを待っています。
●モデル:ミリ子
【Twitter】http://twitter.com/miriaru0913
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