インタビュー:基礎的財政収支黒字は反故に=富士通総研・早川氏
[東京 27日 ロイター] - 富士通総研の早川英男エグゼクティブフェロー(元日銀理事)は、安倍晋三首相による消費税率の10%への引き上げ時期の延期について、その後に必要な15%への引き上げも難しくし、2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を黒字化する財政健全化目標を「反故」にする決断だったと指摘した。
さらに、日銀の黒田東彦総裁が国債の発行額全量を買い取る追加緩和を決めた直後に増税が延期されたため、日銀の「量的・質的緩和」による国債買い入れは、財政の穴埋め(マネタイゼーション)の色彩が強くなったとし、急激な円安や資本逃避の可能性も出てきたと警告した。
早川氏は、物価が2016年にも日銀の目指す目標の2%に近づく公算が大きいとみているが、財政健全化の取り組みが遅れる結果、日銀が金融緩和を縮小方向に転換する出口戦略は「いよいよ難しくなった」と警告。「(日銀は)追加緩和に踏み切らない」との見方を示した。
早川氏の主な発言は以下の通り
──アベノミクスをどう評価するか。
「第1の矢(金融政策)は、ギャンブル・実験の色彩があったが、第2の矢(財政政策)を一緒に発動することでデフレ脱却をほぼ実現した。その意味では大きな成果。理想的には第1と第2の矢でデフレ脱却を実現し、その後主役が第3の矢(成長戦略)に移ると第2の矢が方向転換し財政健全化に向かい、条件が整えば第1の矢は撤退、とイメージしていた」
「残念ながら物価は期待インフレ率の上昇ではなく、円安効果と人手不足など供給力低下による需給ギャップ縮小で上昇した。デフレ脱却しても成長力が上がらないことが明らかになり財政再建がますます難しくなった」
──金融緩和の早期縮小によるアベノミクス「勝ち逃げ論」を主張されているが。 続く...