製造業の生産拠点をコストの低い海外に移す「オフショアリング」。その先陣を切っていた米国のメーカーが、中国などの賃金上昇に伴うコスト増大をきっかけに、生産拠点を自国に戻す。そうした「リショアリング」の動きをいち早くリポートしたのが、米コンサルティング会社、ボストン コンサルティング グループ(BCG)の「メード・イン・アメリカ・アゲイン」という報告書だった。
この報告書を執筆した同社のシニアパートナー、ハロルド・サーキン氏が、主要輸出国25カ国の生産コストを2004年と2014年の2時点で比較する調査を実施。その結果、各国の生産コストは過去10年で大きく変化し、生産拠点は低コスト国への「集中」から「世界各地域への分散」が進むとするリポートをまとめた(詳細はこちら)。
実際にどのような変化が起きているのか。日本のメーカーはそれにどう対応すればいいのか。サーキン氏に見解を聞いた。
(聞き手は中野目純一)
世界の主要輸出国25カ国の生産コストを10年前と比較する調査を実施されました。その結果、調査対象の国を4つのパターンに分類できるとしています。それぞれのパターンの特徴を教えていただけますか。
サーキン:分かりました。第1のパターンは、「アンダープレッシャー(Under Pressure)」と我々が呼んでいるものです。このパターンに当たるのは、かつては生産コストの低かった中国、ポーランド、チェコ、ロシア、ブラジルなどです。これらの国々では、生産コストの急激な上昇が見られます。
例えばブラジルでの生産コストは、10年前に比べて25%以上も上昇しました。かつてはブラジルの生産コストは米国のそれを下回っていましたが、今は逆に上回っています。
第2のパターンは、「ルージング・グラウンド・カントリーズ(Losing Ground Countries)」です。10年前に既に生産コストが高かった国々で、生産性が向上しない一方でエネルギーコストが増大し、コスト競争力がさらに低下しています。オーストラリア、ベルギー、フランス、イタリア、スウェーデン、スイスが該当します。