アップル:ジョブズ亡き後はカリフォルニアという場所でブランディングする。
日本では個人のアパートや会社のオフィスを選ぶ時、ブランディングという観点から、知名度や高級感を考慮して選ぶことが多い。しかし、アップルのように人々の生活を劇的に変化させてきた企業にとっては、「場所」とは、自分たちの存在意義を示すほど重要なものと言えるでしょう。
アップルはジョブズ氏亡き後、自分たちの「アイデンティティ」を再認識する必要があったため、「Designed by Apple in California(アップルによってカリフォルニアでデザインされた。)」という広告を作りました。
↑アップルによって"カリフォルニア"でデザインされた。(Pic by markenberater)
これはカリフォルニアという場所で、人々の生活を劇的に変化させるものが数多く生まれてきたことと、自分たちのアイデンティティを掛け合わせたもので、CEOのティム・クック氏は「これが私たちのサインだ。」と述べ、地理的な場所を使って自分たちをブランディングし始めました。
実際、アップルはジョブズ氏亡き後、革命的な製品を作れておらず、韓国のサムスンに市場のシェアをどんどん奪われていますが、自分たちの地理的なルーツを語ることで、韓国のサムソンにはない大きな付加価値を作り出すことができています。
グローバリゼーションが加速し、モノやサービスが国境を越えてどんどん動いているなかで、価格や品質の違いが徐々に無くなりつつあり、「どこで作られた」という場所の重要性が高まっています。
↑モノやサービスはどこで作られたかに焦点が当たる。(Pic by Mshcdn)
ヨーロッパだけでも500個の地域、105,000個の小さなコミュニティーがあり、場所によって投資や資本、そして人材が大きく異ります。
さらに世界には、100万人を超えるコミュニティーが約300ほどあり、地域を主体とした競争がグローバルのスケールで静かに動き出しています。 Resonaceという旅行団体の代表を務めるChris Fair氏は次のように述べています。
「現在、人々は好きな時に好きな場所へ行ける。だから他の場所との明確な違いや特徴が投資や人々を引きつける上で重要になってくる。」
ここ数年革命的な製品を生み出せていないアップルですが、「カリフォルニアでデザインされた」というルーツを武器に新しくブランディングしていくことにより、アジアの市場を開拓しやすくなるのではないかと一部メディアでは報道されています。
↑明確な違いや特徴は投資や人々を引きつける。(Pic by Global Academic)
実際、日本でのiPhoneシェア率は他の製品に比べて圧倒的に高く、カリフォルニアの革新的なイメージに憧れるアジア人の心を捉えているのは紛れもない事実です。住まいやオフィスを選ぶ際に「高級感」や「しっかりした会社のイメージ」で選ぶとなると、単純に銀座や麻布などありきたりな場所になってしまいますが、アップルのように会社と場所のアイデンティティを一致させることで、本当の会社のビジョンが遺伝子に組み込めるかもしれません。