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 今、韓国で浮上する中立化論。近代アジア史が専門の岡本隆司・京都府立大学准教授は「朝鮮半島が大きく揺れる前、いつも中立化が語られた」と言う(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

済州島に中国空母

岡本:鈴置さんの近未来小説『朝鮮半島201Z年』が何やら本当になってきそうです。ことに韓国で語られ始めた「中立化」。肌寒い思いです。

鈴置:日本人なら誰しも「肌寒い」でしょう。小説の粗筋は北朝鮮の核武装を引き金に南北朝鮮が、それぞれ米国と中国の軍事同盟を打ち切って中立化する。しかし実態は北朝鮮も韓国も、裏でシナリオを描いた中国の勢力圏に入る……という話ですから。

中国海軍が韓国海軍を引き連れて日本に威嚇にやってくる、なんてくだりもこの小説にはあります。

鈴置:実際、韓国が建設中の済州島の軍港などは、中国海軍の母港になりかねません。中国が「米国の空母も入れるのなら、ウチの空母も問題ないだろう」と言えばもう、韓国は拒否できないでしょう。

太平洋戦争も起きなかった……

岡本隆司(おかもと・たかし)
京都府立大学文学部准教授。1965年京都市生まれ。神戸大学大学院文学研究科修士課程修了、京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(文学)。専門は近代アジア史。多言語の史料を駆使した精緻な考証で、現代の問題にもつながる新たな歴史像を解き明かす。主な著書に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会、1999年、大平正芳記念賞受賞)、『属国と自主のあいだ』(名古屋大学出版会、2004年、サントリー学芸賞受賞)、『馬建忠の中国近代』(京都大学学術出版会、2007年)、『世界のなかの日清韓関係史』(講談社選書メチエ、2008年)、『中国「反日」の源流』(講談社選書メチエ、2011年)、『李鴻章』(岩波新書、2011年)、『ラザフォード・オルコック』(ウェッジ選書、2012年)、『近代中国史』(ちくま新書、2013年)、『中国経済史』(名古屋大学出版会、2013年、編著)、『出使日記の時代』(名古屋大学出版会、2014年、共著)、『宗主権の世界史』(名古屋大学出版会、2014年、編著)などがある。(写真:鈴木愛子、以下同)

岡本:「朝鮮半島の中立化」に歴史家が反応するのは訳があります。19世紀末から、様々の思惑を持った様々の国によって、これが繰り返し主張されたからです。

 結局、1910年に朝鮮半島が日本に併合されたことにより、それは実現しませんでした。歴史に「もし」はありませんが、もし朝鮮半島が中立化していたら、日本の運命も大きく変わっていたでしょう。

 日清戦争や日露戦争は起きなかったかもしれない。そうすれば「満洲国」もなく、日中戦争も太平洋戦争もなかったかもしれないのです。今とは全く異なる東アジアが生まれていたのはほぼ、間違いないでしょう。

確かに、検討すべき「もし」ですね。

岡本:鈴置さんは「『フィンランドになりたい』と言い出した韓国」という記事で「中立化」を韓国人が主張し始めたと指摘しています。どれほど現実味のある話ですか。

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