[PR]

 小説家・谷崎潤一郎ゆかりの書店として知られる京都市左京区の春琴堂(しゅんきんどう)書店が今月、改装工事を終えて再スタートした。売り上げの減少から一時閉店を検討したが売り場面積を大幅に縮小して存続。店内には谷崎が記した「春琴書店」の書が飾られ、ファンらが訪れている。

 京都大の正門近くにある同書店の名は、谷崎の小説「春琴抄(しょう)」にちなんでいる。創業者は久保義治さんと妻・一枝さん(いずれも故人)。一枝さんは1930年代半ばから約5年間、現在の神戸市にあった谷崎家で奉公するなど、2人とも谷崎のもとで働いたことがあり、谷崎から送られた手紙が100通ほど残る。

 一枝さんは小説「細雪(ささめゆき)」に登場する「お春」のモデルともされる。細雪のお春は、旧家の4姉妹が「お春どん」と呼んで親しむお手伝いさんだ。

 店は終戦の数年後、現在地から少し離れた所で古書店として創業した。谷崎からは、京都市の下鴨神社近くに暮らした数年間を含め、1965年に79歳で死去する直前まで本の注文を受けていた。店の2階の事務所には、亡くなる1週間前の「昭和40年7月24日」の消印がある本の注文を受けたはがきが残る。