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「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方(後編)

今すぐ”使える部下”になる方法 「2つ上のランクの立場を考える」

今すぐ”使える部下”になる方法 「2つ上のランクの立場を考える」
・ジャパンのCEOなどを歴任した岩田松雄氏が、「君にまかせたい」と言われる部下になるための考え方を伝授しました。(ベストセラーズチャンネルより)

【前編】アルバイトにも手を抜くな! スタバ日本法人の元CEOが教える、採用の極意

【スピーカー】
元スターバックスコーヒージャパン株式会社CEO/リーダーシップコンサルティング代表 
株式会社パスメディア 代表取締役 

【動画もぜひご覧ください!】
「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方 岩田松雄 (著)

人事での失敗はマイナス面しか生まない

主藤孝司氏(以下、主藤):リーダーをテーマにした本ですので、いろんな場面で「責任はリーダーが取ると明言する」とか「思い切ってやる」「迷った時はやってみる」とありますけれども、実は1つだけ例外があって、それが今お話したところの「人事」である、と。

岩田松雄氏(以下、岩田):人事の鉄則は、もう迷ったら延期をするということですね。やめてもいいとも思います。やっぱり採用するのでも5人面接官がいて1人が「どうもあの人よくないよね」とか「面接をしていてちょっと引っかかるところがある」、こういう時は迷ったらやめておくということですね。もうちょっと様子を見ると言いますか、もう少し情報を取るとかですね。

やっぱり人事というのは1回やってしまうとなかなか元に戻せないんですね、なかなか日本の場合はステップダウンというか降格はできないし、クビにもできない。できるだけ慎重に慎重にということです。事業の場合は失敗してもそこから何か学べばプラスになりますけれども、人事の失敗は学ぶことは何もないですね。マイナスばっかりです。

主藤:リーダーになって初めて人を使う、人に対して大きな影響力を持つ立場になるわけですよね。いわゆるイケイケドンドンタイプのリーダーシップが多くの場面では良いと言われたり、勇ましい、ついて行きたいと思われる雰囲気を作るというところになると思うんですけれども。こと人事に関しては慎重にならなきゃいけない。

正反対の考えを持つという点が、初めてリーダーになった時に気をつけなければいけないことなのでしょうか?

岩田:正反対にと言うか、いろんなリーダーシップの型はあっていいと思います。例えば、戦争の時はイケイケドンドンっていうのは必要だと思いますよ、トップダウンで「狙い撃て」「突撃」場合によっては「死ね」という命令を下す。戦争状態の時はそういう強いリーダーシップが必要だと思いますね。

でも平時の時は、どちらかと言うとみんなで人を育てるというのもすごく大事な仕事ですから、みんなの意見を聞くということだと思うんですね。人事に関してはまた別の次元の話として、人を採用するとかそういうことに関しては慎重になりなさい、慎重には慎重を期しなさいということですね。

主藤:人事というカテゴリーについては、ちょっと他の分野の考え方とは違う趣向で臨むほうがいいと?

岩田:もし間違った時のリスクが非常に大きい。ゼロならまだいいですけど、人の失敗というのはマイナスになりますからね。

長期楽観・短期悲観の考え方が「運」をもたらす

主藤:この本の中で、人事のことが書いてある次のところには「いつでも何とかなるという感覚を持つ」というテーマがありますが、リーダーとしては「いつでも何とかなる」とか、プラス思考というのが根本的には必要なんですか?

岩田:「長期楽観・短期悲観」っていうのがいいと思うんですよね。長期的には「何とかなるだろう」という気持ちがあり、目の前のことはしっかりいろんなリスクを感じながら、慎重に慎重にという感じですかね。いろんなリスクを考えながら、まだまだという感覚でやる。でも長い目で見れば必ずこれは成功するんだ、成し遂げられるんだという感覚がリーダーには必要だと思うんですね。

またこれはリーダーというか個人的な生き方の上でもそうだと思いますけれども、「運」というのは、基本的には画一的にみんなに平等にあるはずだと思うんですね。だけど「自分は運がいい」と思った人は、結果的に運が良くなると思うんです。

「運が悪い」と思う人はポジティブになれない。いろんなチャンスがあっても、それを取れない。でも、運がいいと思うと「何とかなる」という気持ちを持てるわけですね。それで「やってみようか」「いつか今の努力が実を結ぶんだ」という気持ちになると思うんです。だから、運がいいか悪いかって誰もわからないけど、でも運がいいと思ったほうが絶対に得ですね。

ですから僕はそう思っているし、自分の中でもなんとなくこう……自分の「星」って言うんですかね? 今までもうダメだ、もうダメだっていう時に救いの手が出てきたり、人に助けられたりして何とかなったということがあるので、また次の努力を続けられるわけですよね。「またがんばろう」という気持ちが出てくるわけです。

だから自分の運、あるいは自分の可能性というのを絶対信じたほうがいいと思うんですよね。特に若い人なんかそうだと思いますね。

主藤:自分の可能性なり運を信じるというのは、リーダーという立場になればなるほど求められる考え方ですか?

岩田:そこは、リーダーだからリーダーじゃないから、っていうのはあまり関係ないと思っていて。2人でもリーダーになるわけだし、10万人でもリーダーになるわけだし、僕は1人でもリーダーシップは必要だと思っているから「リーダーだからこうしなくちゃいけない、ああしちゃいけない」というのはないと思います。

結局、ずっと本人が抱えている自分自身を治めることが大事なんですよ。それは別にリーダーであろうがリーダーでなかろうが一緒だし、部下の方でも結局自分を高めていくという努力は常にしないといけないと思うんですね。

リーダーが特別なものという雰囲気ってありますけれども、リーダーって特別じゃなくて「役割」なんですよ。だから本の中でも野球で例えていますけど、ピッチャーとキャッチャー、あるいはピッチャーとライトのどちらが偉いというのはなくて、野球にはみんな必要なんですよね。ひょっとしたらブルペンキャッチャーも必要かもしれない。

スターバックスで例えればCEOももちろん必要だけども、お店のスタッフももちろんいなければいけない。彼女たちが一生懸命心を込めて年間2億回コーヒーを出してくれているおかげで、1000億円という売り上げが成り立っているのであって。だからそこに上下関係はないと思うんですね。

CEOというポジション、それからお店というポジションを守っているだけだと。リーダーだからとかリーダーでないからというのは、僕はあんまり意識しないですね。

部下として「2つ上」のランクの立場を考えて行動する

主藤:たまたま本の切り口というかテーマがリーダーであったということですね。実はそのあとベストセラーの続編、今度は部下の立場からの本『「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方』を出版されています。これも、根本的にはリーダーであろうとリーダーでなかろうと部下であろうと、考え方は同じだよということですか?

岩田:そうですね。特に日産の時は部下の立場が多かったですから、その時の経験、もしくは自分がリーダーとしてこういう部下になってほしいなという気持ちを込めて書いたわけです。僕自身がいい部下だったかどうかっていうのは非常に疑問ではあるんですけどね(笑)。

主藤:リーダーをテーマにした本と、任せたいと言われる部下になるというテーマの本。それぞれを書くにあたって、いちばん注意した点というのはありますか?

岩田:リーダーの方は誰にでもなれるし、ならなくちゃいけないんだということ。部下の方は、部下の人も常にリーダーの立場に立って考えることですね。基本的に”2つ上”のランクの立場を考える。

例えば自分が係長だったら課長の上に部長がいますけれども、部長の立場になっていろいろ考えてみて課長に提案する。そうすると課長は部長に報告しやすいわけですね。部のレベルでいろいろ判断するわけですから。だから部下は上司の気持ちになること、「上司をマーケティングしなさい」と書いていますけれども、そういうことを考えてほしいなと思います。

両方に共通しているテーマは、「諦めたらおしまい」とか「自分の運を信じる」ということ。それから、人をどうこうと言う前に「自分をしっかり治める」ということですね。自分の徳を高めていくことがすごく大事だ、ということを言っているつもりではいます。

主藤:という風に考えると、リーダーになりたいから、あるいはリーダーだからこそ『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』、こちらのリーダーの本を読めばいいということではなく、両方を読んだほうがいいということですか?

岩田:ぜひセットで読んでいただきたいと思いますね。リーダーは部下の気持ちをわからないといけないし、部下もリーダーの気持ちをわからないといけないと思うので。上巻・下巻という感じですね。

主藤:今部下の人は、必ずいつかリーダーになるわけですよね。リーダーの人はリーダーの人で、部下の気持ちもわからなきゃいけないし……。

岩田:純粋にリーダーという人はいないんです。必ずそのまた上に上司がいるんですね。社長といえども株主という上司がいるわけですし。だからリーダーになったとしても、いつまで経っても部下なんですよ。常に両方セット、リーダーであり部下であるわけですね。

主藤:そういった株主さんも、どこかではたぶんリーダーがいるはずですからね。そこはもう、世の中の構図がぐるぐると……。

岩田:オーナー系の社長は別かもしれませんけれど、基本的には必ずみんな上司がいるわけですよね。

主藤:おそらくそこで「究極の上司はお客様だ」みたいな話も。

岩田:そういう話もあるかもしれないですね。

「自分ブランド」をどう積み上げるか

主藤:最後に、岩田さんだからこそお尋ねしたいのが、外資系の企業で社長を務められるということ、あるいは社長じゃなくても外資系企業の経営陣として活躍されることが多かったと思うんですけれども、これは何か意図的なことがあるんですか? それとも偶然ですか?

岩田:アトラスという企業は日本の企業ですけれども。これはもう単純に労働マーケットで、日本の大企業は基本的に中途採用を採らないわけですよね。ですから私みたいに日産をやめてしまった人間は、外資系、もしくはオーナー系、もしくは大企業の子会社の社長みたいな、そういうポジションしかないわけです。

外資系はいろいろ勉強にはなりました。いい面、悪い面、両方ありますよね。それは日本の企業もそうですけれども。

主藤:今グローバル化が叫ばれている中で、学生の方々が就職活動ではじめから外資系に就職するというのが当たり前になってきていて、転職でも外資系に転職するというのが当たり前になってきていますね。そういった中で、外資系で活躍しようと思っている若者に向けて、実際にご経験された岩田さんの立場から何かメッセージはありますか?

岩田:今はどんどん世の中が変わってきているので、例えば大企業に勤めることがむしろリスクが高くなってきていると思うんですね。大企業の場合は大きな中の歯車になってしまうから、例えば労働マーケットに出た時にあんまり役に立たないわけです。

僕はサラリーマンスキルという言い方をしていますけど、会社の中で役員を知っていますとか、コネクションを作っています、それは外に出れば役に立たない能力ですよね。外資系だからとか日本企業だからじゃなくて、今後は自分が包丁一本でこの世の中を渡って行くという気持ちにならないと、誰かに引っ張ってもらうとか、どこの大学を出たとか、そういうのはもう全然役に立たなくなってくる。

結局、自分自身がどれだけ実力を蓄えていくかというのがすごく大事になっているんですね。大企業にいたら安心、外資系だったらちょっと大変だみたいな考え方が……確かにちょっと大変だけれども、別に今は日本の企業だろうが外資系企業だろうが、全員、全サラリーマンが突きつけられていることだと思うんですよね。

あなたは個人でちゃんと……僕だったら「岩田ブランド」でちゃんとやっていけるんですか? というのを問われている時代なんだと思うんです。それはもう日本企業の方がもっとかもしれないですね。

主藤:グローバル化イコール、自分自身や個人が今まで以上に問われるということですか?

岩田:グローバル化という定義がよくわからないですし、僕自身はあまり好きな言葉じゃないんですけれども。グローバル化イコール英語が話せるとかですかね? もちろん英語はツールや手段であって目的じゃないと思うんですね。だけど沖縄に行った時には沖縄弁をしゃべったほうがもちろんいいわけですけど、通じますからね。

それと同じレベルの話であって、それは話せた方がいいに決まっていますけれども。本質的には「あなた誰なんですか?」「何ができるんですか?」ということを常に問われているんだと思いますね。外資系はよりそれが強いわけです。そういう人でないと、中途でもまず採用してもらえないですね。

「これからあなたにいろいろ教えてもらいます、勉強させてください」とは言えないですよね。新卒で入った時はもちろん白紙の状態ですから、それは会社がいろいろ教育してあげないといけないですけれども。

1回そこから労働マーケットに出て、自分で自分の履歴書を積み上げていって、自分の価値を高めていく場合、会社に依存するとか、先輩に依存するとか、あるいは過去の何とか大学を出ましたということは全然役に立たないんですね。自分自身の能力というか、固有名詞として「スターバックスの岩田です」ではなくて、岩田という人間が今後問われていくんだろうと思います。

主藤:なるほど。岩田さんだからこそのメッセージということで、多くの人に参考になったのではないかと思います。今日ご紹介した書籍は、『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』サンマーク出版より出版されております。著者の岩田松雄さんにお話をお伺いしました。岩田さん、今日はありがとうございました。

岩田:ありがとうございました。

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