有柄式銅剣の鋳型が初出土 福岡・須玖タカウタ遺跡 [福岡県]
福岡県春日市教育委員会は12日、同市須玖南の須玖タカウタ遺跡で、握り手のある「有柄式銅剣」の鋳型片が出土したと発表した。弥生時代中期前半(紀元前2世紀ごろ)の朝鮮半島系のものとみられる。有柄式銅剣の出土例は佐賀県・吉野ケ里遺跡など国内3カ所であるが、鋳型の出土は朝鮮半島も含めて初めて。専門家は「青銅器生産の実態を知る手掛かりとなる貴重な史料」としている。
同遺跡の近くには「奴国の王都」と推定される須玖遺跡群の中核、須玖岡本遺跡(国指定史跡)がある。これまでにも青銅器生産関連の遺物が出土していた。
今回見つかったのは剣の柄の部分の石製鋳型の一部(長さ13・2センチ、幅2・7センチ)。黒く変色した部分があり、実際に鋳造した可能性が高いとみられる。
ほかに銅戈(どうか)などを鋳造したとみられる土製鋳型の破片24点も見つかった。土製鋳型出土は九州では東小田峯遺跡(福岡県筑前町)に次いで2例目。今回の鋳型はそれより古く、同市教委は「日本最古級ではないか」としている。
今回の発掘現場に立ち会った柳田康雄元国学院大教授(歴史学)は「朝鮮系有柄式銅剣は、吉野ケ里の銅剣の祖型になったと思われる。周辺の王族クラスに供給するための工房が、既に紀元前2世紀ごろにはあったと推測される」と分析。
青銅器の鋳型に詳しい田尻義了九州大准教授(考古学)も「有柄式銅剣は出土例が少なく、日本で青銅器が作られ始めた時期の銅剣の鋳型が見つかったことは驚き。銅戈の土製鋳型も興味深い」と話している。
=2014/11/13付 西日本新聞朝刊=