欧州探査機が史上初すい星着陸へ11月12日 21時13分
ヨーロッパの宇宙機関が10年前に打ち上げた無人の探査機は、日本時間の13日未明にも世界で初めてとなるすい星、いわゆる「ほうき星」への着陸を試み、成功すれば太陽系や地球の起源を解明する弾みになることが期待されています。
ESA=ヨーロッパ宇宙機関が2004年に打ち上げた無人のすい星探査機「ロゼッタ」は、宇宙空間を10年余りかけて64億キロ飛行し、ことし8月、目標としていた「チュリュモフ・ゲラシメンコすい星」と同じ軌道に乗ることに成功しました。
その後は直径およそ4キロのこのすい星に寄り添って飛行を続けていますが、12日、直接すい星の表面で詳しい探査を行うための小型探査機を放ちました。
小型探査機は日本時間の13日未明にもすい星の表面に着陸する予定で、着陸に成功すれば世界で初めてとなります。
このすい星には、太陽系が誕生した46億年前の物質がそのまま残っていると考えられており、表面の物質を詳しく分析することができれば、すい星の成り立ちのほか、これまで証明されていなかった太陽系の起源、それに地球上の水や生命の起源を解明する有力な手がかりとなります。
“水や生物の起源”の解明期待
無人探査機「ロゼッタ」は2004年の3月、フランス領ギアナの発射場から打ち上げられました。
太陽からおよそ8億キロ離れ太陽光が地球上の4%しか届かない場所でも発電できる高性能の太陽電池を搭載し、接近したすい星の構造や成分について、詳細な遠隔測定を行うことができるのが特徴です。
またすい星を直接探査するためロゼッタから放たれる小型探査機は「フィラエ」と名付けられ、重さはおよそ100キロ。
高画質のカメラや高性能の測定器を搭載しているほか、ドリルを使ってすい星の表面を削り、成分を分析する機能も備えています。
すい星の探査は、これまでにもアメリカや日本の探査機が行っていますが、いずれもすい星の近くからの観測だけに終わっており、すい星の表面で直接探査を行うのは世界で初めてです。
探査によって解明が期待されているものの一つが地球上の水や生物の起源です。
すい星には地球上の海水と非常に近い成分を持った氷や生物の誕生に必要な物質が存在しているとされ、今回の探査によってそれが証明されれば、地球上の水や生物がすい星との衝突によって発生したことを裏付ける有力な手がかりとなります。
「ロゼッタ」が稼働できるのはおよそ12年間で、ESAによりますと、来年2015年の12月まですい星に寄り添うように飛行し、観測を続けることにしています。
「科学的期待とても大きい」
ESA=ヨーロッパ宇宙機関が世界初となるすい星への着陸を試みることについて、9年前、日本の探査機「はやぶさ」を小惑星に着陸させ世界で初めて小惑星の微粒子を地球に持ち帰ったJAXAの川口淳一郎教授は、「すい星の核に降りるのは長年の夢であり、人類が見たことのない世界なので、科学的な期待はとても大きい」と話しています。
一方で、すい星に着陸することの難しさについて、川口教授は、「はやぶさには高度や方向を調節する軌道制御手段があったが、ロゼッタの着陸機にはそれがないのでもっと難しい。すい星の表面は必ずしも平らではなく傾いているかもしれず、着陸の技術的な難易度は高いと思う」と話しています。