「The Economist」

中間選挙で共和党が勝利してもオバマケア修正は難しい

次期大統領選にらみ民主党支持者を敵には回せない

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2014年11月13日(木)

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 米国議会が嘲笑の的となっているのには多くの理由がある。財政政策はその最たるものだ。2010年に共和党が下院で過半数を得て以降、予算を巡って民主党上院議員やバラク・オバマ大統領との間で熾烈な攻防戦を繰り広げてきた。その揚句に、米国は債務のデフォルト寸前にまで追い詰められ、経済は「財政の崖」の瀬戸際まで迫り、ついには16日にわたって政府機能が一部閉鎖された。共和党が上下両院を制した今、こうした状況を改善できる可能性がある。

 最初の関門は間近に迫っている。連邦政府の機能のほとんどは12月11日まで、暫定的な「予算継続決議」に基づいて運営されている。同決議が延長されなければ、政府機能は再び閉鎖されることになる。前回の予算を巡るせめぎ合いの中で、共和党のイメージが著しく傷つけられたことを思えば、同党の指導者たちは同じ状況を再現することを望んではいないだろう。年末までは民主党が上院で過半数を握っているため、議会が予算決議を採択するとみられる4月までは少なくとも継続予算決議が延長されるよう、民主党との妥協点を見出したいと考えるはずだ。

共和党は簡単にはオバマケアの見直しができない

 予算決議は政府の歳出や歳入について大まかな指針を定めるものだ。2010年以降、議会はこれを成立させることができずにいる。そんな事態となった最大の理由は、下院で過半数を制する共和党と上院で過半数を握る民主党の基本理念が、あまりにもかけ離れていたことにある。共和党が上下両院を掌握すれば、重要な委員会に対して、税制やオバマケア、メディケア(高齢者向け公的医療保険制度)に関わる法の見直しを指示することができる。この過程を調停と呼び、予算決議の内容が見直し指示の方針となる。

 こうした見直しが財政赤字の削減につながる限り、修正案は少数派となった上院民主党からフィリバスター(審議を引き延ばして採決を阻止する行為)を受けることはない。フィリバスターを避けるためには通常60票が必要だが、今回は51票の賛成だけでよいからだ。ただし、オバマ大統領は依然として拒否権を発動することはできる。

 共和党は、調停を利用して、積年の目標である税制改革やオバマケアの廃案、メディケアの見直しを進めたいところだろう。しかしながら現実的な理由により、共和党は敢えてそうした行動には出ないこともあり得る。まず、オバマ大統領は、その種の大規模な変更には拒否権を発動するだろう。加えて、共和党の上院議員の多くは、何らの見返りもないままに大胆な改革案を打ち出して、政治的に高い代償を支払うリスクを冒したいとは思っていない。彼らは2016年、民主党が優勢となっている州で再選をかけて出馬することになるからだ。

 かつて共和党の上院議員を務めたジャド・グレッグ氏は「メディケアの支出削減につながると見なされることには何であれ、誰も手をつけようとしない」と語る。グレッグ氏は、かつてメディケア支出の削減に向けて努力した経緯がある。したがって、共和党の指導者たちは、医療機器への課税をはじめとする不人気な政策を廃止するといった、より穏健な目標を模索すると考えられる。そのような穏やかな政策なら、若干の民主党員の賛成票を獲得できるうえ、オバマ大統領の拒否権も回避できるかもしれない。


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