スマホの川流れ
毎月第1~4火曜日ごろ更新
なぜ彼らはパクるのか? パクツイ常習犯が語るTwitterの闇
スマートフォンを使って、さまざまな実験を行うこの企画。第51回は、ツイート内容をパクリ続けるアカウントに突撃取材して「なぜパクるのか?」という疑問をぶつけます。
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Twitterでのつぶやき内容(ツイート)をそっくりそのままコピーする(パクる)行為をパクりツイート、略して「パクツイ」というわけです。
たとえば、このツイートを見てください。
セブ山「『雪がすごい!』と言って自宅の窓から見える風景をTwitterにアップしてくれているおかげで、またあなたを特定する材料が増えました。ありがとう。」
これは、僕自身がTwitterの危険性を啓発するために皮肉を込めてつぶやいたツイートです。
そして、こちらをご覧ください。
※アカウント名の箇所は画像処理しています。
*****「『雪がすごい!』と言って自宅の窓から見える風景をTwitterにアップしてくれているおかげで、またあなたを特定する材料が増えました。ありがとう。」
まったく同じ文言を私とは違う第三者が、あたかも自分の発言かのようにツイート......。これが、パクツイです。
彼らはなぜパクるのか? なんのためにパクるのか? その真意を探るため、私は彼らに下記のようなリプライを飛ばしてみました。
※アカウント名の箇所は画像処理しています。
セブ山「@***** このツイート、すごく面白いですね♪ 笑っちゃいましたwww」
「このツイート」とは、パクツイのこと。Twitterの「会話を表示」機能を使えば、どのツイートのことをいっているのか、わかるように設定されています。
パクツイを日常的に行っていると思われるアカウント20人に送ってみた結果が、下記の通りです。
<パクツイ常習犯20人に「おもしろいですね」とリプライを飛ばしたときの反応>
無反応―17人
ありがとうございます!―3人
(セブ山調べ)
驚くべきことに、誰も「すみません、それパクツイなんです」と本当のことを返してくれませんでした。
それどころか、「(私のツイートを褒めてくれて)ありがとうございます!」と返信してきたアカウントが3人もいたのです。
「パクツイの何がいけないのか?」と問われた際、最初にあげられるのは、こうした他者の手柄を自分のものにしようとする行為といえます。
おそらく、無反応だった17人にも「こいつ、俺が考えたツイートだと思い込んでいるな。わざわざ訂正するのも面倒だし無視して自分の手柄にしよう」という心理が働いたのだと推測できるでしょう。
「たかがTwitter上でのつぶやきじゃないか」とあなたは笑うかもしれないが、もし、これが大きな利益を生む大発明の特許だったら......。はたしてあなたは、正気でいられるでしょうか?
事件の大きさではなく、この「他者の手柄を自分のものにしようとする行為」は、決して許されていいものではないと私は思います。
では、彼らはなぜそんな愚かな行為を繰り返すのでしょうか?
その真意を知りたい私は「ありがとうございます!」と返信してきた3名に下記のようなリプライを飛ばしてみました。
セブ山のツイート「@***** 面白いツイートをされていたのでついつい反応しちゃいました!w 今、面白い人に取材をする企画を動かしているのですが、今度、インタビューさせていただけませんか?」
もちろん、嘘。ただし、「インタビューをさせてほしい」という部分は本当です。
つまり、パクツイ常習犯本人に直接「なぜパクるのか?」という疑問をぶつけてみる作戦をとったのです。
すると、そのうちの1人からこんな反応が。
パクツイ常習犯のツイート「@sebuyama マジですか!? 僕でいいんですか!? なんか嬉しいです!! ぜひよろしくお願いします!」
彼からの返信は、悪びれる様子もなく、自己の承認欲求にまみれたものでした。
騙してしまっているのは心苦しかったのですが、彼とはTwitterのダイレクトメッセージ機能でやりとりをして、インタビューする日を決定。
「じつは、あれ、パクツイなんです」という言葉を最後まで期待したのですが、結局そのセリフは聞けないまま、約束の日を迎えたのです......。
約束の日、とあるデパートの前で待ち合わせ。
はたして、彼は来てくれるのだろうか? と不安を抱きながら待つこと数分。突然、後ろから声をかけられました。
「あの、セブ山さんですか?」
そこには感じのいい学生風の男性が1人。どこにでもいるような普通の男性でした。
「パクツイをするようなやつは、根暗で不気味なやつだ」とイメージしていましたが、それとは正反対の笑顔が素敵な好青年。彼がパクツイ常習犯とは......にわかに信じ難い......。
セブ山「あ、はい、そうです、セブ山です」
パクツイ常習犯「Twitterでリプライをもらった*****です。はじめまして!」
どうやら、本当に彼がパクツイ常習犯のよう。驚きを隠しながら、笑顔で受け答えを続けます。
セブ山「はじめまして。お休みの日なのに、わざわざ来ていただいてすみません! ありがとうございます!」
パクツイ常習犯「いえいえ! 僕も取材されるなんて初めてなので、今日はワクワクしながら来ました!」
セブ山「そう言っていただけると、助かります! それでは、喫茶店に移動してお茶でも飲みながらインタビューさせてください」
パクツイ常習犯「はい!」
近くの喫茶店に移動して、いよいよインタビューを開始。だがその前に、彼へきちんと謝っておかないといけないことがあります。今回の「おもしろい人インタビュー」は嘘だということです。
セブ山「インタビューを始める前に、まずは謝らないといけないことがあります」
パクツイ常習犯「え、なんですか!?」
セブ山「今回のインタビューって、"おもしろい人インタビュー"だと思っていましたか?」
パクツイ常習犯「え、まあ、はい、そう聞いていたので......」
セブ山「じつは違うんですよ。騙し討ちするようなマネをしてしまって、ごめんなさい」
パクツイ常習犯「え、どういうことですか? まだ、ちょっとよくわかんないんですが......」
セブ山「最初に、僕が"おもしろいですね"とリプライを送ったツイートがありますよね? 覚えていますか?」
パクツイ常習犯「はい、覚えています」
セブ山「あれって、パクツイですよね」
パクツイ常習犯「......」
セブ山「......」
パクツイ常習犯「......そうです」
セブ山「ですよね。なので、今回のインタビューは、"おもしろい人"としてではなく、"パクツイ常習犯"としてインタビューさせてください」
パクツイ常習犯「え、マジっすか......」
その後、彼をなんとか説得し、絶対に個人を特定できるような表現はしないと約束して、"パクツイ常習犯"としてのインタビューに応じていただきました。
以下は、そのときのインタビューをまとめたものです。
―まず、最初にあなたがどんな人物なのか、可能な範囲で教えてください。
「はい、僕はシステムエンジニアの専門学校に通っている学生です。20代前半の男です。えっと、こんなところで大丈夫でしょうか......?」
―ありがとうございます。それでは、さっそくパクツイについてお聞きしたいんですが、僕があなたのパクツイに対して"おもしろいですね"とリプライを飛ばしたとき、どう思いましたか?
「実は、以前にセブ山さんの記事を読んだことがあって、"この人、おもしろいな"って思っていたんです。だから、自分がおもしろいなと思っている人から"あなた、おもしろいですね"とリプライがきて、単純にうれしかったので反応しました。普段は、パクツイに対してリプライがきても、無視しています」
―パクツイでも褒められると、うれしいものなんですか?
「もちろん、罪悪感はあります。でも、それより先に"認められた"という気持ちが勝って、"ありがとうございます"と返信してしまいました。オリジナルのツイートでもないのに、認められたと感じるのもおかしな話ですが......」
―どうして"それはパクツイです"と正直に言わなかったんですか?
「そもそも僕のつぶやきはパクツイだらけなので、いつ正直に言おうかとは悩んでいました。悩みはしたんですが、それよりもセブ山さんに会ってみたかったので、正直に話して嫌われてしまうのが怖く、黙っていました......。指摘されなければ、このままずっと黙っていようと思っていました......」
―そんな罪悪感があるなら、どうしてパクツイをやるんですか?
「なんというか、コミュニケーションの一環としてやっています。今、僕がフォローしている人の大半は、パクリツイッタラー(パクツイばかりするアカウントのこと)で、そのひとたちと、お互いのツイートをパクリ合って、楽しんでいます」
―お互いのツイートをパクって楽しむって、どういうことですか?
「パクられるよろこびといいますか、自分が選別してパクったツイートを、フォロワーさんが、さらにパクっている姿がうれしいんです。"俺の眼に狂いはなかったぞ!"っていう感じで。それにパクられたら、経験値も貯まりますし」
―経験値? 経験値が貯まるってどういう意味ですか?
「じつは、ツイートをパクるためのアプリがあるんです。『Shooting Star』っていうんですが、ボタンひとつで手軽にツイートをパクることができます。このアプリを使ってツイートすると、ふぉぼられた数だけ経験値がつくんです。その経験値を溜めれば溜めるほど、課金しなくても、どんどんいろんな機能が使えるようになっていくんです。だから、RPGで勇者のレベルをあげるように、ゲーム感覚で他人のツイートをパクっています」
現在、「Shooting Star」はGoogle Play上で公開されていません。公式サイトもこのような状態
―そんなアプリがあるなんて、知りませんでした!
「ほかにも、iPhoneであれば『The World』とか、探せばいくらでもパクツイ専用のアプリはありますよ」
パクツイとリツイート、ふぁぼを同時に行う機能が付いたiOSアプリ「The World」(※ふぁぼる=お気に入りをつける)
―パクリツイッタラーは、そういうアプリをいつも使っているんですか?
「たぶん、そうだと思います。そういうツールを駆使して、誰よりもはやくおもしろいツイートを見つけるのを競い合っています」
―でも、それなら、リツイートでよくないですか?
「う~ん。でも、リツイートよりも、そのアカウントがつぶやいたほうが説得力があるつぶやきってありませんか? 同じツイートでも、おじさんが言っているのと、若い女の子が言っているのでは、おもしろさが変わったりするじゃないですか。そんな感じで、"僕のアカウントでつぶやくからおもしろい"みたいな感覚です」
―言いたいことは何となくわかりますが、だからといってパクツイが許されるわけではないですよね。
「まあ、そうなんですが、そもそも僕はネタクラスタ(ネタ系のツイートが中心の人たちのこと)はフォローしていないんです。つまり、何が言いたいのかというと、タイムラインからパクったとしても、パクリのパクリをパクっているわけです。だから、"元ネタを知らないから、いいじゃないか""みんながやっているからいいじゃないか"と言い訳しながら、ズルズルと続けています」
―そもそも、パクツイをはじめたきっかけは何なんですか?
「最初は、友だちの何気ないつぶやきを"かぶせボケ"の意味で、パクっていました。それに対して友だちから"ちょwwwwパクるなしwwwwww"という返信があったりして、それを見てゲラゲラ笑う、という他愛もない友だち同士でのパクリ合いが始まりだったような気がします」
―そこから、どうして見境なくパクるパクリモンスターに変貌していったんですか?
「いつのころからか、パクっているうちにだんだん見ず知らずの人にも、そのパクツイがリツイートされていることに気付いたんです。そして、じわじわフォロワーも増えていって......」
―そこからだんだんと、"フォロワーを増やしたい"という欲求に支配されるようになっていったというわけですね。
「はい......。いつの間にかぽんぽんパクっていました。最初はがんばっても400人くらいだったんですが、二か月で2000人にまで増えて、その後は加速度的に増えていきました。今でも、1日100人くらい増えています」
―パクツイを辞めようと思ったことはないんですか?
「あります。いつも思っています。辞めてその時間をほかの有意義なことに使いたいです。でも、パクツイには、中毒性があって......。タイムラインを見ていて、おもしろいツイートを見つけたら、ついついやってしまいます。それが、2000RTされたりなんかすると、ドーパミンがドバドバと分泌されているのがわかるくらいの興奮が! ネタツイートの作者じゃないけど、うれしいんです。一度味わうとやめられません」
―恐ろしい。なんだか、まるで、麻薬みたいですね......。でも、そんなにばんばんパクっていたら、ネタ元のアカウントに見つかって怒られたりしないんですか?
「あります。一度、すごい人に目をつけられて、アカウントを8000個くらい大量生産されて、24時間ずっとリプライを飛ばされ続けました。そうなると、どのTwitterクライアントを立ち上げても数秒で強制終了してしまうんです」
―えぇっ!? アカウントを8000個!? それだけたくさん作るほうも大変なんじゃないですか!?
「そのかたは、アカウントを大量につくるツールを自作したらしいです。だから、そこまで手間ではなかったと思いますが、そんなツールを作るくらい怒っていたってことですよね。申し訳ない......」
―そんな怖い思いをしても、パクツイを辞めなかったんですか?
「......そうですね、懲りずにまたやってしまいました。へへっ」
―やっぱり、麻薬と一緒だわ......。でも、一応、元ネタの人には悪いという意識はあるんですね。
「もちろんあります。なので、"パクるな"というリプライが来たら、消すようにしています。でも、今となってはタイムラインは、ほとんどがパクリツイッタラーばかりで、自分も負けずにパクツイをしたいので、いちいち構っていられないというのも本音です。パクツイッタラーが元ネタなら、それはパクられても仕方がないと思うし」
―う~ん、「自分も負けずにパクツイしたい」というパクリツイッタラーの心理はいまいち理解できません......。パクリツイッタラーとは不思議な生き物なんですね。
「あ、でも、パクるマナーとして、"ネタ元のツイートはふぁぼる"というのは守っていますよ!」
―パクツイに、そんなルールがあるんですね。だから、なんだよという話ですが。
「......すみません、そうですよね」
―パクツイ以外で承認欲求を満たそうとは思わないんですか? たとえば、あなたはシステムエンジニアになるための学校に通っているんだから、画期的なサービスをつくって認められようとしたりとか。
「じつは、ほとんど1年目の基礎知識を勉強できていないんです......。ちょうど、パクツイにハマり出した時期だったので、学校、パクツイ、バイト、学校、パクツイ、バイトの繰り返しの生活だったため、ロクに勉強できていません......。だから、僕にはパクツイしかないんです!」
―あなたの生活サイクルには、学校とバイトに並んでパクツイがあるんですね。でも、システムエンジニアを目指しているのなら、「ものづくり」を生業にしようとする者として、パクるという行為はいかがなものかと思いますよ。
「エンジニアとして他人の技術やアイデアをパクろうとは思いません! でも、パクツイするようなやつは、何をやってもパクリなんじゃないかと非難されるのはわかっているので、僕がパクツイ常習犯だという事実は墓場まで持っていくつもりです」
―そうですか。私はあなたが一日でもはやくパクツイが辞められるように願っています。本日はインタビューにお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。
インタビューは以上です。
【取材後記】
今回扱ったテーマは「パクツイ」という非常に狭いジャンルの話でした。
しかし、インタビューを通して聞こえてきたのは、現代社会の裏に潜む、若者たちの「誰かに認めてもらいたい! でも、どうしたらいいのかわからない!」という叫び声でした。
格差が広がり、明日に希望も持てずにいる若者たちは、もがき苦しみながら必死に突破口を探しています。
パクツイ常習犯が、すがりつくような目で叫んだ「僕にはパクツイしかないんです!」という言葉が、とても印象的でした。
今回の場合は、たまたまそれが「パクツイ」だっただけであり、社会に注目されたいと願う彼らは、ほかの行動に出ていた可能性もあるのです。
もしかすると、彼らは閉塞的な社会が生んだ悲しい存在なのかもしれません......。
(おわり)
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2013年6月 4日
よりぬき「スマホの川流れ」
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