中越地震10年:優太さん12歳 夢追い、柔道に夢中
毎日新聞 2014年10月09日 07時30分(最終更新 10月09日 10時52分)
新潟県中越地震から今月23日で10年。同県長岡市の県道で崩壊した土砂に車ごと生き埋めになりながら、奇跡的に助け出された2歳の男の子は、柔道に夢中な中学1年生に成長した。毎日新聞の取材に「元気で過ごしていることを皆さんに知らせてほしい。早く大きくなって、人の命を守る仕事をしたい」と語った。
地震発生の4日後に救出された皆川優太さん(12)。現在は同県魚沼市の自宅で祖父敏雄さん(78)、祖母ミハルさん(76)と3人で暮らす。この1年で20センチ近く身長が伸び、170センチ余と同級生より頭一つ大きい。敏雄さんの勧めで小学校低学年から柔道を始め、今年6月の市大会で学年の部門別1位になった。「家ではテレビが好きで、勉強はなかなか始まらないけどね」とミハルさん。
車に同乗して亡くなった母貴子さん(当時39歳)と姉真優ちゃん(同3歳)の記憶は残っていない。「ただ、暗い中で、かすかに誰かの声が聞こえていたこと、病院で食べた黄色いスイカがおいしかったことは今でも覚えている」と話す。現場を訪れ、「なぜ自分だけ助かったのか」と考えたこともあるという。
自宅には多くの励ましの手紙が寄せられ、優太さんの心を支えてくれた。「優太君へ はやくげんきになってね アンパンマンがついてるよ」。その中でも特に、アンパンマンが描かれたやなせたかしさんの色紙は物心ついた頃からの宝物だ。
今年8月には、母と姉の墓前で「今はまだ頼りないけど、早く大きくなって安心させるから」と誓った。将来の夢は「自衛隊や消防など人の命を助ける仕事がしたい。自分が助けてもらったから、自分も人を守りたい」。
10年前のあの日、余震が続く中、3人を捜して歩き回った敏雄さんは「優太は生きる希望だった。レスキュー隊が救ってくれたのは、優太だけじゃない。私たちの命も救ってくれた」と語った。【柳沢亮】
◇中越地震
2004年10月23日午後5時56分、新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生。68人が死亡、4795人が重軽傷を負った。約92時間後の同27日午後には、約50万立方メートルの土砂が崩落した同県長岡市妙見町の県道で、生き埋めになったワゴン車から皆川優太さんが救出された。