正直に告白すると僕はかなり楽しみにしてたが、案の定水あさとマンガの良さが伝わらないどぎついアニメに仕上がって「やっぱり、水あさとさんはマンガで楽しむべき」という結論・感想に達した。
そこで、アニメでげんなりした人のために原作と比較して何がダメだったかを解説する。
8割方の話は踏襲してるので「原作レイプ」ではない。でも、省く部分を間違えてる上に、省いた箇所に付け足したものがひどかったりして私がサブタイトルのように
「水あさと作品の魅力ってのはな!!そうじゃないんだよ!」
と一人、本棚から水あさと作品を取り出て検証するのだった。
簡単なあらすじ
「うまのほね」という電気街にある本屋で働く人達の物語。
ギャグっぽいイベントからシリアスな恋路まで色んな話が散りばめられていて、1話毎にギャグマンガとしてきれいに関係つしつつ、読み進めると連なったラブコメとしての側面も帯びる。
作者はコミティアなどでもオリジナル同人誌を配布してる水あさとさん。作者が同人作家でもあることから同人作家のキャラが出たり、同人誌仕様の初回特典が単行本につくなど、全面的にそのカラーが作品の内外に反映されてる。
水あさと作品を語る上で大事な3つの特徴
確かに特徴が多いマンガ家さんである。
パロディーが多いとか、泣き顔がハウル以降のジブリっぽい涙が出ててかわいいとか、ネタを詰め込んでいてハチャメチャ…とか色んな事が言えると思うし、感想を問えば十人十色の感想が出て来るような攻め方をしてる。
しかし、パロディが多かったり、ドタバタしてる作品の本質は意外にも、セリフのないコマや普通のシーンにこそあるものだ。
その3つの特徴は
1、まとまりの良さ…要点が明確で、構成が要点に忠実。
2、謎の説得力…作品のテンポやテンションを緻密にコントロールすることで、無理ありげな設定やセリフを読ませるテクニックを持つ。
3、緩急を使い分ける作風…ギャグや小ネタによって細かく緩急をつけて盛り上がりを作ったり、中だるみさせずに山場まで誘導するテクニックを持つ
1は文章にも使える大事なテクニック。
高校生ぐらいの時に長文を読んで「要約しなさい」という問題を国語や英語で見たことあるように、まともな文には「要点」が存在する。
水あさと作品の場合、その「要点」が始めの2ページとオチを挟む前のページできれいに繋がる。さらに、作品の大きなギャグも要点にちなんだギャグであることも。
例えば、ほぼ省かれてしまった原作1話。夜遅くに泊まりこみで仕事をしてる話で始まり、徹夜にまつわるギャグが見せ場で、オチは寝落ちるシーン。
Aパートで放送された「成人向け作品に関する話」も、ひなちゃんが成人向けの場所を聞かれてテンパるシーンから始まって、終わりに役所の人とのあの会話で終わる。
2つ目は無理ありげな設定(極度にドジっ子な店員、ソムリエさんなどなど)やオチにも感情移入させるための説得力が作品にあること。
良くも悪くもアクが強い設定をしてくるのが水あさと作品の特徴の1つだが、そのアクの強さを利用した話を作る・変わり種のようでいて普通の人と共通する部分の感情やあるある・考えを挟むことで説得力を帯びさせるようにしている。
アクがあって変なキャラは原作の場合、変さは読み進めることでわかるように構成され、アニメのアバンのように悪い意味で先入観を持たせる書き方はしない。
Aパートのはじめの方から原作では小ネタでしかなかったエヴァネタを長めに挟んでたが…アレこそ水あさと作品の構成力を活かすなら省いて良いシーンなわけでして…。
3つ目の「緩急を使い分ける作風」にも繋がるが、シリアスをぶち壊さない程度の小ネタ・読む人のテンションを少しづつ上げるためのパロディなどを挟むところがよく考えられている原作を読むと「水あさと作品はこんなに闇雲なギャグの入れ方をしない!」という感想。
ハチャメチャに見えて話をわかりやすく・簡潔に要約できる(だからブレない)。
それでいて、中だるみしないように中盤を小ネタや高めのテンションでつなぎ、見せ所の大きなギャグやいい話の時には高めのテンションで多少オーバーな話でも読み手に説得力を感じさせるように…とても緻密にできているマンガなんだ。
でも、アニメを見た人には全然それが伝わらない!
アレじゃ5分アニメ顔負けのハチャメチャさ・萌えアニメのできそこないみたいなバランスで解釈されかねない!
萌え絵の絵柄っぽいが、萌え絵よりも表情豊かに描けたり、それだけシナリオにもネタにも幅を利かせてるからあのマンガは面白いの!ハイテンションなギャグとツッコミの一辺倒でノリだけでゴリ押ししたら、下手な萌えアニメと変わらないよ。
特に頭にきてるのはアバンのアレなに?大幅な改悪だよね?
原作者のプロローグ2ページはいつも話を要約するのに大事なページを挟む大事な部分を書いてくるし、はじめの1話だってそう作ってある。
それをごっそりそのまま引用したほうが作品の立ち位置がわかりやすかったのに、ああいうたわけた感じにしたから「オタクに媚びたカジュアルなギャグマンガです」と言ってるようにしか見えない書き方になる。
脈絡の無さや、上滑りしてるのは構成だけではない
不必要なシーンにギャグを挟んだり、オープニングでなんの脈絡もなく突如として林檎が出てきたり、「エロ本大好き人間」の話ではメモを取ってる人が日本語の横書きとは反対にペンをなぞり始めたり(少し細かいけど、メモとってる人の声の出演がスタッフロールになかったり)…もう、悪い意味で気になるシーンばっかり!
コミティアで一番いい場所を優遇される作家さんで、ツイッターでもかなり人気ある人にこんな仕打ちかい?オタク向けの本屋には特典として同人誌まで付けて販促をはかる熱心な作家に対する仕打ちがこれ?と憤りすら覚える。
僕はファンでもあり、ファン以上の感情を持ってるよ!なんか自分のポジションからして「この人は応援しないといけない。同人誌で特にオリジナル創作を応援してる僕はそれの第一線の選手の活躍は応援しないといけない」という気持ちで今回のアニメ化を失敗するかもしれないと思いつつ、楽しみに待ったよ!
でも、本当に愛があるのかも疑わしいできに落ち着いてがっかりさ。
マンガは3倍面白い作品が、その3分の1で過小評価されないことを祈るばかり。
3話は見るが、多分切る。原作のファンだし、エンディングは作者が作詞してくれたものだが、それでも面白くない状態が続けば切る。露骨に違和感を感じるような作画ミスが別の回でもでてきたら切る。
原作ファンにも原作ファンの意地があるから、原作の面白さを踏まえた上での評価と語りはする。でも、それを理解・再現できないアニメなら見る価値はないよ。
敢えてのこっち!デンキ街の本屋さんを見てコッテリ感が足りない・もっとコッテリして欲しいという人のために同じ作者でも敢えてコッテリした作品を貼る!
コッテリはしてるけど、やっぱりこっちも構成は丁寧です。
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