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2014.10.04

vol.11

うちの猫を失って考えたこと。「生きる意味」はなくていい

Mami

うちの猫を失って考えたこと。「生きる意味」はなくていい

 
先月、このコラムでもおなじみのネコのくまちゃんが、FIP(猫伝染性腹膜炎)という病気を発症し、命を落としました。

 

FIPは原因が不明で治療法もなく、特に若いネコにおいては一度発症すると数日から数週間で内臓が次々機能しなくなり、死に至ります。白血病やネコエイズに比べるとFIPの認知度は高くありませんが、恐ろしいことに実はそこまで珍しい病気でもないようです。

 

FIPと診断されてから最期のときを迎えるまでの二週間、周りの人々の理解とサポートのおかげで、私は幸運にも仕事や予定を全てほっぽりだして、くまちゃんの看病に専念することができました。

これまで私は、一緒に住んでいる人の死を経験したこともなく、誰かの死の瞬間に立ち会ったこともありませんでした。ネコと一緒に暮らすのも初めての経験だったので、もちろんネコを失うのも初めてでした。

日に日に目に見えて命が削られていき、最期に壮絶な死を迎える様子を目の当たりにしたとき、この歳になって生まれて初めて「死」に触れた気がしました。

 

動物の死


どんなに弱っても、くまちゃんは自分が死ぬとは思っていなかったと思います。そもそも論理的に考えて「死」の存在すら知らなかったと思う。

だからこそ、痩せほそり、きちんと歩けなくなって、息も絶え絶え、自力でトイレに行けなくなっても、普通に暮らそうとしていました。甘えたり、ふらふらしながらも爪をといだり、人が訪ねてきて私と話していると嫉妬して、声がもうかすれて出ないのににゃあにゃあ文句を言ったり、死ぬ直前すら急に好奇心を発揮して玄関に届いていた荷物をチェックしたり。

 

誰でもいつかは死ぬのだから、その時を恐れて毎日怯えて暮らしても仕方がない。自暴自棄になっても自分がさらに苦しむだけで意味がない。

余計なことを考えず、本能に従って難しいことを当たり前に実行しているくまちゃんを見て、感心しました。

 

感心といえばもうひとつ。

くまちゃんが死んでしまって、顔や体勢を直してきれいに整えると、すぐに死後硬直が始まりました。最初はまだ柔らかく体温もありふわふわしていましたが、だんだんカチコチになっていき、何時間かするとくまちゃんのいい匂いももうわからなくなりました。

そうなると科学的な話で、機能していない肉体は傷んでいくだけなので、その身体にいつまでも執着していられない。次の日には火葬しなくてはいけない。

どんなに大好きでも、死んでしまったらすぐに手放さなければいけない。かたく冷たくなった体を触りながら、数時間前までそこにあった命も意識ももう存在しないことを実感し、自然というのはうまくできているなあと、どん底の悲しみの中でも妙に感心しました。

 

動物と暮らすことの責任


これまで動物と暮らしたことがなかった私は、「責任」といえば毎日えさをあげたり、きちんとお世話をすることだと思っていました。

もちろんそれもそうですが、死を間近にして初めて責任の重大さを実感しました。

 

FIPと診断された場合、できることは限られています。

その中でベストだと思う事をその都度飼い主が自分で決めなくてはいけません。

ごはんをいよいよ食べられなくなったとき、無理やりにでも強制給餌するのか、しないのか。

注射に通って症状が軽減されるわずかな可能性に賭けるのか、逆に病院に連れ出すストレスを避けるのか。

入院させるのか、延命はせず最後は家でのんびり過ごすのか。

欧米ではFIP診断されるとすぐに安楽死を勧められますが、それを選択肢に入れるのか、入れるとしたらどのタイミングで本格的に検討するのか。

お医者さんですら正解はわからない状況で、まして本人の希望を聞くこともできない。

 

私の場合は、症状を緩和するための薬や注射は利用しつつ、無理な延命は避けたかったので、強制給餌や入院はしませんでした。

もちろん生きてずっと一緒にいてほしいという願いと、確実に助からないのであれば苦しみがなるべく長引かないよう最期が早く来てほしいという願いにはさまれて、ひとつひとつの決断が重くのしかかりました。

 

結局私もなにが正しかったのかいまだにわかりませんが、最後の二週間、甘えん坊のくまちゃんを一瞬もひとりぼっちにすることなく、最期も大好きだった家で看取ることができたので、後悔はあまりありません。

 

 

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