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help RSS 高速鉄道における客貨走行に寄せる 〜欧州

<<   作成日時 : 2013/04/12 16:46   >>

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世界の高速鉄道における輸送は現在、おしなべて旅客輸送が主体となっているが、欧州では貨物輸送を行っている鉄道事業者もあり、今後も高速鉄道線を利用した貨物輸送の推進に対して検討が進められている。その背景には、旅客輸送と同様に速達性を望む顧客や列車運行会社が存在していること、深夜時間帯など列車運行本数に余裕のある時間帯を有効活用したいというインフラ管理会社の要望などの他に、航空や自動車に比べ環境面で優位な点の多い鉄道貨物輸送へのモーダルシフトを進める政府の施策等がある。
画像 〈 ユーロトンネルを介して英〜仏間を結ぶ高速貨物列車 〉
欧州で今、高速鉄道線を使用して貨物輸送を行っているのは、ドイツ、スペイン、フランス、ユーロトンネル(イギリス側のフォークストンからフランス側のカレー間50.0kmにおいて、トラックや乗用車を運ぶ「ル・シャトル」便や貨物列車を運行している英仏間を結ぶドーバー海峡の海底トンネル運営会社)である。
 現在、欧州の高速鉄道線で運行されている貨物列車の輸送形態には、機関車が貨物車を牽引する一般的な形態を主体とするものと、フランスのように旅客用のTGVとほぼ同じ車両を使用した郵便物輸送専用の高速貨物用列車(TGV Postal)などがある。しかし、一般的には旅客列車と貨物列車の運行時間帯が別れている(ユーロトンネルとTGV Postalを除く)など、貨物列車が高速鉄道線の運行時間帯を自由に走れる状況にはない。そこには、鉄道事業者によって路線背景に違いはあるものの、次のようなほぼ共通する問題点があると推察されている。@旅客列車と貨物列車との高速すれ違い時に起きる大きな圧力変動(衝撃動)の発生で積載荷物等の荷崩れ・落下が想定される。A運行速度差の大きい列車が混在する列車ダイヤ構成の困難さ(運行障害時のダイヤ整理等)。B旅客列車と貨物列車とのブレーキ距離の相関(列車運行に係わる運転間隔確保に制約)。C貨物列車の編成長制限(400b以内)による輸送量の制約。D車両軸重管理に係わる高速鉄道線保守に関する問題(旅客列車と同等の貨物列車編成重量が求められることによる輸送貨物量の制約)。E高速運転時の旅客・貨物相互間の制約条件に起因する貨物列車に対する対費用効果の減少および輸送需要への対応難。
 以上のような共通問題の解決をどう図っていくのか、高速鉄道線の客貨両用走行に対し統一された見識が見られていない中で、それぞれの国で問題解消に対する検討が進められている現状にある。

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                           〈 高速鉄道線を行くTGV Postal 〉
高速鉄道による貨物輸送を行っている欧州の国々、その高速鉄道線の旅客列車と貨物列車の運行に関する各国の概況を示すと、次の如くである。
 ドイツ(最高速度は旅客列車300km/h・貨物列車160km/h)では、トンネル等での高速列車と貨物列車のすれ違いを禁止している(除く単線並列のトンネル)ために旅客列車と貨物列車とのすれ違い走行はなく、昼間は旅客列車・夜間は貨物列車と列車の運行が完全に分離されている。スペイン(同旅客300km/h・貨物150km/h)は、旅客列車と貨物列車の運行時間帯を完全分離しており、すれ違いはない。フランス(同旅客320km/h・貨物200km/h、ただしTGV Postalは270km/h)では、旅客列車と貨物列車(TGV Postalを除く)とのすれ違いはなく、TGV Postalを除き昼間は旅客列車・夜間は貨物列車と運行を完全に分離している。ただ、高速鉄道線の貨物列車の運行は現在、輸送の需要減により2012年から停止されている状態にある。ユーロトンネル(同旅客160km/h・貨物140km/h)では、トンネル区間が旅客・貨物ともに単線並列であることからトンネル内でのすれ違いはないが、明かり区間では旅客列車と貨物列車とのすれ違いが発生している。
 以上のような状況から推して、高速鉄道線における客貨両用走行に対する欧州全体としての具体的に統一された見解が見えない中では、旅客列車と貨物列車が時間帯や編成、インフラ構造物等の制約に左右されることなく普通に走行することができるようになるにはまだまだ時間が必要のようだ。

ちなみに日本では、かつて東海道新幹線計画当初の段階で新幹線による貨物輸送も検討されはしたが、具体化には至らずに当初から新幹線による貨物輸送は行われていない。
画像                   〈 トレイン・オン・トレインのモックアップ 〉
 日本の鉄道貨物輸送の大宗は在来線のJR貨物が担うが、北海道方面へは唯一の鉄路である青函トンネル(津軽海峡線)を介して行われている。もともと新幹線仕様で構築されている青函トンネルだが、2015(平成27)年度末に開業が予定されている北海道新幹線(新青森〜新函館(仮称)間)も青函トンネルを抜け北海道へ渡る。すなわち、新幹線列車(標準軌・1435o)と在来線列車(狭軌・1067o)が青函トンネルを共用して運行することになることから、青函トンネル内の走行に関して新幹線と在来線の相互間においては解決を図らなければならない様々な問題が生じることになる。その中でも、速達性(所要時間)や輸送頻度(運行本数)、輸送需要(輸送量確保)等が絡む新幹線・在来線共用運行におけるダイヤ構成上の緒問題が大きくクローズアップされている。
 現在は、在来線が津軽海峡線として青函トンネルを走るが、北海道新幹線が開業を迎えれば青函トンネル(約54km)を挟む前後約82kmの区間が新幹線と在来線(旅客輸送は新幹線へ移行)の共用区間(複線・3線式軌道)となり、その区間は電車線電圧や運転保安設備等が新幹線システムに変換・統一される。その際の在来線と共用区間を通した在来線貨物列車による輸送は、当分の間は新幹線システム区間(共用区間)をスルー運転できる電気機関車(EH800形複電圧式交流機関車)を新製して対応するとしている。

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                           〈 トレイン・オン・トレインの概容 〉
 いずれにせよ、本州〜北海道間の唯一の輸送鉄路である青函トンネルを新幹線と在来線が共用することによって生じる、双方にとっての列車運行や輸送需要等に係わる制約(大きい運転速度差による障壁)は回避困難であるとしてJR北海道においては、その対策としてかねてより新幹線による新たな貨物輸送計画案が練られ研究・検討されてきた。新幹線車両にコンテナだけを直接搭載して輸送する方法(コンテナ積み替えに要する大幅な時間ロスによる速達性の阻害)や、共用区間においての新幹線のスピードダウン(新幹線本来の導入目的や時間短縮効果等の喪失)等々、複数案が検討されてきた。その中で最も力点が置かれている計画案は、現在欧州等で行われている高速鉄道線の貨物輸送とは少し趣を異にする、在来線のコンテナ貨物列車(機関車を除く)をそのままの状態で新幹線用の専用貨物列車に丸ごと搭載して高速輸送(共用区間を200km/h以上で走行)するという「トレイン・オン・トレイン」システムである。JR北海道は、この「トレイン・オン・トレイン」の導入(大規模の関連施設整備を必要とするが…)に強い意欲を示している。 〔 関連公開ブログ・「北海道新幹線…短信」2013.1.16 〕

21世紀は“地球環境の世紀”とも言われている下で、世界の各地においては物流に関して航空機や自動車に比べ環境汚染への影響が少ない、環境に優しい鉄道や船舶等へのモーダルシフトの進捗が求められている。
 その一環として、EU(European Union:欧州連合)では2011(平成23)年6月に、自動車や鉄道などの交通モードから多少を問わずに発生する外部費用(大気汚染・交通渋滞・事故等社会に及ぼす影響の対価)を汚染者負担の原則に基づき、発生源となる交通モードの利用価格(運賃・料金)に反映させるシステムの政策(外部費用の内部化)に合意を示した。この環境政策によって欧州連合では、温室効果ガス排出等に関し統括的排出量の削減効果に期待を寄せている。すなわち、交通モードに係わる外部費用が利用者負担となれば、当然の如くに利用者は利用料の安い交通モードを選択するという環境づくりが進むものと思われ、結果として外部費用負担の割合が他の交通モードと比べ一段と低い鉄道等への利用シフトが進むことになる。こうした現象へつながることで、統括的に交通モード全体における外部費用抑制の可能性を高めようというのが、この外部費用内部化の目的である。
 そのような環境政策の下にあって欧州の国々では今、1981(昭和56)年に欧州で初の高速鉄道(フランスLGV南東線418.0km)が開業して以来今日まで7000kmを超える高速鉄道網が形成され、今も拡大途上にある高速鉄道ネットワークの下で、貨物列車の高速鉄道線利用へ前向きの努力が払われている。 (終)― JRガゼットを参照させていただいた。

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