何かが召喚される前に書いておこう。
これを見て思ったのが「これ旬トピで『もう何週目だよ』って奴に似てるな」ってことです。
設定が被るのは仕方がない
要は「タイトルからどう考えても他の何かが思い浮かぶんだから仕方ないじゃん!」っていうことなんだけど、それは仕方のないことのような気がした。そもそもこういう業界のサイクルは非常に速い。アニメは3ヵ月で終わるしSNSで拡散したネタは一瞬の間に燃え尽きる。あまりにも多くの出来事がありすぎて数か月前の出来事すら「懐かしい」と感じる。
サイクルが速いと言うことは、そのサイクルに合わせて設定やネタをどんどん増やしていかなくてはいけないんだけれど、面白いネタなんてそんなにすぐ発見されるものでもない。そうするとパロディで誤魔化したりメタな楽屋ネタに走ったり、「とりあえずおっぱい出しておけばいい」みたいな感じになったりする。
はてブロ界隈でも著作権だの満員電車だの「何週目だよ」という話題があちこちに転がっている。そのたびにあーでもないこーでもないって不毛なやり取りが行われる。でもネタのサイクルがこちらも速いし、次々と新規参加者が増えれば何度でも「リテイク」が行われる。単純に「話題」に飛びついて「旬のトピック」に載ればとりあえずPVは稼げる。しかし中身は何度も何度も繰り返されてきたことなのでいわゆる古参からは「面白くない、もう飽きた」と言われる。そして「はてな村怖い」と言われて村とは何かの議論が起こって以下円環の理。
ちょっと前に「ハルヒを知らないオタクが現れた」ってTwitterで話題になったけれど、ハルヒシリーズだって刊行されたのは2003年でもう10年以上昔の話だし、知らなくても悪くはないと思うんですよ。もう2000年に生まれた子供たちがそろそろ中学校を卒業しようとしているから、高校生が高橋留美子や美内すずえの名前を知らなくてもおかしくはない*1。「ああ昔流行った漫画家でしょう」という意識もない。最新の情報が多すぎて、昔の情報なんて取り込む暇もない。今現在カーディガンを肩にかけるのが流行っているのもそれで説明が出来る。
それに現在のラノベを読むような年齢層に「異世界召喚系ラノベだったら『日帰りクエスト』を読まないと!」と説教してもおそらく『日帰りクエスト』の時代についていけないんじゃないかって思う。今読むとデジタルの腕時計をしている高校生という設定はやっぱりスマホを持っている前提の若い人からすれば古臭いだろうし、「現在が全てナウ」の感覚で生きる人にとっては「重い」「ファンタジーなのに説教くさい」とか思うかもしれない。
だから、モチーフだけ持ち越して設定を現代風に変えた作品が出てくるのはアリだと思う。「長文タイトル」とか「俺TUEEE設定」とかそういうのも「最近ウける設定」だったというだけで、きっと中身は昔も今もあまり変わらないのだろうと思う。
某界隈の謎
その上で例の作品が「パクリ」かどうかを考えると、単に「売れ筋の焼畑産業に節操を求めるほうがどうかしている」って思っちゃうわけですよ。モチーフの使い回しは上記の理由で百歩譲っていいとしても、その「お前らこういうのが好きなんだろう、ほれほれ読めよ」というあざとい感じが読者に感づかれるような編集に問題がある。正直店頭で「これパクリじゃね?」って不快に思われたらラノベに限らず編集の負けなんだと思うし、購買層だけに向けた宣伝が世間と乖離しているような気はする。
何じゃいこの今のラノベの悪いとこを煮詰めたような作品はァ! pic.twitter.com/J4Yudaar5F
— 林檎少年 (@_appleboy_) 2014, 9月 30
その「あざとさ」はもちろん反感を買う。運悪く某転載サイトに見つかって半端ないRTをもらうことにならなければ、単なる愚痴で終わるものでしかない。結局愚痴が見つかってカッとなって冒頭の記事を書いたわけなんだけれど、ますます火に油だったわけ。カッとなってはいけないね。というか全ての元凶は某転載サイトだな。
例のラノベタイトルに関するツイートとブロマガに関して読まずに批判すんなって批判がいくつか(12通くらい)きてるんだけどラノベであらすじと表紙イラストとタイトルで読む気にならなかったらまず読む気にならないと思うんですけどそこらへんいかがなんでしょうかラノベ読みクラスタの皆様
— 林檎少年 (@_appleboy_) 2014, 9月 30
なんていうか、理不尽だと思う。「読んでから批評しろ」っていうのはもっともなんだけど、多分「読んでやっぱりクソだった!」と言っても「嫌なら読むな!」という意見がわらわら出てくると思う。何したってこのジャンルに触ったら最後、手放しで喜ぶか元から触らないという選択肢以外に「そういう意見」を封じ込める方法はない。
例えば駅の本屋によく置いてある「熟女悶絶! 人妻にときめいた昼下がりの密会」とかそういう官能小説も購買層は限定されているし、こういう本を手に取って「女性差別だ!」「読まなくても大体中身はわかる!」とツイートしたところで誰に文句を言われなくてはいけないのかっていうところなんだと思う。
個人的に「反原発」「似非科学」「男女問題」の並びに「最近のラノベ語り」を入れたい。アニメや漫画やケータイ小説では全く同じようなこと言ってるのにああいう反応がないからあの界隈に何かしらの原因があると思う。
— のりまき×ぜろすけ (@zeromoon0) 2014, 10月 1
いや、だって「この本面白くなさそうだな」と個人的趣向で呟いたところで「頭が悪い」「嫌なら読むな」とかそういう感じのタグがベタベタ貼られて「本日の外見だけで判断するバカはこちら」みたいな晒され方されたら誰だって怖いじゃん。誤解がどうとか以前に他人をバカ扱いして自分らは「指摘してやってる」なんていう人とまともに話が出来るとは思えない。
つーか自分は「最近のラノベは低俗だ、文章力がない、読む価値がないからラノベを読んでいる奴はバカだ」なんて一言も言った覚えはない。「若者が好んで読むような本と大人が勉強のためと言って読むような本は乖離しているし、学校教育でも見なかったことにされている」っていうことを一貫して言ってるつもりなんだけど、「若者の本=ラノベ」だと勝手に限定して「お前の文章力がない」とか煽りを入れている時点で話し合いが出来る人たちとは思えない。
そもそもラノベって一体全体なんですか?
ちょっと話はずれるけれど、別にこれは本当にレーベルがどうとかいうラノベに限った話じゃなくて、「こういう本」に親しんで「これだけ」になった子供たちに対してどういう風に読書指導をするかって結構難しい。「絵がないからつまらない」「文字が小さくて読めない」「縦書きは読みづらい」とかそれを「個人の趣向」で片づけられないのが学校教育なんだけれど、教員もこういう事情をよく知らないから「ケータイではなくて紙で出来た本を読んでいればいいのだろう」って片づけて見なかったことにしている。そんで大学で「最近の学生は……」って言われる。
自分はあくまでも「そういう本を読んでいる」という前提で読書指導はしてもらいたいし、できれば娯楽と学習は分けたほうがいいと思っている。ラノベを読むなって言わないし、自分も結構ラノベに育ててもらったところがあるので否定はしない。だから「そういう本」とは一体何なんだっていうことを再認識しなくちゃいけないと思っている。山田悠介は? 西尾維新は? 有川浩は? かつてのコバルト文庫のような作品群は? 捉えているものに幅があり過ぎて同じテーブルに着くことが出来ない。だからこんな釣り増田がヒットする。
まとめ
長々と書いたけど、途中から完全に「言葉づかい」の問題でしかなくて困った。手斧だか何だか知らないけれど、こんな感じでいきなり「頭悪い」って言葉をぶつける連中がいるので気を付けましょう。自分はたぶん今後「ラノベ」って言葉は一切出さないし、こういう話がしたいときは「山田悠介のような本」で統一するよ。日本語は生きているからね、時々理屈にあわないこともあるよ。