生活困窮者の実態 相談内容から分析9月25日 13時35分
路上生活者の支援などに取り組んでいる東京のNPO法人が、生活に困って相談に訪れる人たちからの相談内容を詳しく分析した報告書をまとめました。
2300件もの相談内容から、安定した住まいがなく病気を抱えながら訪れる人たちの姿が浮かび上がってきます。
報告書をまとめたのは、東京で路上生活者などの支援に取り組むNPO法人「もやい」です。
長年にわたって面接や電話で生活に困った人たちの相談を受け続け、今回初めて2004年から2011年7月までの2305人の面接相談の内容を詳しく分析しました。
平均年齢46歳 “ホームレス状態“が7割
相談に訪れた人の年齢層は、35~45歳が最も多く28%。
次いで45~54歳が24%で、平均年齢は46.0歳でした。
また、住まいについて尋ねたところ、野宿が37%、知人宅など不安定な居住状態にある人が20%で、自宅や借家の人は30%にとどまりました。
安定した住まいがない、“広い意味でのホームレス状態”にある人が70%に達しました。
何らかの疾病約8割 若年層に目立つ精神的疾病
相談に訪れた人の健康状態を尋ねたところ、「何らかの疾病を訴えた人」が79%に達しました。
内訳は、身体的疾病が50%、精神的が19%で、両方とも訴えた人も9%でした。
特に若年層ほど精神的疾病が増える傾向があり、65歳以上が9%なのに対し、34歳以下では50%と過半数に達しました。
生活保護から“失踪”のケースも
過去に生活保護など公的支援を受けながら、長続きせず相談に訪れた人が34%いました。
なぜ、継続しなかったか、理由が判明している365人について調べたところ、ほとんどは「失踪で辞退」で79%を占めました。
失踪の具体的な理由を尋ねると、「7人部屋で人間関係が合わなかった」「相部屋の人とけんか」など、トラブルで入居施設を出てしまったことで、生活保護が打ち切りになったケースが目立ちました。
女性は生活安定も健康状態悪く
相談者の男女比は、男性が86%、女性が13%でした。
一般住宅に住んでいる割合は、男性が24%なのに対して女性は64%と、全体的に生活そのものは安定している様子がうかがえましたが、健康状態は男性より悪く、何らかの疾病を訴えた人の割合が94%に達しました。
「貧困の実態にあった支援を」
今回の報告書の作成に中心的に当たった立命館大学産業社会学部の丸山里美准教授は「これだけ膨大なデータが分析されたのは非常に珍しい。いったん生活保護を受けても長続きしないなど、安定した生活につなげることがいかに難しいかということが分かった。また、女性に関しては一見安定しているものの、夫の暴力や家族関係に悩んで相談するケースも多く、問題が見えにくく複雑化している」と話しています。
「もやい」の大西連理事長は「相談者の多くが疾病を訴えるなど相談内容が多様化、複雑化していると感じた。貧困の実態にあった支援の在り方を考えて政策提言したい」と話しています。
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