コラム:スコットランド独立を支持しない「10の理由」
John Lloyd
[11日 ロイター] - スコットランドで18日に実施される英国からの独立の是非を問う住民投票。スコットランド人やその子孫の多くは、賛成票を投じることが「格好良い」と思っているかもしれない。筆者がそれを間違いだと考える理由を以下に述べたい。
1)独立はナショナリズムの勝利を意味する。スコットランドの国家主義者たちは、欧州に広く存在する極右集団とは全くの別物であり、独立運動を引っ張るスコットランド国民党(SNP)の政策は、むしろ社会民主主義的でリベラルだ。しかし、解き放たれたナショナリズムは政策など飲み込んでしまうだろう。
2)欧州で分離主義の動きが広がる可能性がある。スペインには、独立機運がくすぶるカタルーニャ自治州とバスク自治州がある。ベルギーは、フランス語圏のワロン地域とオランダ語圏のフラマン地域に割れている。イタリアでも、ドイツ系住民の多いアルト・アディジェ州では古くから分離主義運動があり、近年は北部でも独立派がパダニアと称する地域で自治拡大を主張している。フランスのコルシカ島でも時折、暴力的な運動が起きている。スコットランド独立に大きく後押しされる形で、他の場所でも分離独立の機運は高まるだろう。そうなれば、欧州は何十年にもわたって消耗を余儀なくされる。
3)英国はかつて、アフリカ大陸やインドなど広大な地域を支配する一大帝国だった。オバマ米大統領の祖父であるケニア人のフセイン・オニャンゴ・オバマ氏は、英植民地支配に反乱した「マウマウ団」のメンバーだったとの疑いを持たれ、英国によって刑務所に入れられ、拷問も受けた。しかし、20世紀後半から21世紀になると、英国は地球上のあらゆる問題の解決に努力する側となった。紛争や環境問題、貧困、干ばつ、テロリズムなど真の世界的問題に取り組むようになった。スコットランドを失えば英国の国際的な存在感や影響力は弱まり、そうした取り組みも縮小するだろう。
4)英国は北大西洋条約機構(NATO)の主要創設メンバーであり、核保有国だ。英国の核戦力は核弾頭搭載潜水艦のみであり、それら潜水艦はすべてグラスゴー郊外にある基地を母港としている。スコットランド独立で非核化を掲げる政府が誕生し、これら核戦力を移動することになれば、多大な時間と費用がかかる。ロシアからの脅威拡大に直面するNATOは現在、加盟国に一段の負担を求めている状況でもある。
5)イスラム過激派やロシア、中国などに対する弱腰批判を国内外から受けているオバマ米政権は、欧州がより大きな責任を引き受けることを求めている。スコットランドの独立は、責任回避の例となりかねない。独立国家の地位を求める地域が国際的な厳しい責任からは逃れつつ、世界には各種脅威からの保護を求めるという悪い例を示すことになるだろう。
6)英国は「西側」の大きな部分を占めている。西側とは、市民社会や法の支配を掲げる民主主義国家グループであり、日本や韓国、オーストラリアやニュージーランドなども含む。中国の台頭やロシアからの脅威が西側の優位性を脅かすなか、英国がスコットランドを失うことは、民主主義の失敗を示唆することにさえなる。 続く...