シロクマの屑籠 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2014-09-05 泥だらけの金曜日

くたびれた金曜日に呑みたいワイン

 

 昔、「花の金曜日」なんて言葉がありましたが、今日の私は「泥の金曜日」です。お仕事にどっぷり漬かって、今にも溺れそうです。夕方にはぐったりして、使い途のないコンディションになっているでしょう。

  

 くたびれて、すっかり嫌になっちまったので、今はこうして現実逃避的に、呑みたいワインを夢想しております。残暑〜初秋な季節にぴったりで、深く考えなくてもハッピーになれるような安ワインを買ってきて、ぐびぐび呑んで*1憂さを晴らしたい!そういうワインを書き散らしておきますね。

 

 

 ・安いフリザンテ(微発砲ワイン)

 

 ツクツクボウシな残暑のなか、くたびれたおっさんが高級シャンパンなんかあけても仕方ないと思いませんか。気だるい日には、もっとルーズでチープなワインに、だらしなくもたれかかりたいものです。そこで選ぶのはイタリアをはじめ、各地方でつくられているフリザンテ(微発砲ワイン)。特にイタリアには、気の抜けたサイダーのような面持ちのワインが結構あって、大抵の場合、締りがなくて単調な性質です。「重厚さ」「芳醇な香り」とはほとんど縁が無いけれど、でもだからこそ、アンニュイな夕暮れにだらしなーく飲みたいものです。

 

 スペイン〜フランス〜イタリアには、こういう気取らないワインがたくさん埋もれていて、ぐったりしたい時や、だらしなく呑みたい時には強い味方になってくれます。味が比較的淡白なので、飽きることはあっても口が疲れてくることは無いのも魅力のひとつ。お客さんに出すには全く不向きですが、今日はこういうやつが欲しいです。

 

 

 ・ヌーボーじゃないボジョレー

 

 ボジョレーヌーボーは値段が高めだけど、そうでないボジョレーなら安いし、年じゅう売ってるし、それなりおいしいし、いいものだと思います。贅沢を求めるなら、格上の「クリュ・ボジョレー」なんてものもあるけれど、くたびれたおっさんには豪勢なワインを賞味するような甲斐性は無いので、お手頃価格のもので十分です。

 

 ボジョレーって、ストレートな葡萄風味だけじゃなくて、なんだかチープな駄菓子みたいな匂い*2がしませんか?えっ?お前の鼻がおかしい?でも、上手く言えないんですが、そのチープな甘い香りが恋しくなる時ってのがやっぱりあって、そういう時は自分がくたびれているような気がするのです。

 

 

 ・甘味の少ないボルドー

 

 ボルドーも挙げておきますか。チリやオーストリアの1000円ぐらいのワインに比べると、ボルドーの安ワイン、特に1000円〜2000円くらいの価格帯のワインは、甘味も香りも目立たない、「キャラ」のみえにくい品が多いように感じられます。運が良ければ、香りがちょっと複雑だったり、甘味と酸味のバランスに優れていたりもしますが、そうでない品も珍しくありません。

 

 でも、そういう「キャラ」のぼやけたワインって、なんとなく「いいひと」なんですよね。押し付けがましくなくて、しみじみ呑むと「おまえ、ぼんやりしているけど、なんだかいいやつだよな」って気持ちになってくるんですよ。なるほど、このワインに高い値段がつかないのはわかる、けれども決して捨てたモンじゃないし、疲れている日にはこちらのほうがいい。「お笑い芸人」や「アイドル」みたいなワインを敬遠したい日には、悪くない選択肢だと思います。

 

 

 ・ただのキアンティ

ベリーニ キアンティ[2012]

ベリーニ キアンティ[2012]
価格:928円(税込、送料別)

 

 ワインを将棋に喩えるなら、「王将」「飛車」に相当するような素晴らしいワイン達もいいですが、ぞんざいに呑みたい時には、「歩」なワインが一番!普段飲みで、冷凍ピザをおつまみにしたい時には気取らないワインが一番です。

 

 で、トスカーナ州の有名赤ワイン「キアンティ(クラシコ)」。クラシコがついちゃうと賞味したくなってしまうし、実際、「うむむ」と思わせるワインが多いので、ここで選びたいのは「クラシコ」のついていない、大量生産されている安物。クラシコだのレゼルバだの、御大層な肩書きがついている兄貴分に比べれば、グッとお安く、単調でも大抵の料理にはどうにか付き合ってくれます(生のシーフード、とりわけイクラやウニには付き合いきれませんが)。そこそこイタリアンな香り*3がするけれども、押し付けがましくなく、値段にも無理が無いので、ぐったり呑みにはちょうど良いかと。

 

 

 ・安物のヴェルメンティーノ(特にサルディニア産)

 

 ああそうだ、残暑な日には、白ワインのヴェルメンティーノが呑みたい!とりわけ、イタリアのサルディニア島でつくられるヴェルメンティーノは、ちょっと単調だけど、草のようなハーブのような香り・ザックリとした酸・仄かな苦味があって、くたびれたおっさんの味方です。もちろん、くたびれていない時に、派手な魚介と一緒にやっても幸せかもしれませんが……。スルメをかじりながらでもお行儀良く付き合ってくれます*4

 

 このヴェルメンティーノの安物のなかには、ときどき炭酸水の炭酸が抜けたような風味の品があるんですが、それがまた、疲れた人間がだらしなくワインを呑む時には、どことなく魅力的にみえるのですよ。逆に言うと、オーソドックスな白ワインをお客人に出さなければならない時には、安物のヴェルメンティーノは避けたほうがいいかも。私がお客さんの時は、これがいいです。

 

 

 ・高級ワインをひとつぐらい……と思いきや

 

 思いつくまま、泥のような金曜日に呑みたいワインを列挙してみました。「どうせなら、ひとつぐらい高級ワインを挙げよう」と思っていたんですが……駄目でした。くたびれている時って、高級系ワインが脳裏にぜんぜん浮かんで来ません。ワインを「鑑賞」する余力なんて残っちゃいないし、派手なワインに蹂躙されたらもっとくたびれちゃうし、お手頃品のほうがずっと良いように思います。

 

 甘口ワインもいいかなと思ったんですが、貴腐ワイン系はお客人が来た時に飲まないと飽きてしまいそうだし、ドイツやイタリアの甘口ワインは、泥のような気分には似合わないような気がしたので外しました。

 

 新世界のワイン? 新世界のお手頃品は全体的に風味が濃く感じられるので、くたびれている日に呑むとしんどくなる確率が高いので、淡い風味の旧世界のワインから選びました。

 

 飽きてきたのでこのへんで。

 皆さん良い金曜日を。

 

*1:お行儀良く「テイスティング」だなんてとんでもない!

*2:もっと具体的に書くと、昭和時代の田舎の和菓子屋がつくっていたバターケーキの上に載っていた、サクランボっぽいあれのような

*3:スミレというか、軟膏というか、あの独特の香り

*4:「お前、日本酒を呑んだほうがいいんじゃないか」と仰るかもしれませんが、生憎、私は日本酒が得手ではないので………

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