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古典を踏まえた新しい表現を許容する 豊かな芸能文化が日本にはある

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謎に満ちた古典の名作『三番叟』の魅力 木ノ下歌舞伎インタビュー

インタビュー・テキスト:島貫泰介 撮影:豊島望(2014/09/04)

伝統芸能である歌舞伎を再解釈し、その現代劇化を試みる作品で各方面から注目を浴びる木ノ下歌舞伎。『四谷怪談』や『義経千本桜』など、歴史に残る名作をポップにアップデートする手腕はすでに評価が高いが、その秘訣は演出家と台本制作などを担当する監修者を別個に立てる特殊な制作体制にある。主宰する木ノ下裕一が監修・補綴(ほてつ)として、上演演目を決定し、演出家のパートナーとしてテキストや時代考証を徹底的にリサーチ。それに基づき、演出家が現代化のためのさまざまなプランを用意。プロフェッショナル同士の分業体制が、木ノ下歌舞伎の独特な世界観を構築するのだ。

きたる9月27日、「東京発・伝統WA感動」のシリーズ企画『日本の伝統芸能×ストリートダンスPart 2』で、木ノ下歌舞伎はダンス作品『三番叟(さんばそう)』を上演する。歌舞伎の定番演目でありながら、さまざまな謎に満ちた同作を、木ノ下歌舞伎はどのように料理するのか? 主宰の木ノ下、そして彼ともっとも頻繁にタッグを組む演出家の杉原邦生に、今回の公演への意気込みを聞いた。

PROFILE

木ノ下裕一(きのした ゆういち)
1985年和歌山市生まれ。小学校3年生の時、上方落語を聞き衝撃を受けると同時にその日から独学で落語を始め、その後、古典芸能への関心を広げつつ現代の舞台芸術を学び、古典演目上演の演出や監修を自らが行う木ノ下歌舞伎を旗揚げ。3か年継続の滞在制作『京都×横浜プロジェクト』で注目を集め、2013年には『CoRich舞台芸術まつり!2013春』グランプリ受賞した『黒塚』、展覧会形式の『木ノ下歌舞伎ミュージアム”SAMBASO”~バババっとわかる三番叟~』、上演時間6時間に及ぶ『東海道四谷怪談ー通し上演ー』を成功させるなど、発表する作品は常に話題を呼んでいる。主な演出作品に2009年『伊達娘恋緋鹿子』(『F/T09』秋「演劇/大学09秋」)など。その他古典芸能に関する執筆、講座など多岐にわたって活動中。
木ノ下歌舞伎 official website


杉原邦生(すぎはら くにお)
1982年生まれ。京都造形芸術大学映像・舞台芸術学科在籍中より、演出・舞台美術を中心に活動。2004年、自身が様々な作品を演出する場として、プロデュース公演カンパニー「KUNIO」を立ち上げる。2014年7-8月 KUNIO11『ハムレット』や、2012年9月 KUNIO10『更地』など常に話題作を発表している。「木ノ下歌舞伎」には2006年より企画員として参加、『CoRich舞台芸術まつり!2013春』でグランプリを受賞した『黒塚』、『フェスティバル/トーキョー13』公式プログラム『東海道四谷怪談-通し上演-』など、これまでに8作品を演出している。
KUNIO official website | KUNIO 杉原邦生オフィシャルサイト

先行する芸能を象徴する演目の末端にあるものを、自分たちなりの解釈を加えてトップに据えるという習慣が、古典芸能にはあったわけです。(木ノ下)

―今回スパイラルホールで、木ノ下歌舞伎でも上演回数の多い『三番叟(さんばそう)』を上演するわけですが、歌舞伎に詳しくない人からすると「それってなんのこと?」という感じだと思うので、まずは『三番叟』についてご教示いただけますでしょうか?

杉原:ご教示と言ったら、それはもう木ノ下先生の出番でしょう。

木ノ下:なるほどなるほど、任せてください(笑)。『三番叟』はですね、歌舞伎の有名な演目で、お正月や劇場のこけら落しなど、おめでたい節目で上演される儀式的な演目でもありますが、もとは能の『翁』という演目です。じゃあ、能の『翁』が起源なのかというと、どうやらそうではない。能以前の古典芸能、たとえば舞楽(ぶがく)や翁猿楽(おきなさるがく)にも遡ることができて、それをパロディー化したものが『翁』なのだそうです。とても長い歴史を持った演目なんですね。まず「翁」という1番偉い神様がいて、その次に「千歳(せんざい)」という神様がいて、その次の神様が「三番叟」。彼らが順番に舞っていくという演目が、能の『翁』なわけです。

木ノ下裕一
木ノ下裕一

杉原:つまり三番叟とは、神様キャラクターの名前でもあると。

木ノ下:その能の『翁』を踏まえて、歌舞伎の『三番叟』ができるわけですが、歌舞伎は能より後に成立したものなので、能からパクってきたわけです。そしてここがカッコイイところなのですが、『翁』ではなく『三番叟』というタイトルにした。つまり、先行する芸能を象徴する演目の末端にあるものを、自分たちなりの解釈を加えてトップに据えるという習慣が、古典芸能にはあったわけです。常に先行芸能を更新していくんですね。

杉原:でも、その起源も定かではないんだよね。

木ノ下:能の『翁』は、「能にして能にあらず(能であって能ではない。つまり他の曲目とは別格なのだ)」と言われているくらいとても神聖化されている演目で、歌舞伎同様、特別なときに上演されます。宗教的で儀式性が高いのですが、そもそもの起源ははっきりしない。じつは文楽にも『三番叟』があるんですけど、やはりお正月に上演されることが多いです。能以前の芸能から能に、そして文楽や歌舞伎へ、脈々と受け継がれてきた日本の伝統芸能を象徴する演目なのですね。

杉原:そして内容も謎に包まれている。

杉原邦生
杉原邦生

木ノ下:いろんな説があって、天下泰平や国土安穏、五穀豊穣を祝うものと考えられていますが、詳しくはわからない。そこで、歌舞伎の現代化、現代劇と古典を掛け合わせた作品作りを目指す、私たち木ノ下歌舞伎では、歌舞伎の『三番叟』を自分たちなりの解釈でコンテンポラリーダンスとして作り直して、古典から続く芸能の流れに木ノ下歌舞伎を乗っけてみよう! というのが全体の試みですね。

杉原:すごいね(笑)。ある意味、脈々と続く芸能の歴史に木ノ下歌舞伎が乗ってしまおうってことでしょ?

木ノ下:そうそう! 結果、乗っているのか反っているのかは、お客様の判断に任せるしかないのですけど、初演の心意気はそういったことでしたね。

―じゃあかなり戦略的に現在の『三番叟』を練り上げていったわけですね。

木ノ下:いやいやいや。今のはこじつけで、思いついたキッカケは全然違います(笑)。

―そのキッカケというのは。

杉原:キッカケは……。木ノ下歌舞伎では、最初に『yotsuya-kaidan』『四・谷・怪・談』、その後に『テラコヤ』と、いわゆるお芝居の作品を3本作りました。でも歌舞伎って、歌、舞、演技(伎)で「歌舞伎」ですから、次は芝居じゃなくて、舞踊、ダンスの作品も作りたいね、っていう話をしたんだよね。

木ノ下:そうそう。

杉原:(木ノ下)先生は始め、きたまりさんの振付・演出・出演で『娘道成寺』をやるという構想を持っていたんですが、それ1本だとちょっと短いから、ダンス2本立てにしようという話になって。それで、じゃあ何をしようか……と悩んでいるときに、今『三番叟』で翁の役を演じている芦谷(康介)くんの顔が「翁の面に激似じゃね?」っていう話になって。

木ノ下:これがまた、そっ……くりなんですよ!


芦谷康介(左)、竹内英明(中)、京極朋彦(右)  ©鈴木竜一朗
芦谷康介(左)、竹内英明(中)、京極朋彦(右) 舞踊公演『三番叟/娘道成寺』より「三番叟」 2012年2月横浜にぎわい座 のげシャーレ ©鈴木竜一朗


杉原:それで『三番叟』に決まった(笑)。2本立て上演する『娘道成寺』も鐘供養という儀式に関するものだし、おめでたいときに舞われる『三番叟』ともうまくつながりそう、という目算もあってのことですが。

木ノ下:そこが(杉原)邦生さんの偉いところなんですよ。

杉原:褒め合ってどうすんの。

木ノ下:もうね、褒め合いますから、われわれは。つらいときはお互い電話して慰めあったりしてね(笑)。


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