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変性意識がアートに与えた影響は大きい でも、美術史の王道からは排除されてきた

STAGE

エリイ(Chim↑Pom)×ロジャーのサイケデリック対談

インタビュー・テキスト:島貫泰介 撮影:豊島望(2014/09/04)

もしあなたがアートに興味があるなら、ぜひ紹介したい団体がある。その名はアーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]。現代アートと視覚文化を考える場作りを目的に2001年に設立されたこのNPO法人は、さまざまなアートイベントや企画展、アーティストインレジデンスなどを行い、ゼロ年代以降のアートシーンを力強く支えている。そして、そんなAITが設立と同時に始めた「MAD(Making Art Different―アートを変えよう、違った角度で見てみよう)」は、現代アートを学ぶための学校だ。これまでに約1,700人が受講し、多くの卒業生がギャラリーや美術館、メディアなどで働いている(手前味噌ながら、筆者もその1人)。

今回はその設立者の1人であるロジャー・マクドナルドが立ち上げた新しいリサーチセンター兼個人美術館「フェンバーガーハウス」に、先日Chim↑Pomのエリイが訪れたことをきっかけに、両者の対談をセッティング。美術館と言いつつも、きわめて特殊、きわめてオルタナティブなマインドを持った場所であるというフェンバーガーハウスを通じて、白熱した二人のトークをお届けする。

PROFILE

エリイ
現代美術作家。2005年に結成したアートティスト集団「Chim↑Pom」のミューズ。Chim↑Pomは、時代のリアルに反射神経で反応し、現代社会に全力で介入した強い社会的メッセージを持つ作品で知られ、世界中の展覧会に参加。海外でもさまざなまプロジェクトを展開している。ソロとしても雑誌での連載、テレビやラジオでレギュラー出演するなど、アート業界のみならず、テレビやファッション誌など多くのメディアで活躍している。また、6月に初の写真集『エリイはいつも気持ち悪い』を発売し、7月にはChim↑Pomの新プロジェクトとして、ショップ兼オフィス「KANE-ZANMAI」をオープンさせた。
エリイ オフィシャルウェブサイト
エリイ (ellieille) on Twitter
Chim↑Pom
KANE-ZANMAI - 3 tastes of cash -


ロジャー・マクドナルド
1971年生まれ。NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT / エイト]副ディレクター。ケント大学にて宗教学修士課程修了後、美術理論にて博士号を取得。1998年より、インディペンデントキュレーターとして、日本国内外で数々の小規模な展覧会を企画。2006年の第1回『シンガポール・ビエンナーレ2006』では、キュレーターを務めた。『アートスケープ・インターナショナル』に展覧会評を寄稿。MADプログラムディレクターをつとめる他、女子美術大学非常勤講師、東京造形大学非常勤講師。2013年夏、長野にてフェンバーガー・ハウスミュージアムを開設した。
AITは、現代アートと視覚文化を考えるための場作りを目的として、2001年に設立したNPO団体です。
AIT | MAD » MADとは?
fenbergerhouse - fenbergerhouse

自分のエゴや主体性をいかに手放して、緩めることができるかが大切。本来アートが持っている役割の1つが、変性意識の活性化だと僕は思っているんです。(ロジャー)

―まず「フェンバーガーハウスとは?」というところからお伺いしてもよいでしょうか?

ロジャー:フェンバーガーハウスは、僕がずっと構想していた個人美術館です。長野県佐久市の森の中にある小さい山小屋を手に入れて、少しずつ手を加え、ようやく去年オープンしました。

フェンバーガーハウス内観
フェンバーガーハウス内観

エリイ:まだできたばかりだったんだ!

ロジャー:そう。父が生前に現代アートを集めたいと言って、僕と弟(画家のピーター・マクドナルド)でセレクトした20点くらいのささやかなコレクションを中心に展示しています。それから、音楽鑑賞や食事、ワークショップ、宿泊もできる。一言で言えば「理想のDIY美術館」です。

―美術館と言っても、個人の別荘を訪ねるような感覚でしょうか。

ロジャー:単に美術館に行って、1時間ばかり観て、ミュージアムショップを覗いて帰るだけでは体験として面白くないでしょ。フェンバーガーハウスは気軽に行けるシチュエーションではないから、僕がお客さんを軽く拉致して……、って車で駅まで迎えに行くんだけど(笑)。自分の車で来ない限りノーエスケープだから。5、6時間の滞在で、お昼を食べて、ティータイムして、それでだいたいの人は昼寝しちゃう。

エリイ:私も寝た!

ロジャー:とても嬉しいことですね。美術館で、そこまでマインドもボディーもリラックスして身を任せることってないでしょう。体験を通して、主体を揺るがしてほしいというか。

エリイ:変性意識を体験するんだよね。

エリイ
エリイ

―その「変性意識」って、聞き慣れない、何となく怪しいイメージの言葉ですね……。どういうものですか?

ロジャー:正しくは変性意識状態。英語だと「Altered State of Consciousness」。大きく言えば、日常的な状態以外の意識のこと。こうやって目が覚めている状態がノーマルだとすれば、眠って夢を見ている状態も変性意識だし、非常に幅広い定義ができるんです。

エリイ:みんなでお祭りに参加して、がーっとテンションが上がったりするのも変性意識だと思う。ランナーズハイもそうかな。

ロジャー:あと音楽を聴いて心地良くなっているときとかね。プチ変性意識状態と言ってもいい。

ロジャー・マクドナルド
ロジャー・マクドナルド

エリイ:でも、その状態に入り込めるかどうかは、個人差がすごくあると思う。べつにアートに詳しいから入り込める、ということではないよね。

ロジャー:それはまさにフェンバーガーハウスのコンセプトそのもの。べつに専門的な知識を求めていないし、美術史とか知らなくてもいい。僕はレクチャーで「Surrender(身を任せる)」という言葉をよく使うんだけど、自分のエゴや主体性をいかに手放して、緩めることができるかが大切。本来アートが持っている役割の1つが、変性意識の活性化だと僕は思っているんです。

―ところで、今日はその変性意識に入るためにフェンバーガーハウスで体験できるアイテムを持って来ていただいたとか。

ロジャー:「マインドマシン」ですね。怪しいアイテムじゃないです(笑)。アメリカでは広く普及していて、LEDを内側に仕込んだゴーグルを装着して、目を閉じた状態でさまざまな色や幾何学模様が見られるんです。心理学のセラピーに使う人もいるし、イラク戦争から帰ってきて、トラウマを抱えた兵士たちの心理治療の一部として使われていたりもします。15分くらい続けていると、次第に脳波がα波からβ波へと変わっていって、リラックスした状態になる。

フェンバーガーハウスでのマインドマシン体験風景 photo by Yuko Chiba
フェンバーガーハウスでのマインドマシン体験風景 photo by Yuko Chiba

―エリイさんも体験してみましたか?

エリイ:うん。けっこうテクニックがいるんだけど……私は意外とクラシックだった。マ○コマークみたいなのが見えた(笑)。

―あははは。

エリイ:太陽見ながら目をギュッとつぶると、紫色のイメージがふぁーっと見えたりするじゃん。それのもっと激しいやつっていうか。実際リラックスできるし、これも変性意識状態に入るための1つの手段だよね。


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