エボラ、マールブルグ、ラッサ、クリミア・コンゴなどの出血熱から、日本でも感染するインフルエンザ、ノロ、マダニから移るSFTSまで、ウイルス性の「新興感染症」の研究と新たな治療薬の開発を行い、バイオテロ対策への貢献で平成26年度の文部科学大臣表彰科学技術賞も受賞した安田二朗先生の研究室に行ってみた!(文=川端裕人、写真=的野弘路)
長崎大学熱帯医学研究所の安田さんは、新興感染症学分野の研究室を主宰する。
主な興味の対象は新興ウイルスだ。WHOの定義では、1970年以降に知られるようになったウイルスを指すという。
出発点は獣医学
ウイルスの研究分野自体、比較的最近確立したもので、大学では微生物学の研究室で教えられることが多かった。ウイルスを生物と見るか非生物と見るかというのは、人それぞれの考え方があって、安田さんは「生物ではない」派だそうだ。遺伝物質は持っているとはいえ、宿主がいないと増殖もできない。宿主の細胞の仕組みを使って、なんとか生き物のような再生産を可能にする。これを「生きている」という時は、生命のコンセプトをかなり広げて考えた場合だろう。それでも、やはり、小さな生物のようなもの、ということで、微生物学教室の片隅で一緒にウイルスもやりましょうということになっていたのだと思う。
ましてや、そのウイルスの中でも新興のものを扱う研究は、さらに新しい領域だ。高等教育機関に新興ウイルス学コースなどというものがあって、専門家を養成することは、今もほとんどない。安田さんの研究室が数少ない例外のひとつか。
では、安田さん自身、どのようにして、今の研究に至ったのか。
実は、医学でもなく、生物学でもなく、獣医学が出発点なのだという。
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