ガザ:「砲撃の雨」の中、エサやり続け 動物園飼育員

毎日新聞 2014年08月23日 20時52分(最終更新 08月23日 23時47分)

ライオンの世話をするアルヒシさん=ガザ北部ベイトラヒアで2014年8月18日午後、大治朋子撮影
ライオンの世話をするアルヒシさん=ガザ北部ベイトラヒアで2014年8月18日午後、大治朋子撮影

 イスラエルとの戦闘が続くパレスチナ自治区ガザ地区の動物園で、激しい攻撃にさらされながら動物たちにエサをやり続けた飼育員がいる。すぐ近くに何度も着弾する「砲撃の雨」の中、動物園に通い続けた。「私が行かなければ、みんな死ぬ」。命を守りたい一心だった。【ベイトラヒア(パレスチナ自治区ガザ地区)で大治朋子】

 ガザ地区北部のベイトラヒア。イスラエルとの境界沿いで、ガザを拠点とするイスラム原理主義組織ハマスとの激戦が続いた。ビサン動物園は2008年、ガザを武力制圧したハマスにより建設された。余興の少ないガザで子供たちに人気となり、連日数百人が訪れていた。

 ライオンやワニなど約50頭。大半はエジプトとの境界に作られた密輸トンネルを通じ、計約1500万円をかけて持ち込まれた。

 地上戦突入後はイスラエル軍が近くまで進軍し、激しい空爆に住民たちは次々と逃げ出した。だが、飼育員のファリード・アルヒシさん(42)は動物園に通い、動物にエサや水をやり続けた。

 戦闘が本格化した翌日の7月9日、ライオンの檻(おり)が爆撃で一部破壊され、1頭が死んだ。アルヒシさんが到着した時、残る3頭が檻から逃げ出したところだった。「必死で捕まえた。園外に逃走したら殺さなくてはいけなくなるから」

 イスラエルは動物園を「ハマスの攻撃拠点」とみなし計3回爆撃。飼育されていた動物の半数が死んだ。

 アルヒシさんがオスのマントヒヒを指さして言った。「傍らにあるのはメスと子どもの亡きがら。時々触りながら泣くような声を上げるのです」。メスと子は金属片が当たり死んだ。以来人間を寄せ付けず、遺骸を取り除こうとすると激高するという。

 アルヒシさんの月給は200ドル。経済状況の悪化から数カ月に1度しかもらえなくなった。それでも動物の世話をやめない。傍らで、ムハンマド・アブフレイエルさん(14)ら近所の子供たちが水運びなどを手伝っていた。「動物園が壊されてしまって悲しいけれど、僕たちで守りたい」。好きな動物は「ライオン。パレスチナ人みたいに強いから」。

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