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【社説】

自動車下請け しわ寄せの構造解消を

 このところ好調な自動車産業だが、なかなか下請けにまで恩恵が波及しない。完成車メーカーが安易な部品値下げを求めれば、体力のある一次取引先はともかく、中小は置き去りにされる。

 帝国データバンクが今月、発表したトヨタ自動車グループ下請けの調査結果は、多くの意味で興味深い内容だった。

 二次下請けまでのトヨタ関連の取引先は全国で約二万九千三百社あり、その従業員は百三十五万人にも上るという。二次までとはいえ、トヨタの巨大産業ピラミッドで従業員数まで割り出したのは異例で、資料的価値は高い。

 さらに、そのうち七割の企業で、二〇一三年度の売り上げがリーマン・ショック前に達していない。好況が下請けに浸透していないとはよく言われるが、数字で裏付けられた意味は大きい。三次以下も含めて調べれば、もっと深刻な数字が出たかもしれない。

 この結果は、トヨタ自身の皮膚感覚とも合っている。今年三月の春闘で、豊田章男社長は「仕入れ先やお客さまからどう見られるか、大変悩ましい」と述べ、組合要求への満額回答を避けた。取引先の多くはトヨタほど回復しておらず、突出した賃上げは一体感を損なうとの判断だ。

 完成車メーカーの好業績は下請けの協力なくして成り立たない。トヨタの連結決算は一三年度、史上最高益を記録したが、「原価改善」というコスト削減が二千九百億円に達した。部品値下げの効果が大きいのは言うまでもない。

 トヨタは直接、取引がある一次下請けには技術者を派遣し、部品値下げに見合う生産性向上を手伝っている。だが二次以下はなかなか完成車メーカーから技術協力を受けられず、値下げ要請だけが転嫁される傾向が根強い。

 ある一次部品メーカー幹部は「完成車メーカーの値下げ水準に付き合うと、こちらは中国やタイで作った部材を使うしかなくなる」と実情を明かす。二次以下は、取引を続けたければ、アジア各国に負けない格安の価格で一次に納めるしかなくなる。

 コスト削減はやむを得ない。ただ、削減分は巨大ピラミッド全体で広く薄く、吸収していくのが筋だ。完成車メーカーが中小下請けへのしわ寄せに目をつぶれば、日本のものづくりの土台は崩壊していく。町工場が担う広い産業基盤をどう守るか。円安でひと息つける今、真剣に目を向けなければ、手遅れになる。

 

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