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<代理出産>ダウン症児引き取り拒否 国際ビジネス野放し

毎日新聞 8月10日(日)11時3分配信

 ◇タイ・オーストラリアで「規制を」高まる世論

 【バンコク岩佐淳士、小泉大士】オーストラリア人夫婦の依頼で双子の男女を代理出産したが、夫婦はダウン症の男児を引き取らず、女児だけ連れて帰った−−。代理母のタイ人女性(21)がこう訴え、議論を呼んでいる。オーストラリアのアボット首相は「代理出産ビジネスの落とし穴を浮き彫りにした」と指摘。タイでは日本人男性が代理母に産ませたとみられる複数の乳幼児が保護され、野放しだった同国の代理出産ビジネスに厳しい目が注がれている。

【目を閉じてミルクを飲むダウン症男児】

 タイ保健当局や地元メディアによると代理母はタイ中部チョンブリで屋台を営むパッタモンさん。仲介業者を通じ約30万バーツ(90万円)でオーストラリア人夫婦の代理出産を引き受け、昨年12月に双子を出産した。

 妊娠中に男児がダウン症であることが分かり、パッタモンさんは「中絶するよう迫られたが、断った。出産後、母親から男児を育てるように頼まれた」と訴える。夫婦側は「医師から男児の存在を知らされていなかった」などと反論しており、両者の詳しいやりとりは不明だ。インターネット上では、男児を支援するサイトが立ち上がり、世界各国から2000万円以上の寄付が集まった。

 この問題を受けタイ、オーストラリアでは代理出産の規制や法整備を巡る議論が起きている。オーストラリアでは年間約500組が米国やタイ、インドなどで代理出産を依頼しているという。国内で商業目的の代理出産が禁じられているためで国外のケースも規制を求める声が強まっている。

 タイでも代理出産ビジネスは医師会の協定で原則認められていない。しかし、実際は野放し状態で、海外から多くの夫婦が仲介業者を通じてタイへ渡っている。バンコクで代理出産を仲介する日本人男性は、電話取材に「日本人が代理出産を依頼する場合は米国やインド、タイが一般的。タイは米国よりも費用が安く済む」と話した。

 自己卵子による代理出産の費用は500万円前後。現地の医療機関と提携し、代理母の紹介や出産後の手続きなどをサポートする。男女産み分けなどのプログラムもある。男性は「タイの医療技術は先進国並みに高く、日本からの利用者も少なくない」と話した。

 保護された乳幼児は当初9人だったがその後、国外に数人連れ出されていることが判明。捜査関係者によると、男性の弁護士は事情聴取に「男性の子供は14人だ」と話しているという。警察は人身売買など犯罪性がないか調べている。司法・行政当局は、違法な代理出産を請け負う医療機関はないか調査を始め「代理出産や体外受精で生まれた子供を守るため」の法整備に動き出した。

 ◇倫理的問題山積 「中絶」要件の契約も

 代理出産をめぐるトラブルは、これまでも世界各地で報告されている。生まれた子が病気で依頼者も代理母も引き取りを拒否▽胎児に障害が見つかり依頼夫婦が代理母に中絶させた▽代理母が子どもの引き渡しを拒否−−などだ。日本人が関係した例としても、2008年に日本人男性がインドで代理出産を依頼して生まれた女児に旅券が発給されず、数カ月間、帰国できなかったことがある。

 柘植あづみ・明治学院大教授(医療人類学)は「商業的な代理出産では、依頼者が引き取りたくない場合に中絶を要件とする契約もあるとされ、倫理的な問題は多い」と話す。

 国内では、日本産科婦人科学会が指針で禁じるだけで、公的な規制がない。厚生労働省の部会や日本学術会議が禁止を求める報告書をまとめてきたが、法制化には結び付かなかった。

 一方、長野県の医師が、学会の指針を破り今年3月までに21組に実施。海外に渡る日本人も相次ぐ。最近は、米国より安価なタイやインドなどで依頼する日本人が増えているとみられる。

 こうした中、自民党のプロジェクトチーム(PT、座長・古川俊治参院議員)が今年4月、「特定生殖補助医療法案」をまとめ、子宮がない、または病気で失った女性に限って代理出産を容認した。古川座長は「(代理出産などを)海外で行う人が多く、必要な治療を国内で安全に受けられるようにしたい」と説明する。PTは秋の臨時国会への法案提出を目指すが、PTの議論でも障害児の引き取り拒否の問題が指摘され、そもそも出産のリスクを他人に負わせることへの批判も根強い。

 日比野由利・金沢大助教(社会学)は「日本でも引き取り拒否の問題は起こりうる。代理出産を認めるのであれば、依頼者を親権者として子への責任を持たせるのが合理的だ」と指摘する。【下桐実雅子】

最終更新:8月10日(日)15時8分

毎日新聞

 

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