さすがにNYタイムズは並の新聞とは違う。デジタル版の有料化で購読料収入を増やし続け、一時の経営危機から抜け出し、回復軌道に乗ってきているようだと、言われてきた。今年の第1四半期(1月~3月)の決算発表では、不振続きの広告売上がプラス成長に転じたこともあって、経営陣が楽観的な見通しを語り始めていたほどだ。
外部からも高く評価されているのは、デジタルシフトが進む中でデジタル版購読者数が順調に増え、購読料(販売)売上が着実に伸びていることである。また、売上高が広告依存から販売依存にシフトしていることも、好感を持たれていた。
デジタルコンテンツの有料化に突入してから3年以上が経つが、確かにその間の購読料売上高は一本調子で増え続けている。先週発表のあった第2四半期(4月〜6月)決算でも、その四半期の間にデジタル版購読者数が3万2000人も増え、6月末に総計で83万1000人に達した。順風満帆に思えた。
ところが第2四半期の決算内容は、以下のように甘くはなかった。前年同期と比べ売上高が下回り、純利益が55%減と急落した。
以下の表は、今年の第2四半期と第1四半期における、各種売上高の増減率などをまとめものである。増減率は前年同期比である。総売上高が第1四半期では2.6%増のプラス成長であったのが、第2四半期には0.6%減のマイナス成長に沈んだ。その理由は、表からも明らかなように、第2四半期のプリント版広告売上高が同6.6%減と落ち込んだためである。でも、プリント版広告が前年同期割れでマイナスになるのは覚悟していたはずである。NYタイムズの場合も昨年まで13四半期連続してマイナスであった。
ところが、今や成長エンジンとなってきたデジタル事業で、雲行きが怪しくなってきたとなれば大問題である。デジタル事業での売上としては、広告売上と販売(購読料)売上とがある。デジタル広告売上は構造的に伸び悩んでいる。主要なオンラインメディアサイトの多くが二けた成長を続けているのに対して、伝統新聞サイトでは一けた台の低い所で低迷している。新聞サイトはオンライン広告メディアとしては相対的に弱体化しているのだ。第2四半期のデジタル広告売上が同3.4%増で順調と言われているが、この程度ではプリント版広告の減少分をまったく補えない。3.4%増と少しアップしたのはネイティブ広告の成果だと自慢するが、デジタル広告売上に大きなけん引役を負わせるのは酷であろう(paywallも壁になる)。
となるとやはり成長エンジンの要であるデジタル版販売にもっと売上を伸ばしてもらいたい。そのためには有料デジタル購読者数の純増分をなるべく大きくしたい。次のグラフは、その有料デジタル購読者数の純増分の推移である。2~3年前のデジタル有料サービスの開始当時は有料デジタル購読者数が勢いよく増え続けていたのだが、次第に有料デジタル購読者数の純増分が減っていくのは仕方がないところがある。2012年には毎四半期ごとに有料会員が約6万人も増えていたのが、2013年には半分近い3万人に減ってしまった。このような有料会員の純増分の鈍化が、デジタル版販売売上高の伸びも鈍らし始めるのではとの懸念は以前からあった。
そこで、新たな有料会員をより多く獲得するために、4月から低額のスマホ向け有料サービス「NYTNow」を始めた。4週間の購読料が8ドルと、これまでの有料サービスに比べ大幅に安い。これまでのサービスのサブセット版で、スマホ向けのカジュアル版ということで、新規ユーザーを獲得できるものと大きな期待がかかった。
ところが、第2四半期のデジタル版購読者数が3万2000人しか増えなかったのだ。季節要因があるにせよ、第1四半期の3万9000人に比べ7000人も減っていのが気になる。低額サービスNYTNowの新規会員を含めた純増数だけに、なおさら心配だ。デジタル版購読者の純増が鈍化し始めているのに加え、購買単価の低い会員の割合が高まると、販売売上の伸びが大きく鈍る懸念が高まる。その前兆か、第2四半期の販売売上高(Circulationrevenue)が前年同期比で1.4%増と成長率にブレーキがかかった。
またソーシャル時代において、NYタイムズの” Paywall”が” Socialwall” となりつつあるのも、気がかりな点である。有料デジタル路線で順調に展開していると見られているNYタイムズにも、黄信号が再び点灯するかもしれない。