フランケンシュタインはナチ改造人間の夢を観ている - 『武器人間』
武器人間
FRANKENSTEIN'S ARMY
2013(2013)/オランダ/アメリカ/R15+ 監督/リチャード・ラーフォースト クリーチャーデザイン/リチャード・ラーフォースト 造形/ロジェ・サミュエルズ 出演/カレル・ローデン/ジョシュア・ザッセ/他
ナチス最終兵器、
出撃!
年中血迷っていると言えば血迷っているのだが、血の迷いが滝観洞に迷い込んだようなことになりて、今年の初めの方に『フランケンシュタイン・リポート
最近文体が安定しない上に何故そんなダイレクト・マーケティングをかましているのだろうとふと考え、あっそうそう、そのヴィクター・フランケンシュタイン探訪の旅(主に家でごろごろしながら本や映画にかまける)にて口惜しいことに見逃してしまっていた『武器人間』をやっと観た、というようなことを書こうと思っていたのだと本分に立ち返るが、ナチスとフランケンシュタインの怪物のポルノグラフィアめいた文字通りの結合、『武器人間』をやっとこさ観た。
第二次世界大戦中の東部戦線に送り込まれたソ連偵察部隊が、虐殺の痕跡のある村の教会を調べる内にナチのマル秘地下研究所に通じる道を発見、当然のように侵入すると、ネクロテック(via ウニカの房室様)を施された改造人間たちに襲われて……という非常に知的でモダンなお話。
何せこちらの最後に残った尊厳っつーの理性っつーのを笑い飛ばそうってな内容であるので、「死人がおいらを追いかけてくる~~~♪」とひと、にんげんの品格の最後の拠り所である『レイダース/失われたゾンビ』の主題歌をエモーショナルに口ずさむなどして自衛に励んだのだが、最後、研究所内、モウダメ。つて、片言になるくらいやられた。「脳をやられた! もう駄目だ!」の脈打つ映像化。はな、至福の84分。
棺を蓋いて事定まる、なんてえ事を申しまするが、死者を冒涜、死後なおも突っつき回すのが映画が抱える因業のひとつでありまして、共産主義者どものコミカルな亡霊じみた部隊を、ヴィクター・フランケンシュタインの末裔がこさえた屍者兵器がファッショで小突き回すこの映画に、人物評はその人が死んで初めて定まる、てな正論を説いても無粋というものでありましょう。
デザインはかっこいいけれどものたりのたりとした武器人間が迫ってくる。POVだというのに臨場感の欠片も無い。ああっ、またひとり切株にされてしまった! どっちが死人だか分かりゃしねえ!
生きるの死ぬのと両極端な言い草が、映画という第七ゲージツを介した途端、呪術のごときにその垣根が取り払われることを本作は示しており、それを笑いながら、或いはベソかきながら観られる内は我々は正気であるという事実をも本作は知りたくもないのに突き付けて下さります。
死者を屍者として労働・軍事運用する是非と次第は『屍者の帝国』ならび諸々のフィクションに詳しいので、死人を改造した事も無い門外漢である私はあまり言葉を割けませぬが、この倒錯した命の遣り取りについ昨日まで悩んでいた自分、明日に不安を抱える自分などが矮小かつ惨めで厭らしいものに思えてくるのは至極当然で、糞の詰まった肉塊と化した「材料」の山を見るに「ゾンビは『癒やし』なのです」と仰った荒木飛呂彦先生の言葉が脳裏に蘇る。半分切株にされつつもまだ意識があるソ連兵の絶叫は、なまじ中途半端な未練を残しているが故の怨嗟と言えましょう。
肝心要の武器人間とのバトル/アクションに迫力が無いのは逆説的に映画の文法を際立たせるもので、あんな珍妙な死人がのたくりのたくり現れて即スタイリッシュに戦闘に移行してしまうと、それこそ「映画」的になってしまい、ただでさえ嘘臭いPOVがもっと嘘臭くなる。クリーチャーが出現した時にはした時の対応というものがあり、『武器人間』で武器人間が出現した時にはした時の対応というものがある。死兵と化した島左近に立ち向かう東軍でもあるまいし、ちょっと抜けたアカたちのナチストンデモ兵器に対する反応は作品の雰囲気を損なうものではない。
迷路じみた地下道から箱物に移行する後半は胎道から現世に出てきた赤子の悪夢そのもの。
『ミディアン
現代に生きるフランケンシュタインにとってイデオロギーよりもこの理想宮を維持したいのであろうことは阿呆でも分かり、マッドサイエンティストてな蔑称で括れぬ小児病的な夢が詰まっている。で、この約束された地に至るまでのルートを振り返ってみると、一貫して公よりも個人主義を貫いた結果としての小規模な戦争であったという点に思い至り、それ即ち、私の大好きなカテゴリである「小さな王国」に類するものであると気付いてしまうのだ。
ところで『武器人間』という邦題は『ムカデ人間
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20140802 │ 映画 │ コメント : 0 │ トラックバック : 0 │ Edit