私達の生活に無くてはならない存在になりつつあるFacebook。人との繋がりを結ぶ上で非常に便利なものですが、実は、一見無意味な「いいね!」や個人情報の一部があなたの生活を丸裸にしてしまうかもしれないと米メリーランド大学准教授のジェニファー・ゴルベック氏は語ります。
ここでは、ジェニファー・ゴルベック氏が語った、ソーシャルメディアで丸裸にされてしまう私達の生活をいかにして守っていくのかという、TEDのプレゼンを書き起こしていきます。
スピーカー
ジェニファー・ゴルベック氏(コンピューター研究者・メリーランド大学准教授)
見出し一覧
・Facebookにより、Webは「繋がり」の場へと進化している
・「何を買ったのか」を知るだけで、あなたが妊婦かわかってしまう
・なぜ、カーリー・フライは賢さを表すようになったのか?
・データの悪用を止めるためのたった1つのベストな解決法は「科学」
動画
Facebookにより、Webは「繋がり」の場へと進化している
最初の10年間、Webがどのようなものであったのか、あなたは覚えていますか?当時、Webは固定的なものでした。インターネットにアクセスし、サイトを見ることはできましたが、当時、Webは専門の部署を持つ組織やコンピュータに精通した個人が立ち上げたものでした。
2000年代の初期にソーシャルメディアやソーシャルネットワークが登場すると、Webは大きく変容を遂げ、今となっては私たちが見るコンテンツのほとんどが、一般ユーザーによるYouTubeのビデオやブログでの製品のレビュー、そしてソーシャルメディアでの投稿に占められています。また、Webは人々がやり取りをする場へと変化しています。コメントや情報を共有する場となり、ただ情報を見るだけではなくなったのです。
Facebookは人々がやりとりをする場としては世界最大のものです。数字を見れば、一目瞭然です。Facebookには月間ユーザーが12億人います。これは、地球上のインターネット人口の半分がFacebookを利用していることになります。他のサイトと同様に、Facebookは、ITのスキルがほとんど無くてもネット上での人格を形成できるサイトであり、人々は個人情報を大量に投稿しています。
その結果、何億人もの行動パターンや好み、人口統計データなどが得られるのです。このように、大規模なデータが集まることは、過去にはないことでした。私のようなコンピューター科学者にとって、これは重要なことです。私は、人々が共有した情報から、本人がまさか公開しているとは思いもしないような、隠された特性を予測できるモデルを数多く構築することができました。科学者は、構築したモデルによって人々のネット上での交流を手助け出来るのですが、悪用されてしまう場合もあります。
問題は、ユーザーがこの様な技術の存在やメカニズムを理解しておらず、もし知っていたとしてもコントロールする手段が無いということです。私がここで話すことは、個人情報の悪用に対して我々が何をできるかという対策、そして我々の手にいくらかコントロールを取り返すアイデアについてです。
「何を買ったか」を知るだけで、あなたが妊婦かわかってしまう
これは「Target」という大型量販店のロゴです。妊婦のお腹に貼り付けられたロゴは無意味なものではありません。フォーブス誌の記事をご覧になったかもしれませんが、Targetは15歳の妊婦が親に妊娠を打ち明ける2週間前から、ベビーグッズの広告とクーポン券を送りつけていたのです。父親は激怒しました。
Targetは、親さえ知らない高校生の少女の妊娠をどうして知っていたのでしょうか?判明したことは、彼らには何十万という顧客の購入履歴データがあり、「妊娠スコア」を計算していたのです。妊娠スコアでは、単に妊娠しているかの判断だけでなく、出産予定日の推定さえ行っています。すぐに妊娠したと分かる購入品だけでなく、いつもよりビタミン剤を多めに買ったことや、おむつを入れるのに必要であろう大きな手さげカバンを買ったということから推測するのです。一つひとつの物は、購入したからと言って何かがバレる訳ではなさそうですが、購入行動パターンを他の数千人のデータと照らし合わせることによって意味が生じてきます。
このようにして、我々のようなコンピューター科学者は、ソーシャルメディアを通して皆さんのことを分析しています。数百万の人々の情報を、ささいな行動パターンから見出そうとしているのです。
なぜ、カーリー・フライは賢さを表すようになったのか?
私の研究所では、人々の政治的傾向や個性、性別、宗教など、様々な項目について正確に予測する手法を開発しました。更に、知人をどの程度信頼し、どれくらい深い関係かも予測できるようになりました。予測はかなり精度が高くなりました。繰り返しますが、直接的でない情報から結果が得られるのです。
私が特に気に入っている事例は、米国科学アカデミー紀要に載った今年の論文です。検索すれば見つかるでしょう。4ページの論文となっていて、すぐに読むことができます。ここでは、Facebookで何に対して「いいね!」をしたかという情報だけを解析することで、先ほど挙げたような個人の特性を予測しています。この論文では、高い知能と関連性の高い5つの「いいね!」の対象をリストアップしました。その一つがカーリー・フライ(螺旋状にカットされたフライドポテト)のページです。カーリー・フライは確かに美味しいですが、カーリー・フライが好きなこと自体が平均以上の知性を意味するのではありません。では、どうして予測しようとする性質と無関係なことが知性と関連性の高い指標となるのでしょうか?
これを説き明かすためには、研究の背後にある、ありとあらゆる理論に対して着目すべきだということが分かりました。その一つが社会学の「同類性」と呼ばれるものであり、「人間は基本的に似た者同士が集まる性質がある」というものです。賢い人は賢い人達と仲間になる傾向があり、若者は若者同士で集まるというようなことで、この理論は何百年も前に確立されています。情報がネットワークにより、どう広がるかもよく分かっています。話題になるビデオやFacebookの「いいね!」のような情報は、まるで病気が伝染するようにソーシャルネットワークを通して広がるのです。こういった理論は長年研究され、良い予測モデルがあります。
こういった理論を合わせて考えてみれば、なぜあんな予測が出来るのかが分かってきます。仮説を立てると、Facebookにページを作った人か、あるいは初期に「いいね!」をした一人が知性の高い人だったのでしょう。彼らが気に入って、そしてその友達が共有された情報を見て、類が友を呼び、仲間の輪が広がり、さらに賢い友達へと広まって、ネットワークを通してたくさんの知性の高い人へと伝わっていった結果、ついにはカーリー・フライへの「いいね!」が商品の中身とは無関係に高い知性を表すことになったのです。
とても複雑な関係ですよね?これを知識がない方の前で説明するのはとても難しいですし、説明しても、普通の人はどうすべきか分からないでしょう。何かを「いいね!」したとき、直接関係のない性格を把握されてしまうなんてどうして分かるでしょう?ユーザーがデータの用途をコントロールできないような仕組みが多くあるのです。そして私は実際に起こっている問題を知っています。