7月30日に発売されたばかりの『ムシヌユン』の帯には“さあ開け。「これ」が亜熱帯SF!!!!”と記されている。
藤子・F・不二雄は「SF」を「サイエンスフィクション」ではなく「少し(S)不思議(F)」と称したというが、この『ムシヌユン』という作品はもはや「凄まじく(S)不思議(F)」なマンガだ。
ついでにエロティックな描写も凄まじいことは先に述べておこう。
あの『ナチュン』の作者が放つ南国SF第2弾!!
「あの」と言われても分からない方のために補足すると、マンガHONZがまだ始まって間もない頃、『ナチュン』という作品について紹介したところ、驚くほど大きな反響があった(http://honz.jp/articles/-/40178)。
既に絶版となっていたため購入できるのは中古版だけだったのだが、掲載をきっかけにKindleの電子書籍として復刊し、2~4月の『買われたマンガランキング』ではなんと第2位(!)
まだ読んでいない方も絶対読んでいただきたいのだが、イルカのビデオに隠された「世界を支配できる人工知能」の秘密をめぐる、南国・沖縄を舞台にしたSF作品である。
今回紹介する『ムシヌユン』も同じマンガ家、そして文化人類学者でもある都留泰作先生によるもの。
僕には、「人間の三大欲求」と並んで、「沖縄欲」があるような気がする。
表紙をめくると作者のこんな述懐から始まる本作『ムシヌユン』も舞台は沖縄の離島だ。
植物の種類が豊富でいかにも描くのが面倒そうな亜熱帯の森林の様子も、細かく丁寧に描き込まれていて実に見ごたえがある。力強いタッチで描かれた登場人物はどれも一癖ありそうなキャラクターばかり。ちなみに女性は90年代前半風で、色っぽくてかわいい。
こうした描写は南国ならではの「陽気なのにどこか怪しげなドロドロ感」を一層パワーアップさせている。
次巻がまったく予想できない幕開け・・・
主人公、上原秋人はコミュニケーション能力に乏しく、妄想のなかでは強気なのに人前では怖気づいてしまうタイプの人間だ。
思ったことも口に出せないままタイミングを逸してしまい、割を食うこともしばしば。
そんな彼の夢は「昆虫博士」になることだった。だが長年の夢が潰えた彼は、住んでいたアパートから追い出され、彼の故郷である日本最南端の島・与那瀬に帰ることに。
この島では「タンゴ星団」と呼ばれる空前の天体現象(表紙中央に描いてあるやつ)を一目見ようと、日本中から観光客が押し寄せてきていた。
昆虫にしか興味がない主人公は天体観測には目もくれずにいたが、「タンゴ星団」がその全貌を表わしたとき突如輝きを増し、天から流星が降り注ぐ。
そして流星に紛れるように降ってきたムシ(のような生物)に指先を噛まれた主人公は、〇〇が巨大でグロテスクな物体に変化してしまうのだった――。
さらに、一夜明けると島では次々と異常現象が巻き起こっていく・・・!
蒸し暑い夏の夜に読みたいマンガ!
デビュー作だけで都留泰作先生の特徴を語るのもおかしいのだが、とにかく「急展開」が多い。
『ナチュン』では毎巻ごとに「え? こんな話だったっけ?」と思わず読み返すほど展開が目まぐるしく変わっていった。
この『ムシヌユン』も第1巻から「急展開」の連続。
私自身、読み終えた後は筆舌に尽くしがたい面白さに惹きこまれたまま、頭のなかには「?」が浮かんでいた。
きっと次巻もそうなのだろう。でもそれがたまらない魅力でもある。
色気むんむん。ちょっと不気味で怖い。スケールが壮大すぎて、先が全く読めない。
なんとも言えない後味は、夏の夜にオトナが読むにはもってこいのマンガだ。
会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。
※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。