都議会ヤジ:「非常にみっともない行為」米ではまれ

2014年06月21日

報道陣の質問に答える塩村文夏議員=都議会で2014年6月19日、武本光政撮影
報道陣の質問に答える塩村文夏議員=都議会で2014年6月19日、武本光政撮影

 都議会みんなの党会派の塩村文夏(あやか)議員(35)へのやじ問題は、国際的にも報じられ波紋を広げた。ロイター通信は20日、「独身で子供がいないことを女性議員がやじられ、日本で怒りが渦巻いている」との見出しで、記事を配信した。

 米国在住で米国の社会・政治状況に詳しい映画評論家、町山智浩さんは、米国も政治の世界では女性に対する偏見が強いと感じており、「日米とも状況を改善するには、女性がもっと選挙に立候補し、もっと投票に行くべきだ」と訴える。

 町山さんは「米国では議員のやじはまれです」と言う。「議事妨害に当たるうえに、非常にみっともない行為とされているから」という。

 都議会の会議規則も議事妨害になる発言を禁止しているが、あくまで議事の進行を妨げる行為を禁じたもの。やじ自体を禁止しているとは解釈されていない。

 米国には議会の様子を編集せずにそのままテレビ放映するチャンネルがある。議場に複数のカメラが設置されているため、議員が問題発言をした場合は、その姿が捉えられる。オバマ大統領にやじを飛ばしたジョー・ウィルソン議員はビデオには映らなかったが、その醜い態度がニュースだけでなくお笑い番組でも繰り返し批判され、評判を落とした。日本と違ってアメリカのコメディアンの多くが政治的な時事ネタを得意とするからだ。

 しかし、米国の政治でも日本と同じような女性蔑視は存在するのが現状だ。「米国では、共和党が女性の権利を守る法律に反対する『女性に対する戦争』と呼ばれる状況が続いている」と町山さんは話す。例えば、人工妊娠中絶に対する医療保険の適用に反対するミズーリ州の元下院議員のトッド・エイキン氏が「本当にレイプなら妊娠しないはずだ」と暴言を吐いて物議を醸した。

 女性政治家への性差別攻撃も起きている。次期大統領の最有力候補といわれるヒラリー・クリントン前国務長官は2008年の大統領予備選に出馬した際、一般男性から「俺のシャツにアイロンをかけろ(女は家事をやってろ、の意味)」と書いたプラカードを掲げられて侮辱された。

 米下院の女性議員比率は約20%。議員数そのものは増加しているが、増加率から計算すると、男女半々になるまでに100年以上かかる。町山さんは「政治の世界では男性が多数派。人工中絶やセクハラ、男女の賃金格差など女性の権利について男性が勝手に決めている状態。この原因のひとつは女性の投票率がまだ男性に比べて低いこと」とし、女性の政治参加を大きな課題と指摘している。【馬場直子/デジタル報道センター】

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