「中田の4番」も「斎藤の開幕投手」も「パ・リーグ優勝」もすべて計算ずくだった「日本ハムモデル」勝てる組織はこう作る

週刊現代 プロフィール

 ちなみに日本ハムのスカウトは、その多くがスコアラー経験者でもある。プロの選手のデータや、クセを見抜く目で、アマ選手に点数をつけていく。

「全国に散らばったスカウトから、毎日いろんな選手のデータが積み上がっていくわけです。例えば中田でいうと、今日の試合では総合で80点の『即戦力クラス』という評価が入る。でも別の日に違うスカウトが見に行くと、スタンスを崩していて50点。『3年後なら使える』という評価がくだされるかもしれない。そうしたデータが、全国のあらゆるアマ選手別に、毎日毎日集まってくる。それをこまめに集計し、何度も何度も会議を重ねる」(前出・藤井氏)

 もちろん、ここでも監督や現場の要望は重要視されない。「オペレーションチーム」が、参考程度に聞くにとどまるのだという。

 しかし近年の日本ハムのドラフト実績は、圧巻の一言である。

 実際、ドラ1に限って見ても、'05年の陽(高卒1巡目)以降、ほとんど・ハズレ・がない。今年エース級の働きをみせた吉川光夫('06年高卒1巡目)をはじめ、中田('07年高卒1巡目)、大野奨太('08年)、中村勝('09年)、昨年1位の斎藤佑樹と、軒並み主力に成長している。

 もちろん、斎藤や中村など、これからの選手も含まれるが、他球団のように何年も二軍でスター候補を腐らせることはない。なぜか。

 その手がかりは、

「支配下選手の少なさ」

 にある。

 日本プロ野球機構が、チームごとに認める支配下登録選手数は、上限70名。しかし今季の日本ハムは、わずか65名で開幕を迎えた(10月18日現在・66名)。ちなみに12球団で育成選手制度を利用していないのも、日本ハムだけだ。

「数を絞っているのは、選手を育てたいからですよ。だから『育成選手』なんていらないんです。自前の選手をきちんと育成するには、コーチやフロントが、個々にしっかり目を配れる65名が最適なんです」(前出・球団関係者)

 他球団と比較しても、支配下だけならヤクルトと広島が日本ハムについで68名と少ないが、両チームとも育成選手を抱えている(ヤクルト6名、広島9名)ため、選手数は80名近い。一軍の出場選手登録の上限は28名だから、ファーム戦では、残りの約50人がポジション争いを繰り広げることになる。

「選手は、数がいればいいというものではありません。試合に出られず、才能を伸ばす機会も与えられないまま、クビになっていく選手が出てきてしまう。それに、闇雲に選手を獲るのは、『誰が伸びるかわからないから、とりあえず抱えておけ』という考え方に繋がりかねません。