仏大統領選 マクロン氏勝利の背景は

仏大統領選 マクロン氏勝利の背景は
フランス大統領選挙の決選投票で、中道で無所属のマクロン候補が極右政党のルペン候補を破り、勝利しました。マクロン候補の勝利の背景には、「左派でも右派でもない政治」を掲げて無所属で立候補することで現状の政治に不満を持つ有権者の支持を集めるとともに、極右政党・国民戦線のルペン氏の当選を阻みたい多くの有権者の受け皿になったものと見られます。
フランスの大統領選挙の1回目の投票で敗退した中道右派の共和党と、急進左派の左派党の候補者の支持者も2回目の投票では、多くがマクロン氏に投票したと見られています。

マクロン氏が去年4月に創設した独自の政治運動「前進」は、結成から1年余りで全国で3100の支部を立ち上げ、党派を超えて27万人の支持者を集め、マクロン氏の活動を支えてきました。
また、公約面では長引く景気の低迷を打開するため、企業への優遇策を打ち出し、法人税の減税や、年金など社会保障費の企業負担の削減を訴えるなどして、企業経営者などの支持を固めたものと見られます。

また、マクロン氏は、EU=ヨーロッパ連合の枠組みの堅持を前面に掲げ、EUなどの各国で国境審査なしで移動できる「シェンゲン協定」や単一通貨ユーロを守ると強調していて、EUの統合に賛同する多くの有権者の支持を集めていました。

ルペン候補 敗因は根強い不信感

国民戦線のルペン候補が敗れた背景には、国民戦線そのものやルペン氏が掲げた公約に対して、有権者の間に根強い不信感があったことがあります。

ルペン氏は6年前に国民戦線の党首に就任、その後「差別的な極右」という党のイメージの刷新に取り組み、さらに決選投票への進出が決まったあとは、党首の座を一時的に離れ、「党を超えて国益に尽くす」という姿勢を示すことで、より広い有権者層から支持を集めようとしました。選挙運動でも大都市ではなく、地方の町や農村部を重点的に訪れ、「衰退する地域の実情や、庶民の不安や不満を理解しているのは自分だ」とアピールしてきました。
さらに、1回目の投票で4.7%を得票した保守系の候補からの支持も取り付け、国民戦線との連携がタブーとされてきたフランス政界で異例の動きとして注目されました。

ルペン氏はフランスの国益を最優先するの立場から、EUからの離脱の是非を問う国民投票を実施し、自国の通貨を復活させるなどの公約を掲げてきましたが、統一通貨のユーロからの離脱については懸念する声が強かったことから、決選投票を前に「離脱を急がない」と主張を和らげました。

しかし、こうしたさまざまな戦略にもかかわらず、最後まで「極右」のイメージを拭い去ることはできず、オランド大統領や中道左派、中道右派の主要な政治家はそろって「極右の大統領の選出を阻止すべきだ」として、マクロン氏への支持を表明しました。一般の有権者の中にもマクロン氏の人柄や公約を支持していなくても、ルペン氏の当選を防ぐためにマクロン氏に投票した人が多くいたと見られます。

今月3日に行われたテレビ討論について、ルペン氏はマクロン氏に対する個人攻撃に終始し、公約についての説得力に欠けたと、メディアや専門家から厳しい評価を受けました。このあと行われた世論調査でルペン氏の支持率は落ち込みを見せ、ルペン氏はマクロン氏との差を縮めることはできませんでした。