北朝鮮 発射は中距離弾道ミサイルか 米韓が対応協議へ

北朝鮮 発射は中距離弾道ミサイルか 米韓が対応協議へ
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北朝鮮は16日朝、東部から弾道ミサイル1発を発射しましたが、直後に爆発し失敗したと見られています。アメリカ政府は中距離弾道ミサイルだったのではないかと分析していて、韓国に到着したペンス副大統領はファン・ギョアン(黄教安)首相らと対応を協議することにしています。
アメリカ太平洋軍と韓国軍の合同参謀本部によりますと、日本時間の16日午前6時21分、北朝鮮が東部のハムギョン(咸鏡)南道シンポ(新浦)付近から弾道ミサイル1発を発射しましたが、直後に爆発し失敗したと見られるということです。

米韓両軍が分析を急いでいて、アメリカ、ホワイトハウスの当局者は16日に記者団に、「発射されたミサイルはICBM=大陸間弾道ミサイルではなく、中距離弾道ミサイルと見られる。発射してから4~5秒後に失敗したようだ」と述べ、初期段階の分析を明らかにしました。

北朝鮮は今月5日にも同じシンポ付近から弾道ミサイル1発を発射しているほか、15日にキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長の祖父、キム・イルソン(金日成)主席の生誕105年に合わせて大規模な軍事パレードを行って、さまざまなミサイルを登場させました。

北朝鮮としてはミサイルの発射で、キム委員長をさらに権威づけして国威の発揚を図るとともに、武力行使も排除しない姿勢を示すアメリカを強くけん制する狙いもあったと見られます。

こうした中、就任後、初めてのアジア歴訪を始めたアメリカのペンス副大統領が16日午後、最初の訪問先の韓国、ソウルに到着しました。17日午後に大統領の職務を代行するファン・ギョアン首相と会談し、北朝鮮への対応について協議することにしています。

ホワイトハウスの当局者は16日に記者団に、「北朝鮮はミサイル発射だけでなく、核実験も実施したがっている。仮に北朝鮮が核実験を行っていれば、アメリカは何らかの行動を起こしていただろう」と述べ、北朝鮮を強くけん制しました。

トランプ政権は空母カール・ビンソンを中心とする艦隊を朝鮮半島に近い西太平洋に向かわせるなど圧力を強めていて、またもミサイル発射を強行した北朝鮮をめぐり、ペンス副大統領の出方が注目されます。

外相「日米両国で連携して対応」

岸田外務大臣は16日午後、広島空港でNHKの取材に対し、「報道などは聞いている。わが国としては平素から情報収集、分析に努めており、インテリジェンスの関係で詳細は控えるが、わが国の安全保障上影響が出ているとは聞いていない」と述べました。

そのうえで、岸田大臣は「アメリカとは平素から意思疎通を図っており、さまざまなレベルで引き続き行っていきたい」と述べ、日米両国で連携して対応していく考えを示しました。

一方、岸田大臣は、北朝鮮とつながりの深い中国について、「2月の日中外相会談の際に、北朝鮮問題で中国の役割は大変大きいと伝え、国連の常任理事国としてしっかり役割を果たすよう働きかけた。引き続き各国と連携しながら、中国にも、さまざまな働きかけを行っていきたい」と述べました。

また、外務省は「北朝鮮がけさ、弾道ミサイル1発を発射したことは、国連安全保障理事会の決議などに違反する行為だ」として、北朝鮮に対し、北京の大使館ルートを通じて抗議したことを明らかにしました。

政府が外交ルート通じ抗議

政府は、北朝鮮が16日朝、東部のシンポ付近から弾道ミサイルを発射したことを受けて、直後に爆発したものの、国連安全保障理事会の決議などに明白に違反しているとして、外交ルートを通じて抗議を行い、一連の対応を強く非難しました。

アメリカ太平洋軍が日本時間の16日朝、北朝鮮が東部のシンポ付近から弾道ミサイル1発を発射したものの直後に爆発したと発表したことを受けて、政府は、総理大臣官邸の危機管理センターに設置している北朝鮮情勢に関する官邸対策室で情報の分析などにあたってきました。その結果、政府は、アメリカと同様の認識に至りました。

政府は、今回の発射は直後に爆発したものの、国連安全保障理事会の決議などに明白に違反しており、たび重なる挑発行為を断じて容認できないとして、北朝鮮に対し、中国・北京の日本大使館を通じて抗議を行い、一連の対応を強く非難しました。

政府は、アメリカや韓国と緊密に連携し、引き続き北朝鮮の動向の警戒・監視に努めることにしています。

防衛省「アメリカと同じ認識」

これについて、防衛省は「アメリカ太平洋軍が『きょう午前6時21分に北朝鮮が東岸のシンポ付近から弾道ミサイル1発を発射し、直後に爆発した』と発表したが、防衛省でもこれまでに収集した情報を総合的に検討した結果、アメリカと同じ認識を持っている」としたうえで、引き続きアメリカや韓国と緊密に連携して警戒と監視に当たるとしています。

ソウル市民からは不安の声

北朝鮮が16日朝、弾道ミサイル1発を発射したことについて、ソウルの市民からは不安だといった声や、国際社会が協力して事態の打開を目指すべきだといった意見が聞かれました。

このうち、20代の男性は「とても不安に感じた。韓国政府にはアメリカとともに対話を通じて妥協点を探ってもらい、戦争が起きないようにしてもらいたい」と話していました。

また、50代の女性は「アメリカがシリアを攻撃したというニュースを見て胸が痛かったが、そういうことが朝鮮半島で起きてはいけないと思う。国民が団結しなければいけない」と述べ、心配そうな表情を浮かべていました。

一方、20代の男性は「中国の習近平国家主席とアメリカのトランプ大統領が力を合わせ、北朝鮮が再び挑発行為をできないように、根本的な解決をしないといけないと思う」と話し、アメリカと中国が協力して対応にあたることが重要だとの認識を示していました。

ピョンヤンでは緊張した雰囲気なく

北朝鮮は16日朝、東部からミサイルを発射しましたが、直後に爆発し失敗したと見られています。一方で、ピョンヤンでは発射のことは知らされておらず、花の展示会場が大勢の市民でにぎわうなど緊張した雰囲気はありません。

アメリカ太平洋軍と韓国軍の合同参謀本部によりますと、北朝鮮が16日朝、東部のハムギョン(咸鏡)南道シンポ(新浦)付近から弾道ミサイル1発を発射しました。ミサイルは直後に爆発し発射は失敗したと見られたということで、米韓両軍が情報の収集と分析を急いでいます。

こうした中、北朝鮮当局はキム・イルソン主席の生誕105年の行事の取材で北朝鮮に入っている外国メディアにピョンヤン市内を案内しました。このうち、キム・イルソン主席の名前がつけられた花の展示会場にはピョンヤンの街並みの模型なども展示されていて、大勢の市民でにぎわっていました。

中には、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを地上配備型に改良し、ことし2月に発射した新しい中距離弾道ミサイルの模型もあり、娘と一緒に訪れた女性は「わが国は強国だということを娘に見せるために来ました」と話していました。

一方、今回のミサイルの発射については国営メディアも伝えておらず、ピョンヤン市民に聞いたところ、みな一様に「知らない」と答えていて、緊張した雰囲気はありませんでした。

ただ、「発射があったのなら、われわれにとっては大きな喜びだ」とか、「アメリカの制裁には屈しない。ミサイルはこれからも発射するだろう」といった声も聞かれました。