G7外相会合 シリア問題にロシアとイランの関与求める共同声明

G7外相会合 シリア問題にロシアとイランの関与求める共同声明
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イタリアで開かれているG7=主要7か国の外相会合は、日本時間の11日夜、閉幕しました。閉幕後発表された共同声明では、化学兵器が使われたシリア情勢に深刻な懸念を表明したうえで、ロシアに対し、紛争を終結させるようアサド政権に対する影響力を用いることなどを求めています。
イタリア北西部のルッカで開かれていたG7=主要7か国の外相会合は、2日間の日程を終えて、日本時間の11日夜閉幕し、議長国イタリアのアルファーノ外相が記者会見して、共同声明を発表しました。

それによりますと、主要な議題となったシリア情勢について、深刻な懸念を表明するとしたうえで、アメリカがアサド政権に対し行った軍事行動は、シリアでの化学兵器の使用に対する防止や抑止のために、注意深く計算された、対象が限定された対応だったとしています。

そして、シリアの同盟国のロシアとイランに、「シリアが化学兵器禁止条約の義務を順守するよう影響力を用いることを求める」としているほか、さらにロシアに対しては、「紛争を終結させるようシリア政権に対する影響力を用いることを促す」などと明記しました。

また、核やミサイル開発を続ける北朝鮮問題について、最優先課題であり最も強い表現で非難するとしたうえで、「新たな段階の挑戦」だとしています。そして、北朝鮮に対し、不安定化と挑発を控え、核・ミサイル開発の放棄を強く求めるとしたうえで、国連安全保障理事会の決議を順守するよう強調しています。

一方、海洋安全保障をめぐっては、海洋進出を強める中国を念頭に、「国際法の原則に基づく海洋秩序や紛争の平和的解決、それに航行および上空飛行の自由の重要性を改めて確認する」としたうえで、東シナ海・南シナ海の状況を懸念し、武力による威嚇や拠点構築など緊張を高める一方的な行動に強く反対するとして、非軍事化と国際法の順守を求めるとしています。

このほか、テロ対策では、国際協力がテロとの闘いで最も重要だという認識で一致したほか、イランが欧米などと交わした核開発問題をめぐる合意について、「不拡散体制への重要な貢献だ」として、合意を厳格に順守する必要性を確認しました。
また、今回の会合では、共同声明のほかに、深刻化するサイバー攻撃に国家が責任ある行動をとるよう求めた宣言や、「核兵器のない世界」に向けて、核兵器の保有国と非保有国の協力のもとで段階的に軍縮に向けた取り組みを進める以外に道はないという認識を確認するなどとした声明を出しました。

議長国 イタリア外相「ロシアへの協力要請で各国が一致」

G7=主要7か国の外相会合の閉幕を受けて、議長を務めたイタリアのアルファーノ外相が記者会見し、アメリカによる軍事攻撃を受け緊張が高まるシリア情勢について、内戦の終結に向けた政治プロセスを推し進めるとともに、ロシアの協力を求めていくことで各国が一致したことを明らかにしました。

記者会見の中でアルファーノ外相は、外相会合では、アメリカが化学兵器の使用を理由にシリアのアサド政権の軍事拠点を攻撃したことを受け、シリア情勢が主要な議題となったとしたうえで、「軍事的な手段だけでは解決は不可能だ」と述べ、内戦の終結に向け政治プロセスを推し進めることで各国が一致したことを明らかにしました。
そのうえで「アサド政権に対するロシアの行動が重要であるという認識を共有した」と述べ、アサド政権の後ろ盾となっているロシアがシリアの民主的な政権移行に向け影響力を行使するよう求めていくことでも一致したことを明らかにし、このあと行われるアメリカのティラーソン国務長官とロシアのラブロフ外相との会談に期待を示しました。

一方、イギリスのジョンソン外相がロシアへの新たな制裁の可能性に言及したことについてアルファーノ外相は、「ロシアを孤立させ追い詰めるのは誤りで、シリアの和平と安定に向け積極的に巻き込むことが重要であることを各国が確認した」と述べ、ロシアに対する新たな制裁では合意に至らなかったことを明らかにしました。

岸田外相 「連帯強化で一致」

岸田外務大臣は、G7外相会合の閉幕にあたり、記者団に対し、「シリア、北朝鮮といった喫緊の課題について率直かつ白熱した議論を行うことができた。緊迫するシリア情勢については、化学兵器による被害が二度と起きないよう、連帯を強化していくことで一致するとともに、困難な状況からいかに政治プロセスの進展につなげていくか非常に活発な議論を行った」と述べました。

そのうえで、岸田大臣は、共同声明でシリア情勢に関連し、ロシアに紛争を終結させるため影響力を用いるよう求めたことについて、「具体的な働きかけとしては、きょうからアメリカのティ-ラソン国務長官がロシアを訪問し、その際に、G7のメッセージをロシアにしっかり伝達すること、そして、ロシア側の話をしっかり聞き、建設的な議論を行うことを確認している。日本を含む、G7としても、ロシアに対し、建設的な対応を促していくことを確認した次第だ。まずはティラーソン長官のロシア訪問をしっかり注目し、G7で情報や意思を共有していきたい」と述べました。

また、岸田大臣は「主要国での政権交代、あるいは選挙など変化のときを迎えるなか、今回の外相会合は、G7にとって試金石と言うべき会合だったと思うが、この会合で、自由で開かれたルールに基づく国際秩序のけん引役としてのG7の連帯を確認し、力強いメッセージを発出できたことに満足している」と述べ、今回の議論を来月下旬にイタリアで行われる首脳会合につなげていくことが重要だという認識を示しました。