トランプ大統領 初の議会演説 要旨

トランプ大統領 初の議会演説 要旨
アメリカのトランプ大統領は上下両院の議員を前に施政方針を示す初めての演説を行いました。演説の要旨です。
ユダヤ系のコミュニティーセンターを標的にした脅迫やユダヤ教の墓地に対する破壊行為、そして、先週、中西部カンザス州のカンザスシティーで発生した銃撃事件は、われわれが政策において分断された国であるかもしれない一方で、あらゆる形の憎悪や悪意を非難することにおいては一致団結する国であることを改めて私たちに思い出させました。

憎悪や悪意に一致団結して立ち向かう

ユダヤ系のコミュニティーセンターを標的にした脅迫やユダヤ教の墓地に対する破壊行為、そして、先週、中西部カンザス州のカンザスシティーで発生した銃撃事件は、われわれが政策において分断された国であるかもしれない一方で、あらゆる形の憎悪や悪意を非難することにおいては一致団結する国であることを改めて私たちに思い出させました。

受け継がれるたいまつ

アメリカの各世代は、真実、自由、正義のたいまつを受け継いできました。この連鎖は、途切れることなく、現在まで続いています。このたいまつはいま、われわれの手にあります。そして、われわれはこのたいまつを、世界を照らすために用いるのです。

アメリカの精神の復活

アメリカの偉大さを示す、新たな章がいま始まりました。新たな国の誇りが、国中で勢力を広げています。新たな楽観主義の高まりが、不可能にも思えた夢を、われわれの手の届くところへ導いています。われわれはきょう、アメリカの精神の復活を目撃するでしょう。われわれの同盟国は、アメリカが再び世界をリードする姿を目の当たりにするでしょう。敵味方を問わず、世界のすべての国が、アメリカは強く、誇り高く、自由であることを見いだすでしょう。

過去数十年の過ち

過去十数年の過ちが、われわれの未来への道を決定づけることを、私は許しません。あまりにも長い間、われわれは、雇用や富が海外に流出し、中間層が縮小するのを見てきました。われわれは他の国の国境を守る一方で、自国の国境を開放し、誰でも自由に越境できる状態を放置してきました。そしていま薬物が、過去に例がないほどの勢いで流入しています。さらに、海外で数兆ドルを費やす一方で、自国のインフラは劣化しています。

大統領選挙で起きた地殻変動

2016年、われわれの足元で地殻変動が起きました。静かな抗議の形で起きた反乱は、肌の色や出自を問わず、あらゆる家庭で話題となりました。この静かな声は大きな叫びとなりました。ついに、その叫びは地震を引き起こしました。数千万の市民が票を投じました。彼らはたった1つの、とてもシンプルな、しかし非常に重要な要求のもとに団結したのです。それは、アメリカは、国民を第一にしなくてはならない、ということです。なぜなら、それを満たしてこそ、われわれは真にアメリカを再び偉大な国にできるからです。

大統領就任後の成果を強調

私が大統領に就任してから1か月余りがたったこの機会に、約束を実行してきた実績をお伝えしたいと思います。私が選挙に勝利して以降、フォード、フィアット・クライスラー、ゼネラルモーターズ、スプリント、ソフトバンク、ロッキード、インテル、ウォルマート、ほかにも数多くの企業が、アメリカ国内で数十億ドルの投資を行い、数万の雇用をアメリカに生み出すと発表しました。11月8日の大統領選挙の投票日以降、株価の時価総額は3兆ドル近く増加しました。これは新記録です。われわれは政府の腐敗という沼の洗浄に着手し、行政機関の職員に対して、退職後5年間のロビー活動を禁止しました。さらに、外国政府のためにロビイストになることを、永久に禁止します。雇用を阻害する規制を大幅に撤廃するため、歴史的な取り組みに着手し、すべての政府機関に作業部会を創設しました。パイプラインの建設計画を推進するよう指示し、数千の雇用を創出します。雇用を奪う、TPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱しました。

女性起業家を支援

(カナダの)ジャスティン・トルドー首相の協力のもと、われわれは、隣国のカナダと協議会を設立し、女性起業家がビジネスを始め、経済的な夢を実現するにあたって必要とするネットワークや市場、資本にアクセスできるよう支援を行うことにしました。

国境警備強化に着手

同時に、私の政権は移民対策と国境の安全を守るという、アメリカ国民からの要請に応えています。移民対策を実行に移すことで、(アメリカ国民の)賃金は上昇し、失業者は救われ、数十億ドルが確保され、すべての人にとって地域社会がより安全になります。われわれはすべてのアメリカ国民に成功して欲しいと願っています。しかしこれは、法のない混乱した環境では実現されません。この国の国境に、正当性と法の支配を取り戻さなければなりません。このために、わわわれはまもなく南の国境沿いで、巨大な壁の建設を始めます。

テロ対策として入国管理を強化

われわれの義務は、アメリカ国民に奉仕し、保護し、守ることです。この国をイスラム過激派から守るために、強い対策を講じます。司法省のデータによると、2001年の同時多発テロ事件以降にテロ関連の罪で有罪となった者の多数は、国外からアメリカにやってきた者です。適切な審査が行われない地域からの入国を無制御に許可することは、思いやりではなく、無謀です。アメリカに入国できるという高い名誉を与えられる人は、アメリカを支え、アメリカの国民と価値観を愛する者でなければなりません。アメリカ国内にテロの足がかりが形成されることを許してはなりません。この国が過激派の聖域になることは許されないのです。それゆえに、私の政権は、入国審査の改善に取り組んでおり、この国の安全を守り、われわれに危害を与えるおそれのある人物を締め出すため、まもなく、新たな手段をとる予定です。

IS壊滅への決意

私は公約通り、国防総省に対し、過激派組織IS=イスラミックステートを破壊し、壊滅に追い込むための計画を立案するよう命じました。ISは、法の秩序のない野蛮なネットワークで、イスラム教徒やキリスト教徒、そして、あらゆる信仰を持つ、男性、女性、子どもを虐殺してきました。われわれはイスラム世界の友好国や同盟国を含め、さまざまな同盟国と協力し、この邪悪な敵を地球から一掃するために取り組みます。

連邦最高裁判所判事を任命

私は、連邦最高裁判所の判事任命に関しても公約を守り、20人の候補から、合衆国憲法を守る人物を任命しました。われわれはニール・ゴーサッチ氏を選びました。すばらしい能力を備え、法律に身を捧げてきた人物です。ゴーサッチ氏は、連邦控訴裁判所で全会一致で承認されており、連邦上院においても、速やかに承認するよう要請します。

オバマ前政権を批判

過去8年間、前政権は、それまでのすべての政権が抱えた債務の合計に匹敵するほどの債務を背負いました。NAFTA=北米自由貿易協定の締結後、アメリカでは、製造業の雇用が4分の1以上失われ、中国が2001年にWTOに加盟してから、6万もの工場がなくなりました。去年の貿易赤字は8000億ドル近くに達しました。そしてわれわれは、外交政策の悲惨な失敗を引き継ぎました。

歴史的な税制改革

国内外で目標を達成するには、われわれはアメリカ経済のエンジンを再び稼働させなければなりません。企業がアメリカ国内で事業を行うことをより簡単にし、撤退することをより困難にするのです。現状では、アメリカ企業は世界でも最も高い水準の税率を課されています。私の経済チームはいま、法人税減税のための歴史的な税制改革を策定中です。企業がどこでも、どんな相手とでも競争し、成功を収めることができるようにするものです。同時に、中間層に対しても大規模な減税を実施します。

公正な貿易を求める

私は自由貿易を強く信じていますが、貿易は公正でなければなりません。共和党から選ばれた最初の大統領、エイブラハム・リンカーン氏は「アメリカ政府による保護政策の放棄は国民に困窮と破滅をもたらす」と警告しました。リンカーンは正しかったのです。そして今こそ、彼の言葉を心にとめるべき時です。アメリカとその偉大な企業や労働者がつけこまれることは許しません。

労働者保護のために移民制度改革を

私は数百万の雇用を取り戻します。わが国の労働者を保護するということは移民制度の改革も意味します。現在の制度は時代後れで、最も貧しい労働者の賃金を押し下げ、納税者に多大な負担を強いるものです。低い技能の移民を受け入れる現行の移民制度から能力に応じた移民を受け入れる制度に切り替えることで多くのメリットが期待できます。

インフラ整備に官民で1兆ドル投資

国家再建の新しい計画を始めるときが来ました。アメリカは中東におよそ6兆ドルを費やす一方で、国内のインフラは崩壊の危機に瀕しています。この6兆ドルがあれば、われわれは国の再建を2回行えたはずです。交渉能力がある人ならば3回再建できたかもしれません。国家の再建を実行するにあたり、私は議会に対し、インフラ整備に1兆ドルを投資する法案の承認を要請します。官民の資本から拠出され、数百万の雇用を生み出すでしょう。この取り組みは2つの原則、すなわち「アメリカの製品を買い、アメリカ人を雇用すること」を指針とします。

オバマケアの撤廃

私は議会に対し、オバマケアを撤廃し、選択肢を広げてアクセスを増やし、費用を下げ、同時により良い医療を提供できるものに改革するよう求めます。アメリカ国民全員に、政府が承認する健康保険に加入するよう義務づけるのはアメリカにとって適切な解決策ではありません。オバマケアは、全米で保険料を2桁か3桁、増大させました。オバマケアは破綻しつつあります。われわれは責任を持って、すべてのアメリカ国民を守らなければなりません。既往症を抱えるアメリカ人に対しても保険に入る手段を提供すべきです。税控除などの活用により、国民が保険に加入できるよう援助するべきです。しかし、国民が加入するのはみずからが望む保険であり、政府によって強制されるものであってはなりません。州境に関係なく自由に保険に加入できる権利を与えるべきです。本当の意味で、競争のある全国規模の保険市場ができれば、費用が大幅に削減され、より良い医療が受けられるようになるはずです。

超党派の協力を呼びかけ

われわれは力を合わせ、課題に取り組みませんか。この問題(医療保険改革)だけでなく、その他多くの事柄について、民主党と共和党は力をあわせ、国のため、国民のために団結すべきです。私の政権は両党の議員と協力し、利用しやすく手ごろな価格の子育て支援を提供し、子どもが生まれた親が育児休暇を取得できるようにし、女性の健康に投資し、きれいな空気や水を守り、軍やインフラの再建するといった課題に取り組んでいきたいと思います。アメリカ国民に対する真の愛情があれば、共通点を見いだし、共通の価値観を推進し、明るい未来が保障されるべきすべての子どもたちのために協力する必要があるのです。

恵まれない立場の子どもにも教育の選択を

教育は、こんにちにおいては公民権の問題です。私は、多数のアフリカ系やヒスパニック系の子どもを含む恵まれない立場にいる若者たちが学校を選べるよう、資金援助を行う教育の法律を成立させるよう、両党の議員に求めます。こうした家族の子どもたちは、公立や私立、宗教系などの学校、あるいは自宅学習から、自分に合った教育手段を自由に選べるようになるべきです。

貧困と犯罪の撲滅

すべての子どもに、デニーシャ(ゲストのひとりの名前)のように、貧困の連鎖を断ち切れるようになってほしいと望んでいます。しかし、貧困の連鎖を断ち切るには、暴力の連鎖も断ち切らなくてはいけません。2015年の殺人事件の発生率は、この半世紀で最大の伸びでした。中西部イリノイ州シカゴでは、去年だけで4000人以上が銃で撃たれ、ことしの殺人事件の発生率は去年をさらに上回っています。これはとても容認できるものではありません。

警察との連携が大切

すべてのアメリカの子どもたちは、安全な地域で育ち、優れた学校に通い、高給の仕事に就けるようになるべきです。しかしこうした未来を築くためには、われわれは、警察と対立するのではなく、協調しなければなりません。不和と分断のくさびを打ち込むのではなく、協力と信頼の橋をかけなければなりません。警察官や保安官は、われわれの地域の一員です。彼らは友人や隣人であり、母親や父親であり、息子や娘なのです。そして毎日、無事に戻ってくるかと心配する愛する人たちを家に残して任務にあたっているのです。われわれは、こうした警察業務に従事するすばらしい人たちを支えなければなりません。

犯罪被害者支援オフィス設置

犯罪被害者にも支援が必要です。私は国土安全保障省に対し、アメリカの犯罪被害者を支援するオフィスを創設するよう命じました。この部署はVOICE(VictimsOfImmigrationCrimeEngagement=移民犯罪被害者支援部)と呼ばれます。われわれは、メディアに無視され、特定の利益団体に押し殺されてきた人たちが声をあげられるようにします。

国防費の増加

最後に、アメリカの安全を守るために、アメリカ軍に従事する兵士たちに、戦争を防ぎ、必要なときには戦って勝利を収めるために、必要な手段を提供しなければなりません。私は議会に、軍を再建し、国防費の削減をやめ、アメリカ史上最大の規模となる国防費を増額する予算を要請します。この予算は、退役軍人のための資金も拡大します。アメリカが直面している課題はとても大きなものです。しかし、国民は、課題を上回るほど偉大です。なかでも最も偉大で勇敢なのは、軍服をまとい、アメリカのために戦う人たちです。

同盟国との関係

われわれの外交政策は、直接的で、強固で、意味のある形で、世界に関与していくことを求めています。アメリカのリーダーシップとは、世界中の同盟国と共有する、重要な安全保障上の利害関係に基づくものです。われわれはNATO=北大西洋条約機構を強力に支援します。NATOとの同盟関係は、ファシズムを退けた2度の世界大戦、そして共産主義を打ち負かした冷戦によって育まれたきずなにより強化されてきました。一方で、われわれのパートナーは、財政面での義務も負わなくてはなりません。われわれは、NATO、中東、太平洋の地域を問わず、パートナーに対して、戦略、そして軍事の両面において、直接的で意味のある役割を担い、公平に負担するよう求めます。

私の任務はアメリカを代表すること

自由な国家こそ、国民の意思を表現する最も適した形です。アメリカも、すべての国が自分の道を進む権利を尊重します。私の任務は世界を代表することではありません。私の任務はアメリカを代表することです。しかし、アメリカの状況が良くなれば、紛争は増えることなく、減っていくこともわかっています。

アメリカは平和を求める

われわれは、平和が成り立つ場所であればどこでも平和を求めます。アメリカはかつての敵対国とも友好関係にあります。最も緊密な同盟国の中にも、数十年前には、世界大戦で敵と味方に分かれて戦った相手がいます。こうした歴史は、世界がよりよい場所になる可能性があると信じる根拠を与えてくれます。

アメリカの精神の復活を心に抱こう

細かいことを考える時は終わりました。ささいな事柄で争う時は終わりました。私たちに必要なのは、私たちの心を満たす夢を分かち合う勇気です。私たちの魂を奮い立たせる希望を表現する勇気です。そしてこれらの希望や夢を行動に移す自信です。これから、アメリカはおそれを重荷に感じることなく、大志によって力を得るでしょう。過去の失敗に縛られることなく、未来に希望を持ち、疑いで目を曇らせることなく、ビジョンによって導かれます。私はアメリカのすべての国民に対し、アメリカの精神の復活を心に抱くようお願いします。議員の皆さんにも、私と一緒に、わが国のために大きく、大胆で、果敢な夢を抱くようお願いします。そしてきょう、この演説を見ている皆さんには、この機会を生かし、自分を信じ、未来を信じ、そしてもう一度、アメリカを信じるようお願いします。ありがとう。みなさんに神のご加護を。そしてアメリカ合衆国に神のご加護を。