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食える噺家は100人だけ、落語界昇進制度の歪み

「週刊ダイヤモンド」2016年7月9日号特集「落語にハマる!」より

週刊ダイヤモンド編集部
2017年1月4日
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 寄席の興行収入は、シンプルに木戸銭(入場料)×入場客数で計算できる。仮に、客数が60人だったときの1人当たりのギャラを推測してみた。

 その結果、1人当たりの平均ギャラは2500円という計算になった。寄席には、20~30人の落語家が出演するが、興行収入は人数できれいに割って山分けするのではなく、演者の格によって傾斜配分で渡される。

 通常は、興行のトリを務める主任、年季の長い演者、一般の演者という順番で取っていく。ある真打は、「今どき、お客1人当たり×円×銭というレートが決まっているのは、寄席と為替だけ」と冗談めかして言う。別の人気真打は、「9日間高座に上がって、寄席の割りは1万円。日当約1000円です」とのこと。

 かといって、「寄席の経営は、ビルにテナントが入っている鈴本演芸場以外は厳しい」(同)ともいわれ、寄席の経営を維持すること自体が難しくなっている。

 それでも、落語家が寄席に出るのは、寄席が“ショーケース”の役割を果たしているからだ。自分を目当てに来たわけではない“完全アウェー”の高座で場数を踏むことは修業の一環とされてきた。

 ただ、この寄席すら出られる落語家は限られる。ひと月当たり、落協は8番組、芸協は4番組を担当しており、この番組編成に漏れた落語家は、顔を売る機会すら与えられない。

 端的に言ってしまえば、寄席のギャラはすずめの涙なので、ホール落語・独演会、地方公演のギャラで食っていくよりほかに選択肢はない。

 落語家という職業のいいところは、座布団1枚でどこへでも行けること。落語立川流の四天王(立川志の輔、談春、志らく、談笑)ともなれば、単価の高いチケットが飛ぶように売れている。

 いよいよ、落語家の世界でも競争原理が導入され、優勝劣敗が鮮明になりつつある。

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