韓国の機内暴力なぜ多い? 処罰を外国と比較すると

機内での違法行為、3年で2.4倍に
外国に比べて軽すぎる処罰

 航空機内で暴力を振るったり暴れたりするなど、航空機や乗客の安全を脅かしかねない機内での違法行為が韓国で増加の一途をたどっている。韓国国土交通部(省に相当)などによると、暴言・暴行・大騒ぎなどの行為を含む機内での違法行為は2012年の191件から昨年は460件へと3年で2.4倍も増加した。今年も上半期だけで233件発生している。

〈事例1〉今年4月、釜山発グアム行きの大韓航空機内で、歯科医師の男(42)が喫煙した上、酒を要求したのに持ってこないなどと乗務員に暴力を振るう事件が発生。男は先月、グアムの裁判所で懲役3年に加え、1万500ドル(約120万円)の罰金刑を言い渡された。男はグアムに到着した直後から米連邦捜査局(FBI)の強制捜査を受け、裁判では嘆願書や謝罪文などを提出して善処を求めたが聞き入れられなかった。

〈事例2〉今月20日、ベトナム・ハノイを出発して仁川空港に向かっていた大韓航空機内で、会社員の男(34)が乗務員や乗客に暴力を振るう事件が発生。男は9月にも仁川発ハノイ行きの機内で暴れ、器物を損壊していた。3か月間に同じ航空会社の機内で2回も騒動を起こしたわけだ。しかし韓国警察は21日、韓国に到着した男を「あらためて出頭させて取り調べを行う」として保護者と共に帰宅させた。

 13年にはポスコ系列会社の常務が機内食に難癖をつけて客室乗務員に暴力を振るう事件が発生し、14年には前大韓航空副社長の趙顕娥(チョ・ヒョンア)氏が客室乗務員のナッツの出し方に怒って旅客機を引き返させた「ナッツリターン事件」が起きた。さらに15年には歌手ボビー・キムさんが機内で暴れ、セクハラ騒ぎを起こした。こうした一連の事件を受け、今年1月から機内での違法行為に対する処罰は多少厳しくなった。

 昨年までは、機内での業務妨害または大騒ぎ・暴力などの行為については500万ウォン(約49万円)以下の罰金だったが、今年1月からは大騒ぎ・暴力などは1000万ウォン(約98万円)以下の罰金、機長・乗務員に対する業務妨害は「5年以下の懲役または5000万ウォン(約490万円)以下の罰金」と処罰が強化された。

 しかし、米国やオーストラリアなど外国に比べると依然として処罰は軽い。このため、機内での違法行為を根本的に防ぐためにはもっと厳しい処罰を科すべきとの指摘が出ている。20日に大韓航空機内で騒動を起こした男について、ある航空専門家は「男は3か月で2回も機内で騒動を起こしており、もし米国で捕まったとすれば(事例1の歯科医師の男が宣告された)懲役3年より厳しい処罰を受けるだろう。ほかの乗客の安全を脅かす機内での違法行為については、外国のように厳罰に処さなければ違法行為はなくならない」と指摘した。

 米国の場合、機内での暴力や乗務員に対する業務妨害があれば、最大で懲役20年、罰金25万ドル(約2940万円)の刑に問われる。機内での違法行為があった場合、FBIがその乗客を直接捜査して起訴し、裁判でも刑が軽くなることはほとんどないと専門家は話す。

 オーストラリアでも、乗務員に対する暴行・脅迫は「10年以下の懲役」、これらの行為が乗務員の業務に支障を与えたと判断されれば最高で懲役20年を言い渡される。中国では空港などで暴力事件などを起こした自国民を「非文明行為者」と規定し、以降は出国手続きなどで不利益を与える場合があるという。

 ある航空業界の関係者は「機内での違法行為を根絶するためには、こうした行為が航空の安全を脅かす重大な犯罪だということをきちんと認識してもらう必要がある」として「違法行為の前科がある客に対しては『搭乗拒否』などの措置を取れるようにするのも一つの方法だ」と指摘した。国土交通部の関係者は「航空各社が違法行為の前科のある乗客のリストを共有するのも手だ。外国とは異なり、韓国国内では機内での違法行為が軽い罰金刑で済んでしまうため、この点も変えていく必要がある」と述べた。

洪準基(ホン・ジュンギ)記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連ニュース