安岡明夫HP(yasuoka.akio@gmail.com)

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=副題:書評「中国を追われたウイグル人」「3」=
1.ウイグルで注射針を刺す通り魔的犯罪が多発している。次第にその全貌が明らかになってきているが、犯人の多数がウイグル人で、被害者は漢族の子供や女性が中心であることはほぼ確かなようである。

1.これは不思議な事件であり、このような事件を起こして犯人が何ら得をするはずがない。従って漢族のウイグル族への反感を増大させることが狙いであり、中国政府の呼びかけている民族和解を妨害することだけが狙いと考えられる。
また、現地のウイグル人が全然利益を受けるはずがないから、当然国外からの犯罪組織による策略以外のものではないであろう。

つまり、新華社通信によると、孟建柱公安相が9/4日現地入りし、注射針事件について、「民族分離主義勢力がそそのかして起きた。7月5日の事件の続きだ」と述べたが、この分析は正しいと思われる。また事件の規模から考え、犯罪集団は国際的にもかなりの大きな規模を有するものであることも間違いないだろう。

1.ここで注目されることは、注射針を使うことで民族間の離間を狙うと言うような発想は、普通の人間では先ず出てこないと言う点である。その卑劣性は極限的なものと言わねばならないだろう。

1.そこで注目されることは、ラビア・カーディルさんの率いる「世界ウイグル会議」がこの事件の黒幕だとかを当HPは今言っているのでは全然ないが、卑劣性という点において7/5ウルムチ重大暴力犯罪事件と今回の注射針事件とは完全に同質の事件である点だ。これは別々の事件なのであろうともいえば言える事件であるし、そのことを今私はとやかく言っているのではないが、卑劣性という点で全く同質の事件が時間的にも連続して起きた点が純粋に興味深く感じられる。大変に純粋に面白い事件である。

1.処で話は全く違うが、水谷尚子先生の書かれた「中国を追われたウイグル人」と言うご本の中にラビア・カーディルさんをはじめ世界ウイグル会議関係者が多数登場されている。それがどういう訳か、注射針や病院関係の話が頻繁に出てくるのである。医師の方も登場する。実に純粋に面白いことだなあと私は何となく筆を取ってエッセーを書きたくなったからこの記事を書いてもいるのだが、全く面白いことだなあと思う。

○ラビア・カーディルさんは交通事故に遭ったと称して首にコルセットを付けていたことがある。首の骨にひびが入ったと称されていた(これについての疑問は、次の過去記事参照
「書評「中国を追われたウイグル人」090809「1」」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39750792.html
「書評「中国を追われたウイグル人」090809「2」」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39752811.html
)。
○ドルクン・エイサ氏(「世界ウイグル会議」事務局長):
亡命者の生活を援助するため、自分の血を注射針で抜いて売血し、金策されていたと言う。大変に立派な高潔で人情味豊かな方のようである。

「ドルクンはこの頃、周囲に黙って売血を繰り返し、金を作っていたのだ。ある日ドルクンの妻は、トイレで目を剥いて倒れている夫に気づき、慌てて救急車を呼んで病院に担ぎ込んだ。ドイツ人医師は「なぜか、身体の中の血液の三分の一が失われている」と首を傾げた」(同書p.81)。

大変に立派な美談であるが、私の素朴な疑問に答えて頂きたいものだ。

血液の3分の1が失われてもこれまでの例から言って生き続けた人もいる。死んでしまう人もいる。つまり、その意味ではぎりぎりの線である。これ以上血が失われたという話をしては嘘になってしまうし、これ以下では美談にならない。その意味ではつじつまがあっている(死ぬか生きるかは血の量だけでなく他の条件にもよる)。

私の疑問は次の点である。医師はどうやって血が全体の3分の1無くなったと分かったのだろうか?

西欧では、何人かの囚人を使って実験し、体重に比べ普通血液はその何分の一の重さを持つかを測定し平均値を出した。次に、別の囚人の体重を調べ、その全血液量を推定し、その何分の一が失われた時死に至るかを調べた。そして、3分の1が失われた時死ぬ人もいれば生き続ける人もいることが分かった。

そこまでは分かるが、では医者とはどうやって血が全体の何分の一無くなったと分かるのだろうか?

普通、出血したからと言って血が薄まることはない。骨髄などに予備が蓄えられており、不足すれば出てくるからだ。問題は体液の量だと思われる。血が急激に出血し、水分の補給が出来ない時、血圧が急激に下がる。つまり、酸素を運ぶ血球が沢山あっても、水がなければ血球が流れることが出来ない。だから死ぬのである。水分さえ十分にあれば、血が薄くなったとしても、運動能力は急激に下がるだろうが、じっとしていれば必要な所にだけは十分に血が回され、余り死ぬことは考えられない。

処で売血した後、喉が渇けば水を飲むだろう。一度に売血出来る量は限られている。だから体内の水分が不足するはずがない。

つまり、売血により血の量は減らなかったと考えられるのである!但し、売血を繰り返せば予備の血球も不足するようになり、確かに血が薄まることは考えられるが、それは血液の密度が下がる問題であり、血液自体が減ると言うことではない。

また、仮に血液量が減ることがあるとしても、そのことをどうやって医者は知ることが出来るのだろうか?

たとえば、普段から当人の体重を知っていれば、血が減ったこと以外に原因が考えられない時は直ちに推定できるだろう。また、一定の薬物を血管に注射し、体全体に拡散したと思われる時期に血液検査を行えば、その薬物の薄まり方によって全血液量を測定することも可能だ。

しかし、普通そのような検査を医者は行うのだろうか?顔色を見て直ぐに貧血を起こしているなと思えば、直ちに輸血して終わりではないだろうか?それ以上検査する必要がどこにあるのだろうか?貧乏な行き倒れ的な人が運ばれてきた時、普通医者はそれ以上の処置を行わない。
また、目を剥いて倒れている人を先ず検査するのではなく、いきなり輸血や輸液を行い、血圧が正常になるまでにどのくらい水分を加えたかで事後に推定することも可能だ。しかしその場合は「なぜか、身体の中の血液の三分の一が失われていた」であって「なぜか、身体の中の血液の三分の一が失われている」ではない。
この話がたとえ真実であるとしても、常識的に考えて説明不足の面があると思われるため、そこの所を更に補充して頂けたらもっとすばらしい本になったのではないかと残念である。

このほか、新疆での核実験を告発されたウイグル人医師・アニワル・トフティ氏等も登場する。わたしは次第にこの話も絶対に眉唾に思えてきていないとは言えなくなっている。更にラビア・カーディルさんの母親は「精神を病み、七八年、五十七歳の時に胃癌で死にました」(p.20)とか、

「協会のリーダーは・・ミジットである。ミジットはデモが行われる三日前の十二月九日夜・・突然死した。それ以前は何の持病もなかったという。「急な心臓発作」として片付けられたが、ミジットの本当の死因は今もって謎のままだ」(p.56)

と言った調子の注射針・病院関係・病気などと関係ある話がやたらあふれかえっているのだ。そして

「「世界ウイグル会議」に集う亡命者は、どちらかと言えば高学歴エリートで・・武装闘争より頭脳闘争を選択しようとする」

のだそうである(p.87-88)。

それにしてもこの話とウイグル注射針事件が関係あることは予もあるまい。いや、そうなのか?それにしても面白い話である。

参考文献:
「中国を追われたウイグル人」(水谷尚子/2007/文春新書)

参考記事:
書評「中国を追われたウイグル人」090809「1」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39750792.html
書評「中国を追われたウイグル人」090809「2」
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39752811.html
(エッセー)ウイグルの針刺し事件を考える090909
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「3」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39942413.html
(学習ノート)ウイグル人医師アニワル・トフティ氏に関して「1」
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「4-1」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/40044904.html
(学習ノート)ウイグル人医師アニワル・トフティ氏に関して「2」
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「4-2」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/40044905.html
(学習ノート)ウイグル人医師アニワル・トフティ氏に関して「3」
[副題:書評「中国を追われたウイグル人」「4-3」]
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/40084645.html

それ以外の参考記事は下記のとおり:
ウイグル暴動関連重要記事目次
http://blogs.yahoo.co.jp/oyosyoka803/39719208.html

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