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WOMAN

エロスの正体
「喪服の女性は、なぜセクシーなのか」

2016.9.1

先日、谷中霊園を散歩していると、目を引き付けられる光景に出くわした。葬列から抜け出してきたのだろうか。喪服に身を包んだ一組の中年カップルが、大きな墓石の陰でなにやらもみ合っている。男性は白髪交じりで、女性は髪が長い。外見的な印象はそれぐらいしか与えない、ごくありふれたカップルだ。

個人とのお別れの儀式。喪服はそのための正装だ。現代では黒が一般的だが、飛鳥時代の日本では白だった。奈良時代になって、天皇の喪中は黒の衣服をまとう法律が定められている。

新婚には見えないが、女性のほうが積極的に男性の顔を両手で抱き込んでキスを交わしている。明治維新に勲功の高かった偉人の墓石も、いまや情熱的な2人を周囲から隠す「石垣」に過ぎない。何の変哲もない(ように見える)あのカップルに、劣情のスイッチを入れたモノは何か。
私は横目で彼らをチラ見しながら、先日読んだ海外の研究者のコラムを思い出していた。葬式は厳粛に行われるべき儀式。だからこそ、そこで不謹慎な行為を犯すのは、タブーを破る快感がある……。そんなありふれた解釈とは一線を画していたのが、その筆者が喪服が「自分の死」を連想させるのではないかと指摘していたことだ。
当然のことだが、人が喪服を着るとき、必ず誰かの死がある。

官能小説でもおなじみのシチュエーションだが、そこには生物学的な理由があるのか。


それが「自分もいつか死ぬ」という普段は忘れている「無意識下の死の恐怖」にさざ波を立てるのだというのだ。死の恐怖が高まると、性欲が昂進することは男女ともに認められている。手垢のついた言葉だが、「種の保存」は我々の理性を悠々と超えることを、墓石の陰のカップルを見て実感した気がした。

骸骨風のメイクをした女性たち。死は生の中に存在している。


「エロスとは、死に至るまでの生の称揚である」。シュールレアリスムの大家、ジョルジュ・バタイユも、エロスの深奥に死の影を見ていた。伊丹十三監督の映画「お葬式」では、山崎努が立ったまま礼服姿の女性と背後から交わる名シーンがある。
喪服姿がセクシーなのは、死の恐怖を想起させるから。これがエロスの正体なのかもしれない。

Photo:getty images

Text:栗原P

 

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