[ロンドン 6日 ロイター] - 石油業界は電気自動車(EV)の普及が遅々として進まないと予想し、急速なEV市場拡大を見込む自動車業界とは際立った違いを見せている。
原油の全生産量の半分強が輸送燃料に使われるだけに、石油業界がEVの普及を過度に軽視して石油市場の見通しを立てれば、足元をすくわれる恐れがある。
石油業界はEVの脅威に懐疑的だ。ENI<ENI.MI>のクラウディオ・デスカルツィ最高経営責任者(CEO)は先月、「EVは成長可能だが、(われわれにとって)問題だと思わない」と発言。米エクソンモービル<XOM.N>や英BP<BP.L>も2035年にEVとプラグインハイブリッド車(PHV)が新車に占める比率を10%以下と予想している。
一方、自動車業界はEVについて長期の予想を出していないが、普及はもっと速いペースで進むと見込んでいる。ダイムラー<DAIGn.DE>のディーター・ツェッチェCEOは9月、2025年にはグループ全体の世界販売に占めるEVの比率が15─25%に達すると予想。フォード・モーター<F.N>のマーク・フィールズCEOは4月、2020年までに全車種の40%を電化すると述べた。
フィッチのグループ・クレジット・オフィサー、アレックス・グリフィス氏は、石油会社にとって石油需要予想の正確性は重要な意味を持つと指摘。「需要が増えなければ、市場は勢いを失いかねない」と話す。
自動車業界は車載電池の価格が大きく下がり、EVの普及を後押しすると見込んでいる。またエンジンの排出ガス基準の達成にかかるコストが上昇しているとも指摘している。
ただ、自動車業界がEVの普及を見込むもっと大きな理由はライドシェア(相乗り)サービスと自動運転技術の進展だ。アルファベットなど米ハイテク企業の参入で、自動運転車はわずか数年で単なる夢物語から現実になった。
大手自動車メーカーの多くは2020年代には自動運転車がかなり普及し、自動車業界は販売から輸送サービス会社へとビジネスモデルが大きく転換すると予想している。こうした変化はEVにとって追い風になる。
EVは当面、エンジン式の自動車に比べて価格が高い状態が続く見通しだが、運用コストはガソリンエンジン車よりもかなり低い。稼働率の高い自動運転車にEVを投入すれば、こうしたコストを素早く回収できる。
EVは可動部品が少なく、管理・維持のコストが低い点も運行業者にとって導入を進める理由になる。
しかし石油会社が見通しを立てる際にこうした変化を考慮に入れている様子はない。BPもエクソンも以前に発表した予想では自動運転車に言及していない。BPは5日、自動運転車について2017年初めに発表する次の予想で触れると発表した。
エクソン、BPなど西側の石油大手7社がこの1年間に示したアナリストのプレゼンテーション資料44件をロイターが調べたところ、EVに触れたものは皆無だった。
(Tom Bergin記者)
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