千葉大医学部生3人が集団強姦(ごうかん)致傷容疑で逮捕された事件で、千葉県警は5日、被害女性の体を触るなどしたとして医師、藤坂悠司容疑者(30)=千葉市中央区院内1=を準強制わいせつ容疑で新たに逮捕した。藤坂容疑者は学生を指導する立場の研修医で事件当日に3人が女性と飲酒していた店にいたという。

 県警はこれまで公表してこなかった学生3人の逮捕を明らかにした。

 集団強姦致傷容疑で先月21日に逮捕されたのは、いずれも医学部5年の吉元将也(23)=同区亥鼻1▽山田兼輔(22)=同区旭町▽増田峰登(23)=同区本町1−−の3容疑者。

 3人の逮捕容疑は9月20日午後7時半〜21日午前0時半の間に、同市の飲食店内で県内の20代女性に性的暴行。さらに増田容疑者宅へ女性を連れて行って強姦し、5日間のけがをさせたとしている。

 藤坂容疑者の逮捕容疑は、吉元、山田両容疑者と共謀して同20日午後10時〜21日午前0時半の間に、同じ店内で女性の体を触るなどしたとしている。

 県警によると、学生3人は逮捕当時は一部否認していたが、現在は藤坂容疑者を含め全員がおおむね容疑を認めているという。

 事件を受け、千葉大医学部と医学部付属病院は先月29日、学生や教職員に飲酒を伴う懇親会の自粛を要請。医学部副学部長をトップとする調査委員会を設置した。【斎藤文太郎、信田真由美】

 ◇逮捕発表、2週間後

 千葉県警はこれまで、学生3人を逮捕した事実を発表せず、批判の声が上がっていた。これまで、毎日新聞を含む報道各社は独自取材に基づいて報道。今回の発表は逮捕から2週間後だった。

 県警捜査1課の内川正年課長代理は、このタイミングでの発表について「共謀関係におおむね見極めが付き、被害者は納得していないが、おおむね理解を得られた」と説明した。また、容疑者の関係者から圧力があったのではないかとの見方を否定し、「被害者保護、捜査の進展、公益性から判断した。批判は真摯(しんし)に受け止めている。一番大事なのは被害者の気持ちだ」と強調した。

 一方で、千葉大が学生の逮捕を謝罪したのに、大学名や学年、医師の所属を、これまでと同じ理由で明かしていない。

 立教大の服部孝章名誉教授(メディア法)は「関係者の間では逮捕された3人が誰か分かっているはずで、逮捕時に公表しない理由はなく、今さら『共犯者がいたから』と言っても、後付けの理由にしか思えない」と批判した。さらに、逮捕は公権力の発動なのだから容疑者名を公表するのが当然で、実名を記載するかは報道機関に委ねるべきだと指摘。「最近はその原則が弱まっているように見える。警察は『被害者が特定される』というが、これを拡大解釈すれば何でも公表しないことが可能になってしまう」と懸念した。【斎藤文太郎、信田真由美】