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トピックス -企業家倶楽部

2013年03月11日

徹底した理念共有でぶれない組織を創る/Speee代表取締役 大塚英樹

企業家倶楽部2013年4月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.2





東京・六本木に本社を構えるSpeee(スピー)。白をバックに、清潔感漂うスタイリッシュなオフィスは、急成長を続けるITベンチャーのイメージとぴったりマッチする。
 

 社内にはオシャレなカフェスペースが設置され、社員の憩いの場となっている。社員のモチベーションを高く保ち、集中できる環境を整えることで、企業の成長、ひいては社会貢献に繋がるとの考えだ。
 

 事業の柱は三つ。まずは、創業事業であるSEOのコンサルティングだ。SEOとは、自社サイトが検索された際、上位に表示されるように最適化する技術で、Speee はそのノウハウを提供している。そして、「HomeRoom(ホームルーム)」という不動産賃貸のサイト運営。最後にスマートフォンアプリ事業である。アプリの主軸はソーシャルゲームで、第一弾は約180カ国に英語で提供した。
 

経営者を志して日々精進怒涛の勢いで現在に至る

 代表取締役の大塚英樹は現在27歳。父が経営者ということもあり、小学生の頃から起業家志望だった大塚は、高校時代から事業について真剣に考え始めた。サッカー部をきっぱり辞め、経営の勉強に没頭するあたり、当時から大塚が決断力と徹底力に富んでいたことを示している。
 

 本屋のビジネスコーナーで本をあさる毎日。経済への感度を高めるため、高校生の身ながら休み時間には隠れて証券会社に電話し、株を買っていた。大塚は「資産運用と人間の成長はメカニズムが似ている」と説く。資産が複利で指数的に膨らむのと同様に、自身の決断をぶれずに長くやり抜くことでこそ大きな効果が表れるという真理が、株取引から学んだ最大の産物であった。大塚はその後も、経営者になるという夢に向かって怒涛のように突き進む。
 

 学生時代には契約社員として(株)リクルートに勤務。営業を学ぶと、次は具体的な事業領域を模索する。大塚は早い段階で起業するためにITのことを学ぶべく、当時「インターネット広告代理店」であった(株)ネットマーケティングに入社した。
 

 入社時の面接で大塚が「起業後に苦労するより、早い段階で痛い目を見たい」と言うと、「君と同じことを言って入ってきた学生がいる」と返された。その男こそ、後にSpeee 創業の同志となる久田哲史であった。ネットマーケティングを退職すると、久田のSpeee 創業を手伝い、2年間朝から晩まで毎日のように経営のことを話した。
 

 創業から2年半、大塚も念願であった起業を果たす。RiTAKE(リテイク)と名付けた企業では転職情報サイトを運営し、順調な立ち上がりを見せた。しかし1年後、久田と話した際、「もう1度一緒に世界を目指そう」という運びになり、Speee に再合流した。

 これだけの経験を積みながら、大塚はまだ20代。まさにIT業界のめまぐるしさを体現したような半生と言えよう。



■Speee・カルチャーを徹底

IT業界はあらゆる可能性を秘めている。そこから耳を塞いでもいけないが、会社の強みを分析し、どこに経営資源を集中させるべきかを見失わないようにせねばならない。
 
 そのために徹底しているのが、Speee・カルチャーの実践だ。「素直・謙虚・率直」、「脱・受け身」など全15種が明文化されている。大塚も悩んだ際は、カルチャーに立ち返ると言う。
 
 大塚がカルチャーの重要性を痛感したのは、Speee 創業年のこと。20人ほどいた社員が5?6人一気に辞めてしまったのだ。割合にすれば25%。タフであることを自認する大塚も、一週間食事が喉を通らなかった。原因は、大塚や久田のスピード感に追い付けない社員の心の機微を見逃していたことにあった。
 
 無論、読書家の大塚は理念や企業文化の重要性は知っている。しかし、どの程度浸透させれば良いのかが分からなかった。社員が辞めていく痛手を受け、カルチャーを徹底的に浸透させるよう切り換えた。現在も絶やさず様々な施策を行い、理念の共有を重要視している。すると、自然に軸がぶれなくなった。


■Speee・カルチャーを徹底

■学ばぬ者は去れ

2011年6月、大塚が再びSpeeeに舞い戻ると、会社としての視野が狭まっていることを感じた。新しいことへ挑戦する気概が失われていたのだ。
 
 危機感を覚えた大塚は社内の人事制度に目を付け、社員が事業部に固執しないよう、事業部内と会社全体で評価を明確に分けた。これにより、事業部で業績を上げていても、会社全体の中ではまだ上があることを可視化できるようになった。
 
 社内での評価は全部で5段階のグレードに分かれる。グレードの高い社員は新規事業の立ち上げでリーダーとなる可能性が高い。社員がグレードを上げ、現在の事業部にとどまることなくSpeee全体の中で活躍できる人材になることが、自分の役割を増やしていくことに繋がる。それにより、会社としても複数の事業を同時並行して運営しうる経営体制に近づくのだ。
 
 そんなSpeee では、プロフェッショナルな人材になることが求められる。プロフェッショナルとは「自分が期待される役割を定義し、それを超えるために努力する」こと。そのため大塚は「勉強しない奴は認めない」と断言する。会社の中で働きながら学べることには限界があるが、大きな役職に就くほど社外での学習が必要となる。完璧な人間など存在しない。素直かつ謙虚に、限界を決めず学び続けることが必要だ。
 
 勉強する風土創りは制度にも落とし込まれている。Speee・ライブラリーと呼ばれる2000冊もの書籍は、貸し出し自由だ。貸し出し冊数が上位の社員は発表され、印象に残った書籍を全社にシェアする。また、書籍代は月に1万円まで補助される。「社員同士で読書会を催すなど、組織を作る上で共通言語となっていることは喜ばしい」と大塚も効果に期待を寄せる。
 
 大塚は、「志」とはすなわち「良質な野心」だと説く。野心とは身の丈より高いことに挑戦する心であり、失敗はつきものだ。しかし大塚は、失敗すら学びと定義する。学びに対して人一番感度が強いのは、大塚自身なのだ。



■世界にインパクトを与える

Speee は世界中にインパクトを与えるサービスの創造を目指す。インパクトについて大塚は、「人類の進化に繋がる」かつ「不可逆的」なものと捉える。例えば、ソフト面では、口コミサービスがこれに当たる。レストランを探す時、口コミサイトに行くことで意思決定の精度が上がった。ハード面では、スマートフォンや液晶テレビが出現したことで、もはやガラパゴス携帯やブラウン管テレビを使用する人は少なくなった。これらは人々の習慣を変え、世の中を進化させている。
 
 大塚が目指すのも、世界の進化に貢献するサービスの構築だ。そのためには成長市場の中で常に主要な位置に居続けることが肝要となる。
 
「その実現には、素早く、正しいタイミングで、良質なサービスを広く提供するしか道はありません」
 
 そう語る大塚は、これからも「良質な野心」で世界を変えるチャンスを狙い続ける。



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